「【過去と現在をつなぐもの】」ヤクザと家族 The Family ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【過去と現在をつなぐもの】
この生きた証をめぐる物語は壮絶だ。
そして、自分は一体、何者かと問い続けているとしたら、それは、ヤクザも僕達も同じではないかと思った。
(以下ネタバレあります)
↓
彩が、「父はどんな人だったんですか」と、翼に問いかける。
翼は、ヤクザに父を殺されていた。
「話そうか」と答える翼。
このエンディングの場面、とても胸が熱くなる。
賢治は、翼の決意を察知して、行動に出たのだ。
賢治も、ヤクザに父を殺されていた。
賢治は、自ら中村の身代わりになった。
賢治は、自ら翼の意図を察し、行動に出たのだ。
賢治の短い人生は身代わりの人生だ。
ヤクザの人生なんて、こんなものだと、賢治は自分自身に言い聞かせていたのかもしれない。
救いは、ヤクザにではなく細野に送ってもらったことかもしれない。
贖罪でもあったのだろうか。
ヤクザの血で血を洗うようなことはもうないのだろう。
ヤクザの契りの物語かと思っていてが、見事に裏切られた。
自分は一体、何者かと問い続ける葛藤の物語だ。
描かれた反社会的勢力を取り巻く環境や、その変化は、この作品のメインテーマではないと思う。
一人のヤクザの決して長くはない人生を通して見た、家族の過去と現在をつなぐ、重厚な物語だ。
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