「とても変で不快な作品ですが、それを狙ったのならある意味凄い作品です。」アングスト 不安 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
とても変で不快な作品ですが、それを狙ったのならある意味凄い作品です。
過去にVHSビデオソフトで発売され、その異様なカメラワークや内容で一部都市伝説的な作品が何故か今になって劇場公開されると聞けば、変な映画好きには興味が沸きw、ポスター画像の精神的に来る様な恐怖モノな感じで結構期待して観賞しました。
都内では「シネマート新宿」のみの上映で、この手のモノが大好きな「ヒューマントラストシネマ渋谷」でなかったのも興味がそそられましたw
自分が観賞した回は完売の満員御礼。
コロナのソーシャルディスタンスとは言え、この時期での満員はかなり凄い。
となれば否応にも期待は高まります。
で、感想はと言うと…えっ?と言う感じで一言で言うと変な映画。
不安と言うよりか、個人的な感想は不快な感じの作品です。
…でも、この不快で不安定な感じをあえて狙ったのであれば、凄い作品かも。
終始付きまとう「?」が頭から消えないんですよね。
シリアルキラー、サイコキラーの心情を描いていると思うんですが、どうにも理解出来ない。
今年の2月に観た「アントラム 史上最も呪われた映画」どころの騒ぎではない(アレはある意味狙った感じのコメディでもあると思うのでw)
サディスティックな殺人鬼が殺人行為に興奮し、自分が殺害した死体を見せて、恐れおののいた顔を見て悦に浸ると言う精神異常者の話であるんですが、そもそもシリアルキラーの気持ちを理解する事は出来ないし、そこに至るまでの幼少期の体験からの行動も理解し難い。
そもそも行き当たりばったりな感じの行動で犯罪(殺人)を犯していき、行き急ぐかの様に行うが、"なに、そんなに焦ってるねん"と言いたくなるばかりに焦ってる。
それがガススタンドのダイナーで食事する行動や車に乗り込むのに白の上着がドアに挟まれて、裾が車から出ているのにも現れている。
「早く殺人を犯したい!次の生け贄が驚く顔が見たい!」と言う気持ちの現れかも知れませんが"もうちょっと落ち着け"と言いたくなる。
"それがシリアルキラーの心境だ!"と言われればそうなんですがw
カメラワークは常に俯瞰で撮る感じで当時なら結構凄いかも?と思えたとしても、今ならドローンを使った撮影で大して珍しく感じない。
また、主人公に設置されたステディカメラでのカメラワークがどうにもバラエティの芸人さんのレポート映像みたいで、周囲が結構揺れるので観ていてなんか気持ち悪くなりますw
音楽も終始単調かつ不安を駆られる様な音楽がリピート的に流れて"なんだかなぁ~"的だし。
実在の殺人鬼による事件を題材としていて、反社会的な内容からオーストリアでは1週間で上映打ち切りとなり、ヨーロッパ各国で上映禁止。
イギリスとドイツではビデオの発売も禁止され、アメリカでもXXX指定がついたとの事ですが、XXX指定ってなんか凄そうな感じがするんですが、実際にはR18を表すモノで、アダルト作品なんかを指しているのと同じで、なんか過剰に過激な作品と言うのを煽っている感じでもあるんですよね。
正直に30年前なら結構キタとしても、今ならそうでも無い。そう感じない。
だからこそ"何故、今になって公開された?"と言うのが謎なんですよね~
精神的に来るかと言えば来ますし、終始不快な感じで理解出来ない(しづらい)のが展開されるから、シリアルキラーの気持ちが解らないと、この作品の伝えたい事が伝わらないと言う所が自分の中での着地点です。
ただ、それでも「何故こんな作品を作ろうとしたのか?と何故作ったのか?」は気になりますね。
「悪魔のいけにえ」の様に過激ではないし、「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター博士の様に知的でもない。
その微妙で理解し難い気持ち悪さが絶妙と言えば絶妙w
主人公も絶妙な感じで不快感を醸し出してますが演じるアーウィン・レダーは「U・ボート」や「アンダーワールド」にも出ているのでそれなりに実力派ですが、なかなかな作品チョイスですw
今回の劇場公開ではダンテの「神曲 地獄篇」の一節「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」と言う言葉が飾られてますが、"そこまで言う程かぁ~"な感じでこの辺りもアントラム臭がするんですよねw
感じた事を狙って製作したのなら、確かに凄い作品ですが、ならば余計に"なんで今更の上映やねん。もうちょい早くせいよ!"と言いたくなるし、かと言って理解はし難い。
う~んアンニュイな作品ですなw
アングスト=不安と題名ですが、個人的には
不快=Discomfort、yucky
俯瞰=Bird's-eye view、Overlook
の方がしっくりくるかな。
いろんなシリアルキラー物の作品がありますが、個人的にはどれも割りと合わないし、しっくり来ない。でも、そのしっくり来ない部分を理解しようとして、その先を見ようと踏み込むとかなり危ない作品なのかも。その先にある触れてはいけない感性の部分で上映禁止となったなら頷けます。
密かに話題になってる作品ですが、個人的にはあんまりお勧めは出来ません。
でも、変な映画が好きな人には押さえておかなければいけない作品かと思いますw