「往年の伊丹作品の様な匂いがする、ちょっと惜しい作品です。」ホテルローヤル 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
往年の伊丹作品の様な匂いがする、ちょっと惜しい作品です。
面白そうな設定で興味を惹かれ、鑑賞しました。
で、感想はと言うと惜しい!
物凄く良い感じなのに、何かが足りない。
釧路にある歴史あるラブホテル「ホテル ローヤル」の廃業までの歴史を振り返ると言った、何処か寂しくて隠微な感じが好奇心をもぞもぞさせる感じが良いんですが、全体的に何かマイルド感があると言う感じで作品の全体の雰囲気は伊丹十三作品を思い出させる様な感じですが、そこにアクと言うか、毒な部分が薄いんですよね。
立ち入り禁止なのに勝手に忍び込んで、投稿ヌード写真の撮影をするカップルのスタートは良いんです。
隆盛を思い出させる様な映像もクロスさせて、ワクワク感があります。
ラブホテルと言う名前は今や古い感じで、ラブホテルと呼ばれる以前は連れ込みホテル、アベックホテル、モーテルと呼ばれていて、今はファッションホテルなんて呼ばれたりしてますが、ラブホテルと言った呼び方は何処か卑猥な感じがして、昭和レトロで隠微な匂いがプンプンしますねw
そんなラブホテルが舞台でホテル名が「ローヤル」とはベタベタな感じが素晴らしい。その辺りを狙ったとは思いますが、またエンドロールで流れる「白いページの中に」は柴田まゆみさんの役40年前の曲ですが、いろんな方にカバーされている名曲。
この選曲はめっちゃ良い♪ 良いセンスの選曲です。
そんなノスタルジーに浸れる感じの良い物が多いからこそ、作品にもう少し毒は欲しいです。
子育てと親の介護に追われる熟年夫婦なんかが使っているなんて何処か地域に密着した感じも良い。また部屋にはミカンが常時置いてあるなんてサービスもたまらんw
ラブホテルは非日常を求める場と言うのは分かるし、ワイゼツな部屋の雰囲気とミカンのギャップさが良いんですよね。
個人的には回転ベッドかウォーターベッド、鏡張りの天井や壁なんかも欲しかったですw
それぞれに悩みを抱え、行き場を失った女子高生と妻に裏切られた高校教師が宿泊した所から物語は動き出すんですが、そこまではまったりとし過ぎw
もう少し、他の事件と言うか、問題があっても良いのですが、どうにもスロースタート。
そこがマイルド感を感じさせてる。
心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的になる事でローヤルは廃業の道を辿っていく形になるんですが、そこまでが遅いかな。
またラブホテルを大学受験を失敗し、甲斐性のない父、大吉に代わり半ば諦めるように継いだ雅代は流される様にホテルを運営するんですが、何処か疲れていて、卑猥な感じと言うかエロの匂いがしない。
ラブホテルの経営者が皆卑猥な感じがする訳ではないんですがw、主演の雅代役の波瑠さんは透き通る様な感じがして個人的にはちょっと綺麗過ぎるw
だからラブホテルと言う隠微な感じから何処か遠くて、違和感があるんですよね。
また、アダルトグッズの営業マンの聡史役に松山ケンイチさんが演じられてますが、豪華なんですが、アダルトグッズの営業マンにしては男前過ぎるw
もう少しくたびれた感じの中年男性なら違和感も無かったかな?と思うのですが、綺麗過ぎる波瑠さんと男前過ぎる松山ケンイチさんのコンビがどうにも違和感を拭いきれない感じです。
余貴美子さんの疲れっぷりは凄いですw
夏川結衣さんは綺麗ですw
釧路の自然が良くて、釧路湿原や釧路川と言った風景に卑猥で何処か古臭い感じのラブホテルとのギャップさは監督の狙い通りかと思います。
雅代の美術への拘りや未練をもっと昇華する事で良くなると思いますし、言わんとしている事や狙っている事は分かるし、とても良い物があるだけに惜しい。
ミニシアター系の映画館を中心に上映していればスマッシュヒットな感じもしますが、今や「鬼滅」ブームで勢いに乗る東宝館での上映ではちょっと埋もれてしまいそう。
また、北海道の釧路が舞台なのに何故か名古屋の放送局「メ〜テレ」が製作幹事なのもちょっと変な感じです。
ちなみに北海道のラブホテルの多くはバリアフリー化が進んでいるそうです。
バリアフリー化を進めるのは良いにしても、そこに掛かる費用の捻出と地域の過疎化で利用客の現象で経営が厳しいホテルにはなかなか難しい所。
そんな儚さを兼ね備えた作品かと思います。
でも捨てがたい魅力があるので、興味がありましたら、如何でしょうか?