劇場公開日 2020年6月12日

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「世界一不幸なハンドルキーパーが登場。」ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0世界一不幸なハンドルキーパーが登場。

2020年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『クワイエット・プレイス』の脚本を手がけたスコット・ベックとブライアン・ウッズが本作の監督と脚本を担当。それだけ聞くと一体どんな新たな演出を見せてくれるのかと期待が高まるんですが、そこに制作総指揮としてイーライ・ロスが名を連ねたことで、微妙な空気が…。

そしてその予想は半ば当たり、怪しいお化け屋敷に誘い込まれた男女が、徐々に来てはいけない場所にいるのでは、と気付く前半部は先の読めない楽しさに引きつけられました。いよいよお化け屋敷が本来の役割をエンジン全開すると、アトラクション・ホラー要素も炸裂。まぁおばけ屋敷が舞台なので、アトラクション的になるのは当たり前なんですが。

一応主人公の恐怖の記憶との結び付きを仄めかすなどの伏線はあるんですが、それが十分機能しているかどうかお構いなしに、ロス風に味付けを施されたと覚しき衝撃的な映像が繰り返されます。衝撃的なことが起こりそうな場面の直前に、カメラがふと別の場面を映し出し、ちょっと気が緩んだところでギャー!という、むしろ映画の文法に慣れているほど無意識に読んでしまう展開を逆手に取っていて、やっぱり底意地悪いなー、と苦笑い。

期待の脚本はちょっとブレがあって、特に中盤から登場する、ある人物の扱いが…。気の毒すぎる…。

建物内の構造、美術が面白いので、映画好きの高校生なら文化祭の出し物に取り入れるかも。お化け屋敷の持ち主達が一生懸命設計して、DIYでトンテンカンテン作り上げたことに思いを馳せ、ほのぼのすることでしょう(エンドクレジットに彼らの苦労の跡が…)。

少なくとも上映中はまったく時間が気にならなかったし、程よく背中をゾクゾクさせてくれるので、これからの季節にピッタリの作品。こういった、ホラー映画として期待される要素はちゃんと抑えてくれているイーライ・ロスと監督コンビは、意外に真面目でいい奴なのかも、と考えを改めたのでした。ちゃんとロメロ師匠に敬意を表して、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)の映像を使ってるし!

yui