「血と契、家族の絆を別の側面から描く」ヤクザと家族 The Family kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
血と契、家族の絆を別の側面から描く
山本賢治という男がヤクザになってからの20年の物語。親分から盃を受けヤクザになるまでの序盤、ヤクザとしてブイブイ言わせていた中盤、そして殺人の刑期を終えて戻ってきてからの終盤、3つの時代を描く。
ストーリー重視かと思っていたが、バイオレンスなシーンの撮り方が結構臨場感や迫力があって驚いた。そして14年という長い期間が経っていることを示唆する箇所がいくつかあって、その変わりようにビックリ。年月の経過の演出がうまかった。
肝心のストーリーだが、賢治という1人のヤクザの物語としても面白いのだが、地方ヤクザの現実という意味でも面白かった。さらにタイトルが「ヤクザと家族」だから家族という視点も重要。シャブ漬けで死んだ実の父、拾ってもらった柴咲組の親分(盃を交わした親子)、そして刑務所に入っている間に生まれた実の娘と愛する女。ヤクザが築く家族関係なんてそんなものかもしれないが、一つとしてマトモじゃない。実の親子の血のつながりを拒否し、契で結ばれた親子の絆に救いを求めていったが、結局血のつながりに回帰していったように思える。最後、賢治が求めた家族の形は時代の波に流され崩壊したまま終わってしまうかに思えた。でもラストに待っていたのは、賢治の娘が賢治のかわいがっていた翼に賢治の人物像を尋ねるシーン。お互い実父がヤクザという2人が、父はどんな人間だったのかと知ろうとするのはなぜだか感動的だった。「ヤクザと家族」というタイトルにふさわしい結末だ。
観終わってから、あーそういえば「新聞記者」の監督だったっけと思い出す。原作なしでこれはかなりすごい(新聞記者も原作ありとは言いづらいけど)。今さらだけど、藤井監督すごいぞ!