「関心を持ち続けることの大切さ」傍観者あるいは偶然のテロリスト h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
関心を持ち続けることの大切さ
後藤監督によると、報道番組で視聴率を取れないもののひとつが中東問題。理由は遠い国の出来事で自分(視聴者)には関係のない話だからだそう。
本当に関係のない話なのだろうか。
エネルギー資源のない日本は、石油の85%、ガスの23%の輸入を中東諸国に依存しており、中東の緊張はエネルギー輸入の制限にも直結する。難民問題についても、日本は関係ないといつまでもダンマリを決め込むことは不可能だ。
米国はイスラエルを支える大きな支援者であり、最近ではUAEとイスラエルの仲を取り持つなど大統領選の支持も狙ってか、より強くイスラエル支援色を鮮明にしている。
イスラエルは、パレスチナ自治区をガザ地区とヨルダン川西岸地区との間での往来を完全に分断し、アメとムチの政策でパレスチナの精神的分断を図っている。19世記、国民国家の異分子排除のメカニズムの被害者となったユダヤ人が、自分たちが受けた迫害をなぞるかのように。
気になったシーンのひとつが、神風アタックで米国に向かっていった日本人をリスペクトしているとパレスチナ人が言う場面だ。
あきらかに間違った理解をされており、日本は神風特攻で何も変えられず、ただ敗戦を長引かせ被害を拡大させてだけだ。この誤解がテロの被害を大きくしているのであれば、日本人がきちんと説明する責任がある。
後藤監督はドキュメンタリー映画制作に関しては「シロウト」であり、作品は粗削りでやや冗長だ。ただ、粗削りだからこそ、訴えるものはストレートで、この作品から学ぶことは多い。
作品は、傍観者でいることの不実を問う。
監督脚本の後藤和夫氏が運営する「シネマハウス大塚」で毎月末限定で上映中(終演後、後藤監督自身の解説付き)。
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