「必要なので観ることにした」アングスト 不安 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
必要なので観ることにした
ホラーとスプラッターは大嫌いなので、絶対観ないことにしている自分。
なぜ禁を犯し、自制を解いたかと言うと
大切なフォロアーさんが僕の「桜桃の味」に下さったコメントに、ふと本作に触れる一文を残して下さっていた事と、
もう一つ、一昨々日、職場で僕は大変な経験をしてしまったからなのだ。
つまり、
会社の立ち話で最近話題になっていたのは
・お隣り中国で日本人駐在員の家族が立て続けに刃物で襲われ、そして
・日本国内でも先々日は福岡のマックで、そして
・先日は僕が住む街のバス停でも、通り魔が中学生やサラリーマンを次々と包丁で刺した。
犯人は徒歩で逃亡中であり、現在報道で大騒ぎになっている。
・なぜだろう、世の中のみんなが恐ろしく不安とイライラを抱えていて、殺傷沙汰や戦争が頻発している昨今。
それで、
仕事中に同僚との何気ないやり取りがあったのだ ―
「僕だって本心をむき出しにすれば包丁でこうするかもよ」と笑って言ったらば、彼は
「ちょ、、やめてもらえる? 亡くなったのは友人なんです。さっき知ったばかりで」と急に泣きながら場を離れた。
だから、「何が起こったのか」を、僕は急きょ、知る必要が出来たのだ。
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「この問題」は、実は以前から僕の課題でもあって、精神科医の講演会で挙手して質問を投げかけた事もある、
Q:私「患者は犯罪を犯しますか?その確率は?」
A:ドクター
「よく尋ねて下さいました。精神疾患の患者さんの犯罪発生率は健常者の10分の1です」
「報道と記憶に強く残るので病人はやりかねない人々と思われがちですが、実際は病人は犯罪を起こしません」と。
では“正常ではない状況の人たち”はどのように裁かれるのかも知りたくて、森田芳光の「39.刑法第三十九条」も僕は観ている。
ずっとこれまで、病者との付き合いが多かった僕にとっては、今回、同僚を泣かしてしまった不始末を、改めて消化する義務が生じたのだ。
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本作、
猟奇殺人を繰り返す男の
「供述調書」と
「医師の鑑定の所見」と、そして
本人の独白 (ナレーション )だけで成り立っているシナリオ。
徹頭徹尾、本人の目線だけでスクリーンは完結する。
何も納得することも、
学習することも、また同情することもなく、鑑賞を終了した。
空虚な思いだが、友達を失った同僚がいる職場に今から戻るところだ。