「不条理は一般の社会にこそ蔓延している」ヤクザと家族 The Family おたまさんの映画レビュー(感想・評価)
不条理は一般の社会にこそ蔓延している
綾野剛ファンとして3回観に行き、4回目はいつ行こうか考え中。本作は一人の男のヒューマンストーリーとして今年度の最高傑作と言って良いと思う。演技派の綾野剛が集大成と言い切るだけのことはある、重厚感あふれる一代叙事詩としても見応え充分。
137分という長尺を感じさせない中盤までのスピーディーな展開、重苦しい空気が漂う後半、そしてやるせない結末には熱い余韻が残りました。(追記あり)
…と、Twitterではフォロワーさんとともに絶賛し、それはもちろん本気ではありますが、Twitterでは言えない別の側面から本音をいくつか。
まず、すいませんね、誰も興味ないと思うんですが、自分は直接ヤクザに関わったことは一度もありません。他の大多数の方同様、至極全うに生きてきました。
ただ、はるか昔、中学のときに田舎ヤクザの組長の娘が同級生に居ましてね。結構これが酷かったんですよ。
時代が時代だけに、彼女は自分の後ろにある「力」を振りかざし、教室を支配しました。もちろん教師もPTAも見て見ぬふりです。彼女はアヤのような清楚な可憐さは1ミリもなく、金髪にピアス、スカートを腰までズラしてトイレで取り巻きと一緒にタバコをふかす、ただのアバズレでした。
しかし当時の狂ったような教師達の「身だしなみ検査」も彼女とその取り巻きはお目こぼしでした。真面目な生徒だけ前髪は眉毛より上とか、パンツは白とか変な規則で縛って頭おかしいでしょ?それこそ社会の不条理じゃないですか?
親からは関わるなときつく戒められていたため、交流など殆どなかったんですが、彼女のために授業派しばしば中断され学校は大荒れ。皆が大変迷惑したことを覚えています。今、彼女が肩身の狭い思いをしててもザマアミロとしか思いませんね。
もう1人、こちらは別の幼馴染ですが、いわゆる恋愛体質でいろんな男性とお付き合いをした結果、あるときパート先の出入り業者でもと暴力団員の男と良い仲になり、泣いて止める親を振り切って家を出て行ってしまいました。
もちろん予想通りの酷い目に遭わされ、早々に男の元から逃げ出しましたが、男は何度も実家に押しかけ、やがて親を脅すようになったため、彼女は遠くの縁戚を頼って数年隠れて暮らす羽目になりました。
自分は一度だけその男を紹介されましたが、綾野剛のようなイケメンでもなく、山本のようにピュアな心を持つ男でもない、ただ頭も悪く執念深い粗暴なブサイクデブだった印象しか残っていません。
後日その男は傷害だかなんだかでお縄頂戴となり、彼女はなんとか実家に帰ることできたそうです。シャブ漬けにされてなくて良かった良かった。
ま、現実はそんなもんです。
この映画見て、綾野剛や市原隼人や磯村勇斗のイケメンぷり、悲劇的な物語に惑わされた一部の方が、ヤクザに人権がないなんてーとか日本の社会が不寛容ーとか言ってますが、はあ?何言ってんすか?
ヤクザに携帯売って、アパート貸して、犯罪に使われたらどうすんですか?我が子の幼稚園にヤクザの子供が入園したら、そりゃ園長に猛抗議しますよ。イケちらかしてる綾野剛がスクリーンの中で涙を流し、苦悩してる姿に皆さん共鳴してるだけで、自分の職場や生活圏内に元ヤクザが入ってくりゃ全力で避けようとしますよ。
そして日本ではそれが全うな反応なんです。より健全で安全な社会を目指すため、暴力団は徹底的に排除されるべきなんです。警察も議員も悪いことしてるのにーとかの話とは別問題です。社会の在りようの問題なんです。
ヤクザはその人生の中で他人を傷つけ迷惑かけてきた罪を、その身をもって知るべきなんです。
「(監督のコメント)ヤクザは刑務所で親族以外面会禁止。自分がその立場だったら、すごくつらいなと」
は?組員が面会に来たら組を辞めたくても辞められないじゃないですか。辛い?当然でしょ。刑務所は快適さを求めるホテルじゃないんですから。人権に制限をかけられるという罰を受けに来てるんですから。何寝ぼけたこと言ってるんですかお坊ちゃま。
この映画はめちゃくちゃ好きです。今年最高の作品になると確信してます。舘ひろしの迫力にシビれ、綾野剛のぷりケツ…いや刺青をガン見し、尾野真千子との夫婦漫才っぽい可愛いやり取りに悶絶しましたよ。最後の翼とアヤのシーンでは爆泣きしましたよ。ええ、名作です。綾野剛ファンで良かった。
しかし色気ダダもれの綾野剛にシャブ中の如く溺れる一方、SNSで、この才能あふれる有名私立大学出身監督のキラキラした青臭いコメントを読み「バッカじゃねえの?お花畑の住人か」と思ったことも事実です。
すいません、空気読めなくて。
ーーーー追記ーーーー
名作と言い切りましたが、個人的に言及しておきたい不満点も挙げておきます。
・オープニング。アレ出されたら、もうラストに至るまでの話の展開が想像できて面白さ半減です。他の映画でもたまにあるけど、よほどの「そう来たか」展開じゃない限り、この手法は禁じ手にしてほしい。
・ガチの綾野剛ファンだけど(小声)さすがに19歳役はビジュアル的に厳しかった。顔の皮膚のたるみとか声がおっさんとか。ただ青年時代を他の若手が演じたら、作品としてここまで評価が高かったかは疑問なのでヨシ!
・ユカへの執念。これ普通ならヤバいストーカー案件。
・ユカ母娘を待ち伏せした朝から秒で仲良くなってるけど、そこの過程を省略して「大事な家族になりました」って雑過ぎじゃないですか?
・ラスト、そもそもこんな結果になったのは市原隼人が「写真くらいいいじゃん」と言って撮らせたのが直接の原因だし、ネットにアップしたヤツが一番悪いのに、山本を刺すなんて逆恨みもいいとこ。この結末見ると、やはりヤクザは暴力で解決しようとするんだな。こりゃ自分の生活圏に近づいてこないようにしなきゃなって改めて思った。
・ミレパのMV素敵過ぎるけど、ネタバレ感半端ない。情報解禁時の宣伝は、ネタバレ撲滅推進派議長として検閲を厳しくして情報の統制を敢行したい。
・銭湯のシーン、もっと長くアップで全身舐め回すようなカメラワークを!できれば正面から!3分は見たい!
作品の好きなところ、素晴らしかった点も列挙したいが、いい加減長文になり過ぎるので割愛…残念。
こんばんは。通りすがりのコメントにわざわざのご返信ありがとうございます。
ヤクザと家族は、綾野剛映画としてはビジュアル含め、めちゃくちゃ好きなんですが、脚本そのものとしてはあまり上手くない出来だと思います。
作品の傾向はスターサンズの会社としての意向もあるのかな?
おたまさんへ
コメント、有難うございました!
藤井道人監督が苦手なBloodです。「やたら画力の高い男性誌の漫画」って言う作品が続いてる気がして。脚本も一人で書かれているみたいなんですよね、藤井道人さん。違う視点を持つ「仕事仲間」を持つべきじゃないかと、偉そうな事を言ってみるw
バリカタさんこんばんは。
映像としては一見の価値ありだと思うので、綾野剛PVとして見るならガチ勢としては大満足です(笑)。ホムンクルスは怖そうですが(ホラー苦手)綾野剛見たいがために映画館行きます!
おたまさん、コメントありがとうございました。
そうなんですよね、演者さんが気の毒になるくらいのお話の内容、演出でした。残念でした。綾野さんのホムンクルスに期待してます。原作ファンなので。