「撃ちますよ。」アングスト 不安 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
撃ちますよ。
粗挽き肉ぎっしり、肉汁たっぷり、マスタードでっぷり、フランクフルトはうまいのだ。
腸皮にミンチ肉を詰めるというグロテスクさがまず良いし、ミンチ肉だからなんの肉が入ってるかわからないところにもときめく。
人差し指くらいの大きさで皮が弾けるジューシーなウィンナーも良いけれど、太くて長くて皮の硬そうなフランクフルトはやっぱり特別なのだ。
この映画を観た後にフランクフルトを食べたら異常に美味くてドキドキしたので、まずはフランクフルトについて語ってみた。
輸入食材屋さんで売ってる、読めない言葉が書いてあるパッケージの、やたら高いやつ。やたらうまいのよね。
殺人鬼目線の映画は、殺人犯自身がドジでグズで計画性に欠けているほど、魅力的で恐ろしく観られる。
そこに自覚がなければ尚更のこと。
スマートにやっているつもり、クレバーに動いてあるつもりなんだよね。
「緻密で完璧な計画」なんてズタボロなのにドヤドヤ大満足できているのに笑えて、カクカクした動きで常にドタバタしているのに笑えて、なぜか懐くダックスフンドに笑える。
笑えるのに、震えるほど気味が悪い。
不安定な言動には異常性が付き纏い、興味深くて目が離せない。
ダイナーにて、獲物を定めるような気持ち悪いガン見と気持ち悪い咀嚼が好き。
血をゴクゴク飲んでゲボゲボ吐いてしまうアホさ、前のめりになる興奮と欲望の暴走加減が好き。
殺される立場なら絶対にやられたくないけれど、殺しを観ている立場からしたら絶対にやってほしいことのオンパレード。
どぎついカメラワークに驚愕。
息遣いや汗ばむ湿気すら感じられるほど近づいてみたり、流れるように天に昇り全てを見下ろしてみたり。
作中の出来事と共に演出にも酔いしれることができた。
つまづいてアタフタしているシーンも丁寧に見せてくるので、苛つくところも多々ある。
終盤だって本当はもっともっと頑張ってめちゃくちゃにやっちまって欲しかった。
ただ、その中途半端加減やテンポの悪さも不気味さを増幅する効果になっているんだと思う。
全体的にアンバランスな映画で、それが気持ち悪くて気持ち良い、好きな作品だった。
血を飲むときは一気飲みじゃなくて少しずつ、ワインを嗜むように飲むのが良いのよね。