「あまりにも悲しすぎて泣けなかった映画」ヤクザと家族 The Family とろりさんの映画レビュー(感想・評価)
あまりにも悲しすぎて泣けなかった映画
とにかく、終始気を抜けない作品でした。
綾野剛演じる山本。
父親を亡くして苦しく辛いはずなのに泣けない。
後輩には気丈に振る舞うが、
父親の仇であるヤクザを目の前にすると我を忘れてしまう。
こんなヤツらなんて、、と思っているのに、
屈託のない笑顔で包み込んでくれる舘ひろし演じる柴咲の優しさにふれて、この人に一生を捧げようと盃をかわす。
数年後、立派なヤクザになってシマを管理して順調な普通のヤクザ映画かと思ったら、ここら辺から空気が少しずつおかしくなる。
親父を小馬鹿にされて、暴力をふるってしまう。
こんなシーン、いろんな作品でみてきたな、なんて思ってた。
でもここからがリアル。
そして悲し過ぎるそれぞれの登場人物たちの運命を目の当たりにすることになる。
山本はただ誰かに必要とされたくて、
ただ温かい生活の中で穏やかに生きたかっただけなのに、
本人はすごく心の優しい人間だと、観ているだけで伝わるのに、周りの環境がそれを許してくれない。
義理と人情で若頭・中村の身代わりになっただけなのに、
それが自分の運命を大きく狂わせることになるなんて、
誰が思っただろうか、、、、
由香と出会って過ごしたあの一瞬だけは、
不器用な普通の青年だった山本。
14年後出所して、周りだけじゃない、日本がガラッと変わって、人々も変わって、ただ一人取り残されてしまった山本。
でも皆んな生きることに必死で、ただ時代に合わせて変わってしまっただけなのに、なんでこんなに辛く惨めに見えてしまうのか…
焼肉屋の息子の翼、シングルマザーになって必死に生きている由香、足を洗って家族を作ってた細野。
最後のシーン。
細野に刺されても一切恨む姿を見せず、謝る山本が、
もう悲しすぎて…
でも、私はそれ以上に細野を演じる市原隼人のあの演技に全て持って行かれた気がしました…
エンディングのミレパの曲。
天才的であんなに映画を想って使った曲が今まであったのかと思うほど素晴らしかった。
悲し過ぎて泣けない映画は初めてでした。