「【"「ホテルローヤル」の部屋に蜜柑が常に供えられている訳・・ " 何故、人は且つて深く愛した人を裏切り、捨て、不倫をするのであろうか・・。 】」ホテルローヤル NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"「ホテルローヤル」の部屋に蜜柑が常に供えられている訳・・ " 何故、人は且つて深く愛した人を裏切り、捨て、不倫をするのであろうか・・。 】
■率直な感想
-武正晴監督は、"非日常の空間"に、様々な理由で訪れる男女の関係性を描く事で、彼らと接した、雅代(波瑠:透き通る様な美しさである。)の、人生に対する価値観の変化を描き出そうとしたのであろうか?-
・両親が不和で、母(夏川結衣)に逃げられた父(安田謙)と、札幌の美術大学受験に失敗し、不本意ながらラブホテルの運営をする事になってしまった雅代が出会った、ラブホテルに来る様々な人達
それは、
「日常の忙しさに疲れた妻が、夫と非日常の空間で夫に甘え、回りを気にする事なく、声を上げて交歓する場」であったり、
「妻が不倫している高校教師と両親から捨てられた女子高校生」であったり・・・
-掌編の積み重ねで、各男女の関係性を描こうとしているのだが、如何せん描き方が浅くなってしまっている。
伊藤紗莉さん、岡山天音さん、安田顕さん(あるレビュアーの方から”抜けているではないか!”と端的な指摘あり。若き日の情熱溢れる姿からの零落した老年期に入った男を見事に演じている。仰る通りである。2020.11.26追記。)、流石の貫禄の余貴美子さんを始め、役者さんは良いのだが・・。-
・がある日、悲しい出来事が起こり、「ホテルローヤル」の経営は徐々に、厳しくなって行く・・。
-だが、きちんと描かれていない・・。-
<雅代が、高校時代から好意を持っていたアダルトグッズの営業マン、宮川(松山ケンイチ)に、廃業を決めた後、身を委ねようとするシーンの二人の会話は良かったし、役者も皆さん良かったのに、何故か心に響かなかった作品。
その理由は"明確"で、個々の人物の描き方が表層的であるために、作品全体に重みがなく、観客に響くモノも、軽くなってしまっているからでは無いかな?と思った作品。>
表層的。おっしゃる通りだと思いますが、その表層こそがこの作品の肝でもあるように思います。
客の人間性や関係性や営みは、主人公にとってはあくまでボイラー室から漏れ聞こえてくる声を通してしか感じられないし、その幕がかかって心理や背景に入り切れないからこそ、主人公の当事者性のなさからくる空虚感が描かれてるんじゃないかなと感じました。
唯一ミカンが、現実につながる具体的な物体だったのかもしれない