「アイヌを見つめる研ぎ澄まされたインディペンデント・スピリッツ」アイヌモシリ 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
アイヌを見つめる研ぎ澄まされたインディペンデント・スピリッツ
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これまで日本ではなかなか描かれることが少なかったアイヌ民族のリアルな姿に、はじめは好奇な目で見てしまうかもしれない。
しかし、アイヌの血を引く一人の少年のアイデンティティに揺れる様を目の当たりにすると、次第に同じ人間として共感し、自然とともに暮らすこと、生命とは、神とは何か、この世ではない世界との繋がり、そして古い慣習や伝統といったものについて考えさせられ、失ってしまったかもしれないものに気づかせてくれる作品だ。
演技初挑戦で主人公の少年を演じた下倉幹人の真っ直ぐな視線のように、「リベリアの白い血」が国内外で高く評価された福永壮志監督のテーマを見つめる視線に、研ぎ澄まされた印象を受けるに違いない。
アイヌの血や伝統的な儀式であるイオマンテに反発しつつも、それでも自らの血に抗えない少年の通過儀礼の話でもあるが、山に入ったまま帰らぬ人となった父親と一瞬だけ再会したようなシーンは、なんとも感動的だ。
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