劇場公開日 2021年10月1日

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「おかえりモ・・・カンちゃん」護られなかった者たちへ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0おかえりモ・・・カンちゃん

2021年10月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 東日本大震災はモンスターだった。容赦なく人を飲み込み、甚大な被害を与えた。しかし、生活困窮者、餓死者が増えるというのは人災だ。この作品、コロナ禍で公開されたことには大きな意義がある。震災と同じように経済的な打撃を与えられた者、隅々までは渡らない公的支援。自殺者、餓死者・・・家が倒壊するなどの見える災害ではない上に市民は外出も控えなければならないという、もっと厄介な現実。

 「最終的には生活保護がある」という首相の発言があった通り、障害があるなどして働き口がなかったら、正割保護はセーフティネットとなるのは間違ってはいない。ところが世間体があるので受けたくない人も多く、受給者人数はコロナの影響で爆発的に増えてるわけでもない。そして、“スティグマ”という言葉も飛び出しましたが、差別という問題も生じている。そして1%と少ないながらも不正受給の実態があること・・・

 「自助・共助・公助」といった発言はとても危険。上から「生活保護申請するな」と言ってるようなものだ。映画でも紹介されてたけど、丁寧に対応したり助けたいと願う職員がりるにもかかわらず、国からの圧力が凄まじいのだと。私事ながら、今年の月次支援金を申請する際、国は払いたくないのだと実感した。不正受給を防ぐためだと説明しつつも、実際の詐欺事件は経産省の職員が絡んでいたりと、官僚自らが行っていたことも発覚。税金を取るだけ取って、支払う段になって全くお粗末な対応としか言い様がないのが実態です。おまけに中抜き。

 「扶養照会」については、DVなどを理由に親族と疎遠になってた場合などは連絡しなくてもいい(この作品に関しては微妙)。とにかく、そうやって申請時には杜撰な対応をされたり、何かと却下する理由をつけられがち。ホームレスになっている、現金を持っていないなど、すぐにでも手を差し伸べなければならないときは積極的に保護するという意見書が2020年に提出されたこともあるので、護らなければならない人にはそう伝えるようにしたい。

 震災よりもむしろ生活保護に関するメッセージが盛りだくさんでした。役者もみんないい。高校生役から役所職員役までを難なくこなす清原果耶ちゃん、最高です。ずっと泣かされました。また、血の繋がらない家族の物語は最近やたら増えてますけど、この作品もその一つ。助演女優賞は確実でしょう。

kossy
近大さんのコメント
2022年4月23日

生々しい話ですね…。
恥ずかしさもありましたが、私の場合、申請する際の面倒臭さが嫌になって。
それに、職員の事務的な対応。
生活保護のシステムもそうですが、対応する側の人格も考えて貰いたいもんです…。

近大
CBさんのコメント
2021年10月16日

> おかえりモ・・・カンちゃん
相変わらず、ウマイ!
俺も、へええとびっくりしました。

CB
グレシャムの法則さんのコメント
2021年10月2日

本当の男、本当の女、という概念が既に過去のものとなったように、『本当の親子』について、〝血の繋がり〟を要件にすること自体が既に時代錯誤になりつつあることが『万引き家族』以降、かなり明確になってきたように思います。
かんちゃんが言っていたように映画が、〝声をあげたこと〟がキッカケになっているようにも感じます。

グレシャムの法則