劇場公開日 2021年2月5日

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「家族を描くあまり学校を描けていない」哀愁しんでれら わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0家族を描くあまり学校を描けていない

2021年2月11日
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 非常に面白いです。胸糞展開なんですけれども、演者も裏方も一体となって素晴らしい作品となっています。

 不満点を明確なネタバレは避けつつ先に処理しておきます。学校が描けていません。たとえば、あの学校は一応私立なのかな?ある程度都会でお弁当持参なので(田舎の公立小学校は給食制度がないところもあります)。だとしたら、「同級生=バカ」と定義する父親の考えは間違ってるでしょう。少なくとも入学時は同レベルですしまだ2年生ですから。大きく差は出ません。それこそ父親がそうされてきたように転校すれば良い話です。

 子どもが通っている学校の校医をさせるなんて、よほどの過疎化した地域でないと行えない芸当です。また、検診中に養護教諭や担任がいないという状況もあり得ません。

 学校に意見しただけでモンスターペアレントというように誘導するのもどこか違うように感じました。放送室の乗っ取りはもってのほかです。

 つまり、学校に関するディテールはちょっと甘いのかなと思ってしまいました。

 あと、あの短時間で踏み切りからは救い出せないよなーとか、酔っぱらいをタクシーで返してくれるのかなーとか、金持ちの医者が感謝の意を示す際にカフェならまだしもファミレス連れて行くのかなーとか、細かなツッコミどころはありますが…

 そんなのどうでも良くなるくらい映画にはパワーがありましたね。素晴らしかったです。

 「母親になる」と「母親である」という違いに苦しむ主人公。血縁関係がない中で必死に母親になろうとするあまり、周りからの抑圧にも苦しみ、自らが自らを変に律することで苦しみ、最終的には自分が一番なりたくない母親像に近づいてしまうという物凄い話でした。

 一番なりたくない母親像というのは自らの母親にされた虐待や「母親やめることにしたから」と出ていかれたことから主にきているのですが、それと対になるシーンには思わず身震いしてしまいました。

 焼肉のシーンがとにかく最高で。父親が主人公に娘をぶってしまったことを説教するんですが、主人公はどうしても焼けていく肉が気になってしまう。その肉の熱の高まりに合わせるかのように父親からさらに怒られ、「母親失格です」という主人公が一番言われたくないことを言われてしまうという流れがワンカットで収められていて素晴らしかったです。その後の展開含め。

 父性、母性についてはこれまでも描かれてきています。しかし、今回は良い母親とは?というテーマを描きつつ、家族という公共性の全くない閉鎖的な空間が狂信的に進み出すとどうなってしまうのかというのがまた新しいなと思いました。

 子役の頑張りが目立ちましたね。監督の次回作も楽しみです。

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わたろー