「静かな無常感に涙した」ホテルローヤル エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
静かな無常感に涙した
「百円の恋」「アンダードッグ」の武正晴監督作。直木賞を受賞した桜木紫乃の自伝的小説の映画化であるが、原作とはテイストが異なる。
冒頭、廃墟と化したラブホテルにグラビア撮影のため若い男女が訪れる。園子温監督の「アンチポルノ」で鮮烈な印象を残した冨手麻妙さんに魅了される最高のオープニングだ。
北海道の釧路湿原の絶景を臨む『ホテルローヤル』。作品はこのホテルの過去に遡る。
ホテルの経営者である両親(安田顕・夏川結衣)と一人娘(波留)、従業員(余貴美子・原扶貴子)、アダルトグッズの営業(松山ケンイチ)、そしてホテルに集う人々(教師と生徒の伊藤沙莉・岡山天音、中年夫婦の内田慈・正名僕蔵)の群像劇。
メインは波留さん。ピュアな魅力が際立つ。ラブホの娘と馬鹿にされて育ち、抜け出そうとするも、美大に落ちて家業を手伝うことに。そこで様々な人生を知り成長した。ラブホの存在の意味を知り、愛着を感じるに至った。松ケンさんへの純粋な恋心もよかったなぁ。
若き日の両親のエピソードが挿入され、ホテルへの熱い思いを知った。廃業後の無常感に涙が溢れた。時の移ろいとともに容赦なく存在する『無常感』に弱いのです。
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