劇場公開日 2020年11月20日

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「全力で生きた歌人が映画を生んだ」滑走路 youjiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0全力で生きた歌人が映画を生んだ

2020年12月11日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

数年前に健也さんのお兄様が書いた歌集ということで買って読んだ。それはもう心に突き刺さる言葉が並んでいて本当に名著と言えるものであった。裕福なエリートの恵まれた環境であったはずが、いじめによって追い込まれ、非正規となり短歌に全てを掛けた。

そして彼が完成させたものが今映画ともなった。

映画館で観るのは、こんなご時世で気が引けるし、そもそもネットで観ることが多く、久し振りでもあったが、出向くかいはある作品だった。
水川あさみの話は作品としては良いのだろうが、歌集読者としては少し癪にさわった。全ての人に優しい眼差しを向け短歌で表現した慎一郎さん本人が作ったとしたら、露悪的な性行為のシーンを出さないだろうし、失業した旦那を否定するように仕上げなかった気がする。

ただそれを差し引いて、官僚が苦悩する話や青年の慎一郎さんを感じさせるような真っ直ぐに生きる感じ、最後のタイトルが出るまでの流れが秀逸だ。日本映画でここまで完成されたものを初めてみた。

あと俳優の寄川歌太と浅香航大が、外見的にも慎一郎さんと健也さんのそれぞれの要素を持っていて似ているのが面白い。演出でも健也かと思わされるような機械を弄ってるシーンがあったりなど。健也さんの超絶技巧なギターもどこかで映画内で聴けるのではと少し期待していたがそれは特になかった。

主題歌は新人らしいのだが、歌詞が歌集へのリスペクトがかなりあって良かった。

youji