「誰も悪くない気がした…」護られなかった者たちへ Momokoさんの映画レビュー(感想・評価)
誰も悪くない気がした…
震災により何もかもを失くした人達の物語。避難所の風景から始まる。
身寄りを失くした老女と青年と少女が家族のように寄り添う。
震災から数年、少女は親戚に引き取られ高校生に。青年は地元を離れ職に就いていた。老女だけが貧困の中、瀕死の状態にあった。少女と青年は市役所へ「生活保護」の申請に付きそう。けれど、給付はされず、老女は餓死する。原因は老女には生き別れた娘がいて、再婚の際に連れて行くことが出来ずに里子に出した という。娘は里子に出された先で実母は死んだと聞かされ、幸せに暮らしていた。そんな娘に迷惑を掛けたくないと老女は申請を取り消す。通帳の残高は6700円。
市役所で、娘に迷惑はかけたくない旨を話している老女を面倒くさく思った職員が簡単に一言で「申請を取り消す事もできますよ」と言葉をかけてしまう。彼女はその一言で「迷惑を掛けたくない一心」で取り下げの書類を一生懸命に書く。 その結果の「餓死」 青年も少女も「取り下げ」を「受理」したら「餓死する」と判っていて「受理した」と怒り、涙する。結局、少女が市役所の職員と、その上司を拉致監禁して餓死させる。
見ている限り、市役所の上司と職員が卑劣に映るが、なぜ、再婚の時に娘を連れて一緒に…という道がなかったのか?大きな疑問となった。市役所の職員は震災の中、皆、疲弊している。
それは、今の東京でも同じ。高齢化には歯止めはかからない。障害者も減る傾向にない。本人のせいではないけれど、加齢により、異常に頑固になった相手と話のらせん階段のような状態で、意味の通じない話をしている。市役所では「障害者福祉課」と「生活保護課」の職員がメンタルをやられ退職が相次ぐ状態。
老女は自ら「取り下げの申請」をしたのだ。自分の命より大切な者のために。
「餓死」がどういうものか思い知らせてやりたくて罪を犯した気持ちは理解できるけれど「死んでいい人などいないんだ」という青年の言葉がすべてだと感じた。