「アンビバレントな印象を爽やかに残す」滑走路 マガランさんの映画レビュー(感想・評価)
アンビバレントな印象を爽やかに残す
個人的な好みで言うと、思っていた以上に好きな作品で
定期的に観返したいなと思えた。
エンディング~エンドロールの橋で二人が別々の方向に歩いて離れるところで
グーっとカメラが引いて(おそらくドローン撮影)、タイトルが出る、
終わり方として絶妙にいいと感じた。
アンビバレントな感想を言うと
良かったところが、
・「滑走路」という詩集に寄り過ぎなかったところ
・変にエモーショナルにまとめようとしなかったところ
・単純なトラブル→解決という結論にしなかったところ
ここはもう少しだったなというところが、
・「滑走路」という詩集を元にしたので、
モチーフとなる詩を書く人を出すか、「詩」自体を関連付けて欲しかった
・いじめられていた学級委員長の卒業後の様子がもう少し欲しかった
・翠(水川あさみ)について、学級委員長と繋がる部分がもう少し欲しかった
特に翠と学級委員長は中学時代、思春期にああやった交流と別れがあったのなら、
なんだかんだ思い出すか、仮に忘れていても自殺したという同級生からのLINEで、
もう少し思い出してきて、そこに何らかの形でリンクしていくのが
観ている側として腑に落ちるかなと思っていたけど、
あまりにもありきたりな話の流れや展開を避けようとした結果、
必要な分量の繋がりまで削ぎ落してしまったのかなという感じはあった。
ラストで別れた夫との間にできた(ひそかに産んでいた)子が
飛行機の絵を持ってくるところだけだと少し取ってつけた感じは否めないかなと。
それに何か繋がるものが少しでもあるとクドくなくいい感じだったように思えた。
いじめ描写も少し前に観た「許された子どもたち」程のえげつなさはないにしても、
十分なリアリティと深刻さは伝わってくるし、親との関係もとてもいい空気感だったし、
大人になった鷹野(浅香航大)と母親(坂井真紀)のやり取りは秀逸だった。
男として情けない翠の夫、拓己(水橋研二)もいい感じのクズさで良かった。
中学時代の翠役の木下渓は、さらにいい俳優になってほしいなと思った。