「後悔を背負った男達の生き様に涙した」ヤクザと家族 The Family tackさんの映画レビュー(感想・評価)
後悔を背負った男達の生き様に涙した
『ヤクザと家族』というタイトルに「任侠映画か」と敬遠してしまってはあまりにももったいない作品。もっともこの映画は『仁義なき戦い』『アウトレイジ』『孤狼の血』のようなヤクザ映画とはかけ離れているヒューマンドラマである。そもそもヤクザになってしまったという十字架を背負い、また時代にあらがいながら葛藤し続ける人間たちの映画である。
特に役者陣の迫真の演技には鳥肌ものである。『新宿スワン』『日本で一番悪い奴ら』の要素を含みながら、年齢的にさらに深みの出た綾野剛、いぶし銀で男がほれ込むようなセリフ回しの舘ひろし(実際こんなカッコ良い親分いないはず)、世代をまたにかけた役でも何の違和感もない市原隼人、実直ながら柔軟に生きれない人間くさいヤクザを演じた北村有起哉。個人的にこの4名の演技は圧巻だった。
そしてあのクライマックスには涙が止まらなかった。まあ予想は出来たが。
何となく『友へ、チング』を彷彿させるものもあった。
藤井道人監督作品は、毎回公開初週に観るほど期待度ナンバーワンの監督で、今作も素晴らしい作品を出してくれた。余談だが、昨年の『宇宙でいちばん明るい屋根』は2020年ベストで、歴代でも上位5作品に入るほど好きな映画。改めて、彼の監督としての能力、また良作を引き付ける彼自身の魅力には恐れ入った。撮影監督の今村圭祐氏もまだ若いのに立て続けにこのコンビは凄い。
あと、どうでも良いが、山本(綾野剛)の娘役を演じた小宮山莉渚さんという女優さんが、
清原果耶さんにちょっと雰囲気似てて、藤井監督らしいキャスティングだなと勝手に思っていた。
※訂正
最初に書き込んだ際に、エンディング曲がいまいちスッと入ってこない為、4.5点としましたが、
それは藤井監督の前作との比較であり、これまで満点を付けた他の作品より明らかに劣るものではない為、5点に変更しました。