「現代人の末路。」ミッドサマー ディレクターズカット版 ESSAIさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5現代人の末路。

2020年3月15日
iPhoneアプリから投稿

 終始トリップだった(バッド?グッド?)。過剰な演出もあそこまでやり切れば清々しい。音楽がとにかく素晴らしかった。ザ・映画体験。
「ときおり吹き出してしまうけど、われわれはあのコミューンを笑えるだろうか」と、問いかけたくもなるものの、やはりあそこに戻りたくはない。
 わたしはどこからきてどこへいくのか。わたしが生きる意味は何か、わたしは誰か、そういった問いかけさえも自分ひとりの問題とされ、その決済を自己責任化してしまうウルトラ資本主義社会において(信仰の市場!)、その問いかけを徹底し、吹っ切れた男は悲劇を喜劇に塗り替え、ジョーカーとなった。ではダニーは? この結末はジョーカーと好対照を為しつつも、同じ淵源をもつ二つの現代人の末路だと思う。
 アナキズムでもカルトでもなく、綱の上を渡る道はまだ残されている、というより、まだ未発見の道があるはずだ。
 それにしても、現状追認にはなりたくないものの、この映画をみて近代人でよかったと思えるのは、すでに、あらゆる価値とそれを巡る闘争を観客として笑いのめしつつ、信じているフリをして価値をとっかえひっかえしてなんとか生きているわれわれの社会の異様さに、まさにあのコミューンの人々のように慣れすぎてしまっているからなのかもしれない。孤独死が捏造された語なのは明らかだとしても、われわれは死を祝祭できるだろうか。

ESSAI