「綺麗事を大事にして欲しいからこそ、綺麗事で終わらせない」ヤクザと家族 The Family プールサイドさんの映画レビュー(感想・評価)
綺麗事を大事にして欲しいからこそ、綺麗事で終わらせない
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ヤクザの姿を通して家族・社会を描く素晴らしい作品だった。
キャスト陣全員最高でした。
綾野剛くんの狂気を内に秘めた穏やかさ、だけれどもやはり根は優しい人間というのが伝わる演技。
舘ひろしさんの柔らかくも強面とも取れる表情は、柴咲博その人でした。
他、尾野真千子さん、北村有起哉さん、市原隼人さん、磯村勇斗くん、みなさんそれぞれが作中においてどれほどの人物なのか落とし込みがすごい。
人殺しって最上級の犯罪だと思うのですが、
綾野くん演じる賢治は人殺し(殺そうとする)はできても、薬はやらないと心に決めています。
実の父親の命を奪った薬。
いくら"あんな奴どうでもいい“"本当の家族はいない”と言っていても、影響があるんでしょうね。
最後、弟分の竜太に刺されても、彼を抱きしめ笑顔で海へ落ちて行きます。
あのまま生きていたら、それこそ薬をやってしまっていたのかもしれない。
物理的にも精神的にも自分を殺してしまっていたのかもしれない。
ヤクザから足を洗い、普通の生活を送ろうとする賢治や竜太ですが、消せない過去により家族も未来も奪われてしまいます。
更生者に厳しい社会に対して、どうにかならないのかという思いと、彼らのそれまでの行いを考慮するとやはり簡単ではないというのもわかり、義理や人情、綺麗事では生きていけない現代に目を背けたくなった。
でも、最初からそれらをなかったことにしてはいけない。
どんな世の中でも、義理や人情、綺麗事を見出し続けなければ、家族は愚かどの人間関係も壊れてしまうと思いました。
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