「すごいすごいすごい (悲しいけど)」護られなかった者たちへ CBさんの映画レビュー(感想・評価)
すごいすごいすごい (悲しいけど)
すごい。主人公が佐藤さんという点が重なるからか、白石和彌監督の「ひとよ」と俺が感じるところが似ていた。すごい。どうしようもない悲しさ。それを「絶望的」ということでなく、なにか心に訴えかけるように撮る。こういう映画を撮れる人って、すごい。
というわけで、とてもとてもとても悲しい内容。だけどちゃんと最後まで引っ張ってくれる。原作者の中山さんと瀬々監督のタッグ、そこに集った俳優陣が実現している。同じ瀬々監督の 「64」 では、NHKのドラマ版が凄すぎたので相対的に感動が小さくなっちゃったけど、今回は純粋に瀬々監督を堪能できた。
東日本大震災で、無縁となり、、短い間の同居生活を続けた、老婦人、若者、少女3人のその後の話。続けざまに起きる2件の殺人事件を追う刑事役の阿部さん。彼もまた震災で家族を失っている。老婦人の生活保護が、行われなかったという事実から、事件は解明され始める...
やはりこの「事件の謎を追う」というストーリーが、最後まで引きつけられる要素か。そしてその結末は、(最後まで観た今だからこそ言えるのだが)実に原作者の中山さんらしいエンディング。
そしてミステリーの姿をしているが、その本質は "生活保護" というセーフティーネット、国民の権利に対するみなの誤解を解いて、世の中をもっと明るくしたいというあふれる思い! 十分に伝わりました。日本では人口の1%、欧米では5%。
そしてさまざまな小道具がそれそれ小気味よくはまっていること。これは監督の腕だね。残された腕時計、黄色いジャンパー...
全編通して音楽で感情を誘導するタイプでない映画だった。特にラストシーンの波の音の中での会話劇は秀逸。黄色のジャンパーですべてがつながり、腕時計の音がまるでそれにこたえるかのように鳴り、波の音で終わる... うわ、この数行書いただけで再び泣けてきた。やばいやばい。瀬々監督、ナイスでした。
佐藤さんは、「悪い風、ヤンキー風」がぴったりはまっている。口下手もおみごと。
阿部さんは、刑事がめちゃくちゃ似合うようになった。沈思黙考し即行動というイメージがばっちり。
そしてなんといっても清原さん! これまではこの役は広瀬さん(すず)しかない感じだったけど、とうとうその域まで来たんですね。今後も楽しみ。今回も、特に終盤での闇の中での目のシーンは圧巻だったと思います。
他の俳優たちもみなすごい。こういう頼りになる俳優たちの映画って、みてて安心。
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以下は、ネタバレがあるかもしれないので、観終わった後で堪能してください。セリフ。
・ 権利なんだよ。声をあげていいんだ。声をあげなくちゃいけない。
・ 笑顔でいなさい。そうしたら人はみなあなたに優しくしてくれるから。
・ 声をあげるんです。声をあげれば誰かが答えてくれる。手を差し伸べてくれる。
・ 心を閉ざしていると、ひとりぼっちという気がしてしまう。声を上げると気づきす。気にかけてくれる人がいます。
・ あなたはひとりじゃありません。もう一度、いや何度でも声をあげてください。不埒な者たちよりも、もっと大きな声をあげてください。
・「(あんなこと)言わなければよかった。もう語ってこないんだもの。誰に怒ったらいいのか、わかんないよ}(涙)
→ 「(私も夢中で逃げた。でも)逃げてもひとり。なんで生き延びたんだろう。でも生きててよかった。あなたを抱きしめることができたんだから」
> 観た映画でもレビュー投稿しないでいます
実は俺も今でも書ききれていません。
観終わった瞬間に感じていた一言を、覚えておき、その一言だけでいいから書くってのが、自分が最初にやったことでした。ここで初心を思い出せてよかった。ありがとう。