「ゲルマンの議論好き/議論嫌いの日本人」お名前はアドルフ? きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
ゲルマンの議論好き/議論嫌いの日本人
これのどこで笑えばいいのだろう、「もうやめてくれ」と叫びたい責苦の90分だった。
胸苦しさに息が詰まるばかりの議論劇だ。
名付け、
家族、
歴史。
登場人物は、自分+自国の歴史(歴史理解)が不可分の血肉となっている。
異物への拒否反応は、理性を超える。
ドイツ人の芝居を他人事のように観て笑える日本人って、笑えないなと思った。
昨今のJK は、日本とアメリカが戦争していたことも知らないそうだ。
そしてSNSは“日本語を使える台湾人は中国人と違って親日派だ”と謳う。
本作品、リメイクして日本版を作るなら、さしづめ命名は“禁句”の
・ヒロヒトくん
・南京ちゃん
・堤岩里くん、靖国君・・
なんてのが夕食の話題の口火だろう。
眉をひそめるようなたちの悪い冗談には、誰もが色めき立つはずだ。
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ドイツ語は“議論に適した言語”だと言われているが、シュテファンたちのこのディベートは、ディベートに慣れた彼らにしてみれば日常のひとこまに過ぎず、ディスカッションが終われば再び何もなかったかのような元の仲良し家族なのかというと、けっしてそうでもないようで、
エンディングでのエリザベトのナレーションが“対話こそが新しい自分を生み出させ、新規の人間関係を娩出させる”ことを鑑賞者に教えてくれる。
エリザベトは、アドルフ・ヒトラーについても、夫シュテファンについても、自分はどう対峙すべきなのかを彼女は自分のもの(血肉)にしているのだ。
そうやすやすとアウフヘーベンさせてたまるかとエリザベトは啖呵を切っているようでもある。
僕も普段の日常会話で「あっ、この人ヤバいな、この話題どこまで行きそうかな、待ったをかけるべきかな?」と焦ることがある。
でも今でないなら何時、僕らは話の腰を折ってでも、目の前の友人や義父に
「あなたの意見には反対です」
「あなたの考えが嫌いです」と反論するんだろうか・・
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ワイン傾けてのご飯のときには、差し障りのない話題で、やっぱり当たり障りなく笑って、まずい話題は大人の配慮で避けながら、たとえどんなに表層的なお付き合いでしかなくても、そっちのほうが楽でいいと
我々は思っているんだってことがよくわかった、そんな映画だった。
「おとなのけんか」は大好きです。でもこの映画はドイツ、それもよりによってアドルフなので、うーん、面倒くさーい、気分悪くなるかもーと敬遠してました。ただ、ある時期から少しは積極的にドイツ映画見よっかなーと思うようにした。のでいつか見ます。
カップル、友人が集まってワンシチュエーションで口角泡を飛ばす映画はたくさんあるけれど、
口直しに笑ってもらえるのは「おとなのけんか」かな?
ジョディ・フォスターとケイト・ウインスレットがボケ&突っ込みの応酬。
本作とは逆対称で、アメリカ映画はお気楽で実によろしい(笑)