「【”死んで良い人なんかいないんだ!”2013年に改正(悪)された生活保護法に対する激しい怒りと、東日本大震災を背景に、”人間の絆”を鋭利に描いた作品。現代日本の闇を取り扱った真の社会派映画でもある。】」護られなかった者たちへ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”死んで良い人なんかいないんだ!”2013年に改正(悪)された生活保護法に対する激しい怒りと、東日本大震災を背景に、”人間の絆”を鋭利に描いた作品。現代日本の闇を取り扱った真の社会派映画でもある。】
ー 劇中にあるように、2013年、第二次安倍内閣は、
”諸外国への忖度”及び
”受給率の低さ改正”
”不正受給対策強化”のために、生活保護法を改正した。
だが、それにより、生活保護を受けるハードルは逆に高くなり、
(この、法改正の多大なる瑕疵である。)
国によって護られるべき人々を救うべきセーフティネットの綻びは、更に酷くなった。
当時、一番腹が立ったのは、今作でもメインテーマとして描かれているが、復興半ばにも至っていない東北地区の現状(一昨年まで、私は福島に自費で足を運んでいた。)が改善されていないのに、生活保護法を改正した第二次安倍内閣の姿勢に対してである。ー
◆感想
・今作では、悪人は一人も出て来ない。では、何故、福祉に携わる三雲(永山瑛太)と城之内(緒方直人)は、殺されたのか。
ー 二人の身動きできない状態のまま放置され、”脱水、餓死”という殺され方が、後半大きな意味を持って来る・・。ー
・大震災により、家族を失ってしまった黄色い服を着た女の子、カンちゃん(成長してからは清原果耶)と、ケイお婆ちゃん(倍賞美津子)、哀しき過去により笑顔を失ったかのような利根(佐藤健)の3人の血のつながりが無いのに、徐々に家族の様になっていく様。
ー ケイお婆ちゃんは、利根とカンちゃんに”笑いなさい””お帰りなさい・・”と笑顔で声をかける。そして、元理髪店の腕を振るい、利根の散髪もしてあげている。
利根の表情も徐々に柔和になってくる。勿論、カンちゃんも・・。
ケイお婆ちゃんは、善人の代表の様な人である。だが、彼女にも人には言えない事情が有った。ー
◇劇中でも、現在国会議員になった元福祉保険事務所で働いていた上崎(吉岡秀隆)が口にした
”スティグマ”という言葉。
訳せば、”汚名、恥辱”という言葉である。
特に、年配のこの国の高度経済成長を担って来られた方々が、”国には頼れない・・”という思いで、生活保護法の受給申請をしないのは、この思いが強いと言われている。
一方、劇中で描かれる高級車に乗りながら、不正受給により、”遊んで暮らす”愚かしき人間の数も減らない・・。
そして、福祉事務所で働く人々は、国や厚生労働省の意向を”忖度”し、徐々に疲弊しているのである。
劇中、上崎が悔恨の想いと共に口にするように・・。
・今作品の現代社会に対する、鋭い問題提起のシーンは数々あるが、成人し、福祉事務所で働くようになったカンちゃんが、支援する人々に言う言葉
”声を上げなければいけない・・”や
利根が血を吐くように言う”死んで良い人なんかいないんだ!”という言葉である。
そして、それらのシーンで、観ている側は、”殺人犯は、利根ではない・・”と気付くのである。
<利根が、自分が全ての罪を被ってでも、守ろうとした”血の繋がっていない”大切な人・・。
そして、津波に呑みこまれてしまった笘篠刑事(阿部寛)の奥さんや、黄色い服を着ていた男の子を含めた多くの犠牲者の様に
”死んで良い人なんかいない!”
という想いと共に、
”現行の生活保護法は、それに合致した法制度になっているのか!”
という、問題意識を観る側は、持つのである。
今作は、瀬々敬久監督が、東日本大震災を背景に、激しい怒りと共に、現代日本の貧困層に対する生活保護法の瑕疵を糾弾した骨太な社会派映画である。>
■この作品に出演した俳優さん達について
・清原果耶さん、倍賞美津子さん、佐藤健さん、阿部寛さん、吉岡秀隆さん。
テーマ性の重さに屈する事無く、夫々大きな悩みを抱える、キツイ役柄を演ずる姿には、途中から涙が沁み出てきた。
特に、清原果耶さん、倍賞美津子さん、佐藤健さんのお三方には、本当に参りました・・。
清原さんって、どこまで凄い女優さんになられていくのであろうか?
おはようございます。
「三度目の殺人」にコメントと共感ありがとうございます。
海外では「疑わしきは罰する」の傾向になっているのですか。
海外でスパイ容疑にかけられたら帰って来れないこともありますし、本当に
怯えてしまいます。
本作品。
素晴らしい作品でしたね。
NOBU様は「福島に一昨年まで通っていた」
尊敬します。くちだけでなんの行動もしない自分に引き換え、
実際に目で見て助けていらしたのですね。
円安でますます暮らし難いこの頃。貧困も他人事とは思えません。
コメントありがとうございます。
作品の背景に潜む問題を演者さんたちが読み込んだ上での表現なのでしょうが、ほんとうに凄かったと思います。
今年の邦画は良作が目白押しですね!
会社などでも、もし儲け(直接的な業績評価)に繋がらないことでも、組織にとって必要なことは、正当に評価してくれる安心感があればいいのですが、そういう評価体系がない職場では、自分の時間を割いて後輩を指導するとか、自発的に応接スペースの掃除をするとか、に目を向ける習慣がなくなっていきます。
でも、そういう職場は長期的には居心地の悪い場所になって有能な人が辞めていく、なんてことになるので、将来的にはリスクが高まると私は思います。
いつからか…もちろんハッキリとした境目はないと思いますが、日経新聞と小泉さんと竹中さんが、グローバル競争に勝たなければ日本の未来は無い、と強力に推進したことがきっかけのひとつであることは間違いないと思います。
効率を最優先するべきではない教育・文化・福祉・農業までコスパでふるいにかけるのが、かなり常態化しています。
食糧自給率が低いまま、海外の異常気象ですぐに食材が値上がりする現状への危機感を訴える政治家がいないのもその表れだと思います。