「見なければよかったと思った理由」アングスト 不安 ぐちたさんの映画レビュー(感想・評価)
見なければよかったと思った理由
映画が終わってまず思ったのは見なければよかったということだった。映画を見てそう思うこともなかなかない。なぜそう思ったのか考えてみた。
被害者をナイフでめった刺しにして、主人公も血まみれになるシーンはもちろん正視しにくいし、被害者の不気味に白い顔は何度も見たくない。
ほかにも水音、足音、不穏な音楽など、不快な要素は多いが、なにより不快なことの一つは、倫理的な葛藤を全く感じていない主人公が、異常な連続殺人を犯してしまう発想を理解できてしまうことであろう。
子供のころから置かれてきた環境が主人公の内にサディズムの種をまき、育ててしまった。自分を虐げ、自分の中に狂気を育てた者への復讐であり、その狂気の発露としての連続殺人である。
もう一つは、報われない連続殺人に主人公が必死で取り組んで、当然の帰結として報われないことである。
言うまでもなく殺人は報われるべきものでないが、主人公は血みどろになり汗だくになり右往左往して、おかしな表現であるが、一生懸命殺人に取り組んで、ほどなく捕まってしまう。その報われなさは我々の(私の)人生の報われなさを思わせる。
このように書いてみたが、しかし、感じたことを十分に書けた気がしない。よくまあどう思えばよいのかわからない映画を作ったものだと思う。
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