「【向き合うこと】」滑走路 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【向き合うこと】
僕には自死を選んだ友人や知人がいる。
理由を、あれこれ詮索して言う人がいるし、残された家族が理由を理解できずに苦しんでいるのを目の当たりにして、自分自身であれこれ考えたこともある。
でも、本当の理由は本人しか知らないはずだとも思っている。
僕には離婚経験がある。
理由を詮索している人がいるのを知ってるし、面白おかしく質問してくるやつもいて、全て無視することにしていた。
どうせ分かるわけはないのだからと。
僕は、隼介は、中学時代のいじめが原因で自死を選んだのではないと思う。
翠は、それが理解できたのだと思う。
隼介との橋での別れを思い出したのだと思う。
だから、今の翠の境遇を人のせいにせず、同情で結びついていることを止めにしたのだと思う。
身籠った子供が拓巳の子供とするのも止めにしたのだと思う。
ここに描かれる官僚の鷹野裕翔の役割は、色々な意味でキーポイントに違いない。
隼介と本人の関係もそうだが、
その後の隼介と社会、
隼介と現実、
物語と現実、そして、これらを映画を観る人と結びつける存在のように思うからだ。
隼介は、前に進もうとしていたのだ。
だが、前に進めなくなった…、飛ぶことが出来なくなった理由があったのだ。
その理由は…、現実は…、僕達の今生きている社会の非正規などの問題なのではないのか。
こんなふうに感じるのは、僕だけだろうか。
逝ってしまった人を想い、悲しむことは避けられない。
でも、同情だけで終わらせてしまってはいけないこともたくさんあるように思う。
前に向いてる人を妨げるような社会システムは現実として、そこかしこにあるのだ。
空を自由に飛ぶことは出来なくても、いつか空を飛ぶことを夢見て、両手を広げて疾走するぐらいはさせて欲しい。
「きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい」
翠の絵の背中を向けて佇む人は、泣いていたかもしれない。
悲しかったのだろうか。
夕日に感動していたのだろうか。
でも、泣く姿を人には見せたくなかったのかもしれない。
でも、振り返って前に進めたらいいと思う。
この作品は、観る人の経験や境遇、立場によって感じ方は異なると思う。
非正規の問題を暗に入れ込むのに違和感を覚えるという人もいるように思う。
でも、この物語自体が、僕達の世界なのではないのか。
問題があると分かってはいるのに見過ごしてしまう現実。
心のどっかに何か引っ掻き傷のようなものを残したり、ふと立ち止って考えてみようとするきっかけをくれる作品だと、僕は思う。
おっしゃる通りで、自死の理由は分かりませんね。
私も20歳頃、友人が自死しました。当時はなにか自分に出来ることは無かったのかと思い悩みました。
この映画でもそうですね。
でも、今は、自死した友人はそんなことは望んでいないと思います。自分のした事で周りの人に復讐したいという自死もあると思いますが、この映画の主人公は、周りの人に良い思い出を思い出して笑って欲しいと思っているような気がします。
ワンコさん、こんばんは。
原作者が非正規労働で苦しんでいたとのことなので、イジメ、非正規二つの要因が重なったのかもしれませんよね。
なんとなく染谷将太のへらへら笑ったような態度を見ると、職場でもイジメがあったのかもしれません。
なんだか見終わってからも色んな思いが浮かんできます。