「隣にいる人を大切にしたくなる良作。」劇場版 きのう何食べた? ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
隣にいる人を大切にしたくなる良作。
シロさんとケンジ、そしてその周りの人々を愛を持って描いた一作。
ドラマでも原作でもそこはずっと丁寧に描かれるんだけど、劇場版はそれを約2時間に凝縮した感じ。
シロさん、ケンジはもちろん、小日向さん、ジルベール(ワタルくん)、佳代子さんとそのご家族、シロさんのご両親、ケンジのご家族、シロさんの職場の同僚、ケンジの職場の同僚、そしてスーパーマルエイの店員さんまでみんなみんな愛おしかった…。
色んなパートナーの形があって、色んな家族の形があって、色んな生き方があって、色んな考え方がある。
この作品の登場人物ももちろんそれぞれが違う人生を生きてきたから、意見や価値観の違いもあって、だからわかり合えないこともある。
シロさんとケンジという2人のパートナーの形をわかってはいても、身体の理解が追いついてこないシロさんのお母さん。
孫や子どもが産まれることの喜びや家族の繋がりに否定的な言動を取るジルベール。
でも、それでも、その相手と自分の相入れない部分も含めて、相手を大切にすることはできるのだと、本作を観ていて思った。
シロさんとケンジが、シロさんの誕生日ディナーのレストランの帰り、寄り添って歩く後ろ姿に、そしてお花見で2人空を見上げる姿に「私もこんな風にパートナーを大切にしたい。2人で年月を重ねていきたい」と思った。
2人は理想のパートナー像だ。
パートナーを大事にするってどういうことかわからなくなってしまったら本作を観れば良い。
シロさんとケンジの在り方が一つの答えだと私は思う。
以上は総括的な感想で、あとは印象に残ったとこ。
・予告から京都旅行主軸の話かと思ったら、京都旅行あっさり終わった(笑)。シロさんの優しさに動揺しまくるケンジが可哀想だけど面白い(しかも後半でシロさんケンジの立場が逆転することになろうとは)。
・劇場版OP良かった…。この作品のOPはやっぱりOAUさんの「帰り道」じゃなくちゃ!
・この作品のお料理はやっぱりとても美味しそう。
りんごのキャラメル煮、シロさん黒豆、佳代子さんローストビーフ、アクアパッツァ、シロさんブリ大根、筧家肉団子、みんな作りたくなった(うちも小日向さんのような肉は買えないが)。
・シロさんケンジたちの周囲の色んな人たちのエピソードを交えながら、でも結局シロさんとケンジがお互い(パートナー)を大切にする、というテーマに集約させるストーリー運びがとても秀逸。だから細かいエピソードは多いのにとっ散らからないのよね。すごい。
・タブチくん原作以上の強者っぷり。
そう、タブチくん見て思ったけど、本作は登場人物の年齢層高めだからこそ(若者らしい若者ってジルベールワタルくんやタブチくんくらい?)の、懐の深さを感じる会話ややり取りもとても良い。
(ジルベールに対する筧さんたちや佳代子さんの余裕っぷりが好き。)
この作品観ると、恋の楽しい時期の盛り上がりもいいけど、一緒に生活しながら歳を取ることだってとても素敵なことなんだと思える(そしてそれはいっときの恋に燃え上がるより互いの努力が必要で難しいものなのだということも)。
・マルエイの無口な店員さんが笑ったー!嬉
平日午前中に行った映画館の観客も年齢層高め(男女比は女性が多めだけど男性もたくさんいた)で、幅広い年齢層に受け入れられてる作品なんだなーと思った。
京都旅行はテーマを描くうちのたくさんのきっかけのエピソードの一つでしかなくてびっくりでしたよね!(なんて贅沢!)
でも本作は特別でない日常(の愛おしさと難しさ)を丁寧描くのが本懐だからこそ、それがむしろ良かった気がしますね。
隣の人を大切にする、まさにそうですね。
私も京都がメインのお話かと思ったので壮大なお話(大げさ!)のまだ始まりに過ぎなかったのだ!とびっくりしました。