レイニーデイ・イン・ニューヨーク : 特集
ウッディ・アレンの魅力全開のラブコメディ…原点「アニー・ホール」への回帰
“あの頃”のロマンティックな恋が、現代のニューヨークで鮮烈によみがえる
名匠ウッディ・アレンが、原点「アニー・ホール」を彷彿とさせる、新たなロマンティックコメディを誕生させた。7月3日に公開を迎える「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」は、すれ違う男女を軽やかに描いた、まさにアレン監督の魅力全開のラブストーリーだ。
出演は、「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ、「マレフィセント」シリーズのエル・ファニング、世界の歌姫セレーナ・ゴメス。フレッシュなキャストが、男女の恋模様や運命のいたずら、切なくも過ぎていく人生などを描いた “あの頃”の物語を、現代のニューヨークで鮮烈によみがえらせる。往年の名作へのノスタルジーを刺激する、新たなマスターピースとなるはずだ。
「アニー・ホール」「マンハッタン」W・アレンの愛する街で交錯する恋人達
予期せぬ雨の魔法にかかったNY、すれ違う男女のうつり気な恋の行方は…?
第50回アカデミー賞で作品賞を含む4冠を獲得した「アニー・ホール」、作家を目指す男の生活と恋愛を描いた「マンハッタン」……アレン監督とダイアン・キートンのゴールデンコンビが放った1970年代の名作たち。アンニュイなキャラクターが織りなす人間関係を軸に、恋、セックス、嘘と駆け引き、人間の弱さや愚かしさ、そしてままならない人生を、皮肉とユーモアたっぷりに描いてきた。
往年の名作のテイストが感じられる最新作の舞台は、アレン監督が愛する街ニューヨーク。大学生のカップル、ギャツビーとアシュレーは、ロマンティックな週末を過ごそうと考えていた。生粋のニューヨーカーであるギャツビーは、久々にマンハッタンを訪れるアシュレーに、街を案内したくてたまらない。しかし予期せぬ雨によって、計画は瞬く間に狂い始める――。
御歳84歳のアレン監督は、「僕は、昔からこういうクラシックなラブストーリーが大好きなんだ」と語る。多彩なジャンルに挑んできた映画人生の終盤で回帰したのは、ポジティブなメッセージがこめられた決定版とも言える物語。雨のニューヨークで人々に訪れる様々な瞬間は、見る者が人生を愛さずにはいられないような、素敵な魔法をかけてくれるはずだ。
ティモシー・シャラメ×エル・ファニング×セレーナ・ゴメスが豪華共演
軽妙洒脱、ビタースイートな世界観で、若手スターがビビッドな輝きを放つ
旬のキャストが贅沢に出演していることも、アレン作品の魅力のひとつ。アイデンティティに悩み、どこか満たされないギャツビーに扮するのは、若手実力派シャラメ。ファニングとゴメスが、アレン作品のミューズとして、軽妙洒脱かつビタースイートな世界で輝きを放つ。
■人気急上昇T・シャラメが演じるのは… アレン監督自身を投影した主人公
シャラメが演じたギャツビーは、裕福な両親に反発する、モラトリアム真っ只中の青年だ。古き良きニューヨークを好み、ラルフローレンの定番ジャケットを着こなす姿は、若き日のアレン監督そのもの。早口でしゃべり悩み続けるシャラメに、思わずクスリとしてしまう。
さらに、アレン監督お約束のロマンティックな描写も満載。「君の名前で僕を呼んで」で見事なピアノの腕前を披露したシャラメが、メランコリックな「Everything Happens To Me」を弾き語り。チャンとの距離を縮めるメトロポリタン美術館でのデートや雨の中でのキスシーンは、美しい瞬間としていつまでも心に残るだろう。
■“天真爛漫なお嬢様”ファニングדスパイシーで知的な美女”ゴメス
ファニングは、アリゾナ出身で銀行経営者の父を持つ、ギャツビーのガールフレンド・アシュレーを体現。ジャーナリスト志望の大学生で、憧れの映画監督にインタビューするためマンハッタンを訪れる。癒し系で天真爛漫な彼女は、次々と現れる映画人たちの誘いに舞い上がり、ギャツビーとのランチをドタキャン。ファニングが華やかなニューヨークの夜に巻き込まれていく世間知らずなお嬢様役で、コメディエンヌの才能を開花させた。
女優としても活躍するゴメスは、ギャツビーが飛び入り参加した学生映画の撮影で、キスの相手役を務める知的な美女チャンに扮した。キスに文句をつけたり、ギャツビーの屁理屈を論破したりと、毒舌が止まらない! 最初はチャンを厄介に思っていたギャツビーだったが、飾らない自分を認めてくれる彼女に、少しずつ心を寄せていく。
■ジュード・ロウ、ディエゴ・ルナ、リーブ・シュレイバーが見せる切ない人生模様
劇中では、ニューヨーカーたちの“ままならない”人生模様が進行する。芸術家としての自分を見失いふさぎこむ映画監督ポラード(シュレイバー)。妻と親友の浮気現場に遭遇してしまう脚本家ダヴィドフ(ロウ)。女遊びをやめられないプレイボーイの俳優フランシスコ・ヴェガ(ルナ)。
芸達者なベテラン俳優たちが、嘘や見栄に絡めとられた、不格好だが愛おしい人生の悲哀を浮かび上がらせる。
苦悩に満ちた主人公、光の魔術師による映像美、物語が生まれるNYの街角
記念すべき第50作を彩る、ウッディ・アレン作品のエッセンスを徹底解説
本作は、アレン監督の記念すべき第50作に当たる。ここでは随所にちりばめられた“アレン流”エッセンスを、過去作とともにご紹介。あなたも目くるめく「ウッディ・アレンワールド」に足を踏み入れてみては……?
■【エッセンス1】人物描写とストーリーのモチーフ●苦悩する主人公
アレン監督は「おいしい生活」「マンハッタン」「ミッドナイト・イン・パリ」などで、インテリや上流階級への皮肉を存分に効かせてきた。本作でも成金の両親との関係をこじらせ気味なギャツビーに「死ぬほど退屈なパーティで、クソみたいなハイソ連中とは飲むのはごめんだ」と、切れ味抜群のセリフを言わせている。
そして懐古主義者ギャツビーは、「ミッドナイト・イン・パリ」で“ノスタルジー症候群”を自称し、1920年代パリの黄金時代へタイムスリップしてしまう小説家ギルを踏襲するキャラクターだ。同作のラストシーンは、ギルと古本屋の女の子が並んで歩く、雨の中の散歩。「雨」はアレン監督のロマンティシズムを理解する、大事な物差しなのかも……?
●ふたりの異性の狭間で揺れる…魅惑的な三角関係
ギャツビーをはじめ、アレン作品のキャラクターは魅惑的な異性に翻ろうされてばかり!? 「マンハッタン」では、恋人トレイシーがいながらも、親友の愛人メリーによろめいてしまう作家アイザックの姿を描いている。「それでも恋するバルセロナ」では女性3人が芸術家を奪い合い、「カフェ・ソサエティ」では純朴な青年と、同じ名前を持つふたりのヴェロニカとの恋が展開。三角関係は、甘くてほろ苦いアレン作品に欠かせない要素なのだ。
●“映画”が重要なテーマに
ギャツビーとチャンは学生映画の撮影で出会い、アシュレーは華麗な映画界を一夜で渡り歩く。映画内の人物がスクリーンから飛び出す騒動を描いた「カイロの紫のバラ」、売れっ子コメディ映画監督の苦悩がにじむ「スターダスト・メモリー」、失明した落ち目の映画監督が再起に挑む「さよなら、さよならハリウッド」など、アレン作品では“映画”をテーマにしたものが多く見られる。
■【エッセンス2】“光の魔術師”ビットリオ・ストラーロによる撮影
撮影監督は「地獄の黙示録」「ラストエンペラー」などで3度オスカーを受賞し、“光の魔術師”と呼ばれるビットリオ・ストラーロ。「カフェ・ソサエティ」「女と男の観覧車」に続き、アレン監督と3度目のタッグを組む。
ギャツビーのシーンではおもに固定カメラを使用し、曇り空や雨の日を選んで演出した。一方、アシュレーのシーンではステディカムで晴天の太陽光をとらえるなど、それぞれのキャラクターを意識したニューヨークの異なる表情を、流麗なカメラワーク、印象的な光と影で切り取っている。
■【エッセンス3】ニューヨーカー気分を味わえる、クラシカルなスポット
「“ピエール”を予約して、食後に“カーライル”のバーで飲もう」「MOMAで写真展を見て“ダニエル”でディナー、ドレスアップして行こう」――。ギャツビーのデートプランに、冒頭からときめきが止まらない。チャンと訪れるメトロポリタン美術館(MET)は、「おいしい生活」の成金夫婦が訪れるカルチャースポットでもある。
ギャツビーがピアノを演奏するベメルマンズ・バーは、老舗カーライル・ホテルの中にあり、ホテルは「さよなら、さよならハリウッド」にも登場。アレン作品の中で様々なドラマが生まれたクラシカルなスポットをめぐりながら、ギャツビーとのニューヨーク散歩を楽しむことができる。