「【物語としてだけでなく】」護られなかった者たちへ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【物語としてだけでなく】
僕は、この原作も読んでいて、震災と貧困を結びつけるのは、実は、どうかと考えたりしていた。
なぜなら、貧困は、震災と関係ないところでも、高齢者や一人親世帯を中心に拡大していて、深刻化しているからだ。
この作品を観て、福祉事務所で働くスタッフに憤りを感じるという人がいたら、その前に、この国の現状を客観的に理解して欲しいように思ったりする。
まず、貧困率の定義はご存じだろうか。
貧困率とは「相対的貧困率」で表される低所得者の割合や経済格差を示す指標のことで、 収入から税金や社会保険料を引いた可処分所得を高い順に並べ、中央の額の半分に満たない人が全体に占める割合のことだ。もし不明だったら、調べてください。
この貧困率が、日本は6人に1人の割合と言われ、2018年のデータだが、G7では、日本は所得格差の大きいアメリカに次ぐ高さだ。
貧困率
日本: 15.7%
アメリカ: 17.8%
イギリス: 11.7%
ドイツ: 9.8%
フランス: 8.5%
イタリア: 14.2%
では、平均所得はどうだろうか。2019年のデータでドル換算したものが以下の通りだ。
平均所得
日本: 41457ドル
アメリカ: 65636ドル
イギリス: 47424ドル
ドイツ: 47490ドル
フランス: 43771ドル
OECD平均: 41457ドル
OECD35カ国中20位で平均を下回っている。
日本は賃金の伸び率も低く、それはデフレが長引いているからとか、デフレなんだから可処分所得は増えてるとか、色々なことは言われているが、日銀が異次元とまで言われる金融緩和をして、その施策としてETFを通じた株の買い入れまでして、インフレ目標の達成はおろか、デフレの克服さえできていないのだ。
欧米では、今や、コロナ禍からの回復の途上で、インフレ懸念まで囁かれているにもかかわらずだ。
基本的には、景気が回復して、企業業績が改善して、賃金が上がって、消費にお金が回って、そして、インフレになるのだが、もう分かる通り、欠如している部分があるのだ。
金融緩和だけでは、当たり前だが、足りないし、財政だって使い方によっては景気の刺激にはならないし、規制緩和も、既得権益を打破するくらいの大胆な施策が必要なのに、どうでも良いような規制緩和(例えば、加計学園とか)で、裾野が広い規制緩和にはなっていないのだ。
岸田さんがやっと、分配だと言い始めたのは良いが、裏で安倍晋三だのが暗躍しているようでは先が思いやられる。
それに岸田さんも既得権益擁護に見える。
30年ぶりの宏池会からの首相だなどと言っているが、宏池会は、保守本流の中心で経済政策で他の派閥をリードしていたのだから、日本を一段と成長させる既得権益の打破は外せないのではないかと考える。
そして、福祉事務所の人達も、中央の高級官僚とは違って、それほど多くの給与をもらっているわけではないのに精神的な負担は、実は大きいように思う。
それで生活保護を受ける人が増えれば自分達の仕事は増える。
仕事が増えたからといって、予算がないと言われ、スタッフが増えるわけでもなく、なにやら、コロナ禍の保健所を彷彿とさせるところもある。
だから、原理原則だということになるのだ。
だから、何が問題なのか、よく考えて欲しい。
この作品を観て驚いたのが、清原果耶さんだ。
この辛い役をよくやり切ったと思う。
モネとは全く別人が演じているように見えた。
震災と貧困を結びつけることで、単純なバカが、震災だからと言いかねないのではないかと心配しているが、真面目に考えて欲しい、僕たちの国のテーマだと思うので、スコアは意図的に高くさせてもらいました。
こんにちは、おっしゃるとおりです。役人は貧乏にも金持ちにもならないように賃金コントロールされてますから福祉の現場は実際はこの映画のような饒舌かつ正義を振りかざす役人は居ないでしょうし、またその余裕もないはずです。岸田さんもおっしゃるとおりですが、徐々に、3Aのチカラ削いでいくしたたかさはあるのかと思います。