空白のレビュー・感想・評価
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折り合いのつけ方と感情の錯綜が見事。
万引き(未遂かは不明)した女子高生、追跡されひき逃げされる
追いかけるスーパー店長
ぶっきらぼうで職人肌の娘を亡くした父親
心の病も抱えて再婚した元妻で高校生の実母
ボランティアもする正義感強いが空回りで周りがついていかないスーパー店員
そして正義感・罪悪感を抱える担任と事なかれ主義の他の学校側
その人たちがそれぞれの思いをぶつけたり、嚙み殺したりしながら葛藤する作品。
飛び出しをしたとはいえ、ひき逃げを起こしてしまった女性は良心の呵責から自死してしまうが、その母親が高校生の父親に対する態度は誰にでもできることではない。
あなたがここまで責めるから娘は死んだんだ、と問い詰めることもできるのに、強い娘に育てられなくてごめんと謝罪するのは父親ではなく母親だからこそできるのではないかとも思う。
それから父親も少しずつ変わっていくターニングポイントとなる。
こういうことは怒りから生まれるのではなく、当事者の誰かの強さが変えるきっかけになるのだ、ということをこの作品から教えてもらった。自分のことに置き換えて見た作品にもなった。
ボランティアにも力を入れて、正義感強いのはいいけど、その正義感を他人に押しつけるのは本当に迷惑なことで、活発だけど孤立に繋がるのだ、というメッセージもちゃんと受け取りました。
3種の空白
「空白」の類語:
空欄 余白 空所 空虚 虚無
blank space null void vacuum gap chasm desolation emptiness…..
不幸な偶然が重なった事件を通して、人間の内外に存在する「空白」を描いていると思いました。
① 自分の中の「空白」
虚無感、埋まらない孤独、隠された本心
② 自分と他者との間を隔てる「空白」
無関心、無理解、食い違い、誤解、反発、拒絶
③ 他者の中の「空白」
情報不足、未知、謎
①
心の隅々まで正直に把握し、自分自身を見つめ、一切の嘘偽りなく生きている人はどれほどいるのでしょうか。
÷÷÷
①吠えて弱さを隠し、②他者の気持ちを全く配慮しない上に、耐えられないことは罵声で突き放す添田。彼は自らの周囲を「空白」で固めている人物。話もろくに聞いてやれずに我が子が先に逝ってしまったことを、①本当の彼は誰よりも悔やみ、自分を恨めしく思ったでしょう。死のきっかけは万引きであるという不名誉、娘との貴重な時間を無駄に過ごしてしまった残酷な事実と悔恨に向き合えず、②代わりに咎と怒りの矛先を必死で他者に探し求めます。彼のやり方は、網にかかったガラス瓶で怪我をしたからと、海にゴミを捨てる人々を片っ端から乱暴に捕まえて責任を取らせようとするかのよう。
②学校のせいではありませんよ、という校長と美術教師の冷酷な無関心。生徒の指導方法は間違っていなかったか、花音を正しく理解していただろうかと不安になる担任。根拠のないネット情報、マスゴミによる偏向報道、そしてこれらに踊らされる部外者が、関係者達を問題解決から一層遠ざけてしまいます。
花音と添田の間だけでなく、青柳と彼の父親の間にも大きな「空白」があったことが分かります。その「空白」は、一方が死んでもしばらく存在し続けるものでした。
また、花音をはねた運転手中山楓は、謝罪が全く受け入れられないことで肥大化した添田との間の「空白」に押し潰されてしまいました。
添田と極めて対照的なのが楓の母親でした。事実を正面から受け止め、娘が犯した罪を認識し、娘の選択を添田のせいにはしません。無責任な子に育てた自分が悪いのだと、見事なまでに素早く添田との間の「空白」を、喪失感の共有と謝罪の言葉で埋めました。自分が責めを負うから、どうか弱い娘を許してやって欲しい…。ここはもう泣かずにはいられないシーンでした(T_T)。この後、流石の添田も少し大人しくなったような…。
①ボランティア活動に精を出し、「正しいこと」を強要する草加部の行動は、誰かに必要とされたい、求められたいという強い願望がエネルギーとなっています。②彼女の行いは典型的な善意の押し売りで、相手を理解しようとしないから、恋愛においてはもちろん、自分の理解者も現れず、活発な割に孤独な女性です。望んだ答えだけを求める添田に、「あんたの話なんか聞きたくない!」と叫ぶ彼女。この時点では両者とも、③事実で他人の「空白」を埋めようとはしていません。
他者の全てを受け入れることは極めて難儀なのに、全否定することはどうしてこんなにも容易なのでしょう。
③内面が分かりにくい、表情の乏しい人は誤解されやすくて苦労します。理解されなくて辛い思いをしていることすら上手く伝えられません。また外見から予想される性格の持ち主ではない人もいます。冒頭からヤバい雰囲気だった添田には、同情する気がなかなか起きませんでしたし、後半、急に?自重し始めたことにやや違和感を覚えましたが、これも、②違和感のままで終わるか、それとも③添田という人物の隠れた一面を知ったのだと思えるか、で差が生まれるのかなと思いました。
いじめの対象にもならないほど存在感のない花音は化粧品を万引きしていた。真面目そうな青柳はパチンコが好きで部屋が汚い。ピアスを付けた漁師見習いの野木には優しさと包容力がある。外見と中身の「ギャップ」は、映画同様、しばらく接していないと見えてこないものでした。
喪って初めて知る娘の片鱗。
言葉は交わさずとも、父娘の共通の思い出となったイルカ雲。もしまた雲を探して見上げることがあれば、空は添田を慰めるでしょう。
①を知り、②を埋めて、③を知る
面倒でもこの作業を繰り返す。
何故なら、人を滅ぼすのも、救うのも、創るのも、人次第だからです。
それは己も例外ではないのです。
明花音ちゃんは、無事に育って欲しいですね。
÷÷÷
また揶揄われるのかと身構えたら、チンピラ風の兄ちゃんは、母ちゃん共々、青柳の焼鳥弁当が大好きだったと言う。感謝の言葉は、無料で無制限に送れる贈り物です。本作で一番素晴らしいと思ったのはこの焼鳥弁当のシーンでした(T_T)。こういう「焼鳥弁当」がたまにあるから、人は苦しみを乗り越えて生きていけるのだと思います。ただただ辛いだけの仕事で嘆いていた頃、いつもの帰路を急いでいたら、手術前は身の回りのことすら1人ではできなかった患者さんが、病院前の交差点で、遠方から来たご家族か親族に街を案内していました。それを見て、あぁ、このために全ての苦労はあったのだと、溢れてくる涙を堪えることなく帰りました。あちらは私に気付かなかったし、言葉で感謝された訳ではないけれど、少なくとも一時の私は、この「焼鳥弁当」のためだけに生きていました。
私の①が埋まった瞬間でした。
「焼鳥弁当」の感動を蘇らせて下さり、ありがとうございます。思い出す度に泣いてしまいます。
予告編では良さが充分に伝わっていないのではないかと思える秀作でした。
イルカ
自分が犯した過ちや間違いと向き合うことができない大人たちの物語。
古田新太が圧倒的にダメなキャラクターとして描かれ始めているため、娘に先立たれた父への同情が全く生まれない。一方で、なんの故意もないが正義への熱意も全くない松坂桃李にはうっすらとかわいそうとゆう気持ちが生まれる。この対立構造について、あまり共感を生むことができるとは思えなかった。
こうした過ちへの向き合い方について、周りの人間との関係で明るい方向に進んでいくとゆう周りの描写は丁寧で細かく素晴らしかった。(特に初めの事故を起こしてしまった女性の自殺に対する母親の台詞やお弁当を美味しかったと話した奥野瑛太氏など)殺伐とした環境の中にも、周りの何気ない言葉や誠実さが人を動かすとゆうメッセージとしては素晴らしかった。
しかし人の持っている負の感情や諦めといったものを映し出すには、古田新太のキャラクターはあまりにも常識はずれだったため、娘への死に向き合うことができない父親とゆう一般的な見方を共感させることはできなかったのではないだろうか。
スーパーの古参のおじさん
いつもの映画館で 今週から始まった
金曜日のサービスデー 観客は7~8人といったところ
今年一番と思っていたBLUEに匹敵する一作だった
この監督好きだなぁ アイリーンはオラには合わなかったが
古田新太はまり役
聞き分けのない凝り固まったオヤジそのもの
こういうオヤジは死ぬまで変わらないものだが…
つらいエピソードが続くが
それでも監督の未来への期待みたいな思いが
感じられる場面が随所にあり嬉しい
マスコミには期待していないみたい
松坂桃李が若い男から声をかけられる2つのシーン
知らない人に声をかけられるのは同じだが
松坂の気持ちが正反対なのが興味深い
白黒はっきりせず納得できなくても
結局折り合いをつけてずるずるとしぶとく生きていくのだ
白黒はっきりさせようとする代表がかつてのオヤジであり
寺島しのぶなのかと
で 折り合い組の代表は片岡礼子であり
意外にもスーパーの古参のおじさんなのかもしれない
あぁいうひとが一番頼りになるんだよな
あの腹の出具合とか超リアル 隠れ助演賞
ラストシーン オヤジが娘と心を通わせた唯一の場面
時を隔てて間接的なところが切ない
ま予定調和だがこういうのがオリジナル脚本のいいところだ
タイトルの意味は何だろう レビューを読むのが楽しみだ
終了後は市役所公園のベンチで缶ビール2本
超至福の時間なのだがさすがに寒くなってきた
王将の餃子とラーメン 炒飯で〆た
リアル過ぎ
あまりにリアルすぎて、映画を見たあと車の運転が怖かった…
謝罪に来ても、許せない気持ちもわかる
謝罪するしかない…気持ちもわかる
一体どーすればいいのか?
1番に娘を跳ねた、女性
あの時点では生きていたかもしれないのに、その後ダンプに巻き込まれ、結局亡くなった
きっと、何が何だかわからない
そんなまま、結局自分で死を選んでしまう
きっと、誰も悪くないはず
それでも、誰も救われることが無い深い悲しみ
色々と考えさせられました。
向き合うとは?
どの役の人も凄いです。いるいるこんな人という感じがすごい。リアル。
そして、みんなそれぞれ自分なりの正義がある。それが暴走気味の添田、それとクサカベさん。
とんでもない事故が起こり、当事者達は皆それぞれとてつもないショックを受けるが、それを受け止める間もなくマスコミが食いついてきて切り取られ編集され、それによってまた加害側も被害側も踊らされ傷つけあってしまう。
事故さえなければ気にもとめずに自分のやり方を押し通していた人たちが、いやでも向き合わざるを得なくなる。周囲に高圧的に振る舞うことで思うように操っていたと勘違いしていた添田(古田新太)は、娘との関係のまずさにやっと気づく。
なんに対しても無気力に逃げてきた青柳(松坂桃李)は、逃げることを許されない状況に放り込まれて、やっと葛藤を覚える。
担任教師(趣里)は怒鳴り込んできた親の言葉で、自身の指導が高圧的で一方的だったのでは?と悩み始めるが、それを偽善だと指摘される。
皆それぞれ、そのやり方で今までの人生に問題なかったはずなのに。
そして、事故を起こしてしまった若い女性(野村麻純が好演!)が謝罪を受け入れてもらえないことを苦に自殺してしまうが、その母は恨み言を言わず「心の弱い娘が責任から逃げて申し訳ない」と詫びる。この向き合い方が凄すぎる。そこからかたくなに自分自身にしがみついてきた添田に変化が表れるのだ。
登場は序盤だけだが、ちょっと足りない子なのかな?と思わせる伊東蒼の間の演技もすごい。そこにリアリティが感じられるだけに、たくさんのことを押し殺していた実は内面の豊かな女の子だったんだろうと提示されるラストは辛い。
さて、問題点が二つ。
事故直後の母親(田畑智子)もう今にも生まれそうなお腹なのに、納骨まで生まれてないのはおかしくないか?
言うなれば自己チューな生き方をしてきた添田や青柳が、それを見直したあとに小さいながらもご褒美を貰っているわけだが、正義を振りかざし押しつけてたクサカベさん(寺島しのぶ)は、職を失い生き甲斐のボランティアでも暴発してしまい、そのまま放置って、なんの罰ですかね。こういう女嫌うひと、多いの知ってますけど、なんだかなあ。残念ですわ
他人の不幸は蜜の味
下衆な世の中だなぁと思う。
「捨てたもんじゃない」と言われてた世間は、こちらから切り離したいと思える事で溢れ返ってる。
マスコミの描き方に悪意さえ感じるも、実際やってる事はほぼ作中のままなのだろうなぁと思え、強烈な風刺を撒き散らす描写に笑いまで込み上げる始末。
事実よりも視聴率。
抜粋された時点で作為が介入し、その作為が悪意と同義なら、報道の公平性などある訳もなく、そのシステムにこそ放送倫理委員会は鉄槌を下すべきだろう。
血とかエロを取り締まるより、よほど日本の為になると思うがな。
そのマスコミに怒鳴り散らす父親の大喜利コラージュのシーンとか観てるだけで悍ましい。
イジメる側と同じ心理なのだろうか?「マヂになんなよ、冗談じゃん?」いやいや、マヂにもなるだろうが?人が死んでるんだぜ?誇大な空想とかではなく、リアルに起きそうな世の中に戦慄さえ覚える。
百歩譲って、それをやるのはいいよ。そういうモノに快楽を見出す生き物だよ、人間って。だけど、金に換算できてしまうシステムがあるから手に負えない。
他人の不幸は実際に「蜜」をもたらしてしまうのだ。
物語は誰にでも起きそうな話だった。
ストレスが豪雨のように降り注ぐ世の中。濡れた服が乾く暇もなく、寧ろ決壊し濁流の如き勢いに溺れそうな世の中だ。
登場する全ての人物がその豪雨の中にいる。客観視して見えてくるのは人から人へ伝播するって事だろうか。発信と受信を繰り返す。
受けたストレスを、言葉を変えて他人で発散する。
マスコミやSNSは、その標的を提供してるに過ぎないのであろう。たまにネットリテラシーが議題に上がる事もあるけれど、誹謗中傷の元ネタを全国にばら撒いてる機関が、どのツラ下げて語ってんだって事だよね。
「人の振り見て我が振り直せ」
昔の人はよく言ったもんだよ…。
マスゴミの連中は真摯に受け止めてほしいよね。無責任に垂れ流すんじゃなくてさ。
煽るだけ煽って、後は知らんぷりだもんな。
…マスゴミがばら撒く餌に毎回食いつく国民も、いい加減気づかないもんかね?馬鹿にされてるって。何の意義もないって。スポンサーのご機嫌取りに使われてるだけだって。
なんか今回のレビューはやたらに脱線するな。
対マスコミの話じゃないんだけどな…。
俺の日頃のストレスなのだろうなぁ。
映画の話をしよう。
とにかく今作はそんな浅ましい人間達が多く登場する。主人公2人も決して褒められた人間像ではない。
父親に至っては自分勝手も甚だしい。
俺も父親だから気持ちは分からなくもないけど、アレは言い訳でしかない。「俺はちゃんと娘を愛してた」そう言いたいが為に見える。
そう言いたい気持ちも分かるけど。
店長にしたって、アレではやましい事があると言ってるみたいなもんだ。実際のとこは分からないだけに。
…ああ、なんだろ?
映画の感想を書いてるのに、他人を批判してるように思えてきた。
それほど、等身大の人物達が生きていたという事なのだろう。「学校」って組織も随分と中身が変わったなあと思う。あの校長はだいぶやり手な校長なんだろうなぁ。きっちりクレーマーな父親を退けたもんな。
明確な怒りの矛先を与えただけではあるけれど。
…そういうツボを突いた演出もホント上手いっすわ。
題名にある「空白」
ずっと、何を指すのかなぁと考えながら見てはいたのだけれど、自殺した娘の母親が、無責任な娘を許してやってほしいと懇願する。
たぶん、それを聞いてる父親にはストレスの豪雨は降ってなかったのだろうと思う。そんな空白地帯の「空白」
それとも喪失感からくる「空白」なのだろうか。
怒りや攻撃、自衛や鎧。それらは全てその「空白」を埋めようとする行為だからなのだろうか。
それとも、そんな他人事に目の色変えて反応し、自分の人生に「空白」が増えていく様だろうか。
あまり観ていて楽しい作品ではないけれど、きっと見た方がいいと思う。ただ…後味はホントによろしくない。
寺島さんが担う「正しい事」の定義とか。
俳優陣は、陰惨な気持ちに苛まれながら仕事してたんだろうなぁ…皆様、良い仕事でした。
1つ疑問が残るとするなら、店長だ。
彼以外は、父親も含め1人ではなかった。父親なんかは酷いもんで、敵としてる店長にぶら下がる事で自我を保ててるように見えた。
店長だけだ。
進んで独りになろうとしていたのは。
なぜ監督は彼に依代を用意しなかったのだろう?
邦画歴代上位作品
最近見た邦画の中では1.2を争う程の良作。とにかく主演の古田新太の演技が凄まじいのと、脇を固める俳優達も素晴らしい演技であっという間に時間が過ぎた。
全体的には哀しい映画であるが、途中、追い詰められた松坂桃李が弁当屋に向かって暴言を吐き、すぐ冷静になって謝罪するシーンは笑ってしまった。
あまり大衆受けするような作品ではなさそうだが、余韻をしっかりと感じられるような作品なので、ぜひ視聴して欲しい。
許すことの難しさと、許すことの尊さ
狂気の映画かと思って観ていましたが、後半には感動が用意されているとても素敵な映画でした。
人を許すことって難しい。でも許さなければ前に進めないのかもしれないなぁ~。
後半は泣けましたし、ラストの絵画のシーンもすごく良かった。
知っている役者は少なかったのですが、脇役に至るまで演技の巧い俳優が揃っていたので映画に入り込むことができました。
「マイ・ダディ」「護られなかった者たちへ」そして今作「空白」と、この秋は邦画が豊作だなぁ~。
胸糞悪い映画です
※胸糞ばっか言ってるのでご了承下さい。
この映画をなんて表すのが一番良いんだろう?と考えた結論。
「胸糞悪い映画です」
この映画は普段私が目を逸らしている、人間の嫌なところをこれでもか!と見せてくるので、
「こっちは気づかなかったことにしてるんだよ…やめてくれよ…」
と、非常に苦しくなります。全編通してしんどい。見終わった今切実に記憶を消したい。
二回は見たくない。
また、話の中で絶対悪になる存在がいない&実際に聞く出来事が起きたりしている(マスゴミの切り取り報道や正義の味方ぶった一般市民の私刑など)ので、本当に日常を切り取って見ている気にされます。
登場人物それぞれ胸糞だなと思うのですが、とりあえずトップ3を挙げておくと、
① 古田新太さん演じる父親
冒頭から人間として終わってる。ずっと漁師一本でやってきた(多分)、価値観が凝り固まった『自分が絶対正しいマン』で、人の話を聞きやしない。
でもこういう職人気質のおじさん居るよね。と思うリアルさが、こちらの気分を最高潮に害してきます。
流石古田新太さんだな、と。(古田新太さん大好きです。)
娘を殺されているのだから許せる訳はないのだけれど(むしろそんなすぐに許せたらどこの聖人君子だよ、と思うけど)途中から
『「万引きした娘が逃げて殺された話」じゃなくて、
「まったく落ち度が無かった娘が悪いやつに拐かされそうになった結果殺された話」にしたい(しか俺の中ではあり得ない)から、それを真実としてお前が話すまで追い詰めるマン』になるのでやっぱり胸糞です。
やり方間違ってるんだよなぁ…。
② ボランティア大好きおばさん
ああ、こういう人いるよね…と思う…
『私は貴重な自分の時間を使って慈善活動をしている、だから私が言うことやることは絶対正しいマン』です。
自分がやることは全て自己満足。「人のためを思ってやってあげた」は、結局自分のため。人に押し付けるのはやめましょう。と、自戒になりました。
年齢的にどんどん近づいていくので、本当に気を付けたいと思います。
③ 要所要所で出てくるモブ
これこそ胸糞の鉄板、まったく関係ない第三者がさも正義面して私刑。や、話題になるからと面白がって冷やかし。
こいつらマジで腹立つ~暇人か!と思うけど、いざ自分がその第三者になった時、同じ事しないって言えるの?
と、これまた自戒になりました。人の振り見て我が振り直せ。
その他、松坂桃李さん演じる店長や、轢かれてしまう娘さん、いきなり車の影から飛び出されて轢いてしまうお嬢さんやとどめをさしたトラックの運転手など、それぞれの視点から見ると救いが全く無くて本当に息が苦しくなる。
特にトラックの運転手については冒頭でしか描かれていなかったけど、実際にあったとしたらもっとキツいんじゃないかな、と思います。
特に轢かれてしまう娘さんの描かれ方が私は切なかった。
普通の引っ込み思案、ともすればいじめでも受けていたのかな?と思いきや、それ以前の問題だった。
もっと早い段階で気づいてあげることが出来ていて、対応できていればまた違ったのかな。と思うと切ない。(そこで言うと母親が気づいてたのにな、というところがありますが…)
そしてなあなあで済ませようとする教育現場への切り込みが鋭い。
担任の先生が自分の教育に疑問を感じるけれど、それを押し潰していくところなんてしょっちゅう取り沙汰されている事で、ああこうやって教育現場は若い芽を押し潰していくのだな、としみじみ思いました。
と、ポイントを上げていくとキリがないのですが、
結論、見る価値あります。
胸糞な登場人物たちも、話が進んでいく事で自分の行いを振り返り、自問自答し、うまくいかない現実にもがきながら進み始めるのでずっと胸糞展開が続くわけではありません。(まぁ松坂桃李くんは最早PTSDだよね、という位に追い詰められることにはなっちゃうんですけど…)
でも見る価値あります!むしろこれは見た方がいい!
ただ、見終わった後めちゃくちゃ疲れるのと、気分がどんよりするのは覚悟して見た方が良いかもしれません(それだけ俳優さん達の演技と脚本と演出が素晴らしいということなので…笑)
ちなみに胸糞胸糞言ってますが、漁師の弟子が「コイツいいやつだなー」と、要所要所で良い味出してます。
「自分はあなたが父親だったら嫌ですね」的なセリフを古田新太さんに言うシーンがあるんですが、いや良く言ったなお前…!!と、その瞬間喝采を送りたかった。
その他、しつこいマスコミを港から追い出したり、クソジジイと言いつつ師匠を尊敬しているのが伝わってきて凄くいい弟子でした。
それと最後に出てくるトラックの運ちゃん。松坂桃李くんに救いを与えてくれるんですけど、なんか好き笑
途中で桃李くんが轢かれそうになるトラックの運ちゃんもこの人だった気がする?
あと、個人的に一番泣けたのが、轢いてしまったお嬢さんがなんやかやなった時のお母さんの涙と、そのお母さんが古田父にかける言葉ですかね…
古田一家の涙では正直泣けなかったんですが、このお母さんにはものすごく泣かされました。
自分が同じ状況に立っても絶対言えないな、凄いな、と思いました。
頑なだった父親に『お前は娘のことを理解してもいないのに良く言えたもんだな?』と投げ掛ける(父親側が勝手にそう感じるだけですが)場面は、唯一もう一回見たいな、と思うシーンでした。
この映画を見て感じることは人それぞれだと思いますが、何かしら必ず残る作品になると思うのでオススメです。
人と人の間にある距離
正直な所、序盤から過剰な程に神経を逆なでする表現に少し嫌な気持ちになりながら観ていました。
父親としても人としても失格としか言えない添田が暴走して、執拗に自分の感情だけで周りを振り回す姿にうんざりし、
振り回された教師達の保身に走る対応にも、マスコミの過剰なまでのご都合主義な対応にも、スーパーの店員 草加部の自分に酔った傍迷惑な正義感にも。
そして店長の青柳の本心の見えない態度にも。
そもそも本当に万引きしたのか?事務所で何があったのか?過去の痴漢は本当にあったのか?
彼が何かを隠しているのかも判らず、本心はとんでもない悪なのか?も判らず。
この辺りは前半の教師やマスコミのクズっぷりも併せてそういった方向で進みますが、娘が自殺した母親が添田に伝える、弱さに逃げて自殺した娘を責めながら許して欲しいという言葉。
この言葉からやっぱり映画の流れが変わったんだな。と思いながら。
多分、添田にとって娘をはねた女性に対しては本当に無関心、そもそも青柳が追いかけ回さなければそんな事故は起きていない。というだけの認識でしかなかったと思いますし、何度謝られても興味もなかったような。
けれど自殺した娘の母親に謝罪されて、初めて自分が無視を続けた事がどれだけ残酷で、自殺した娘がどれほど苦しめられていたか?を理解したような。
添田にとってはこれがきっかけだったんでしょうね。
自分の感情だけを正当化して生きる事が人に与える冷酷さと、詫びる人間を突き放すことが相手を地獄に突き落とすような絶望を与えるという事を始めて理解できたきっかけのような。
そして、そこまでの懺悔を伴う謝罪であれば、受けた側がその問題を終わらせない限り、延々と謝罪と復讐を続ける羽目になるという事。
自分の非や弱さを認め謝るという事と、他人を理解して寄り添うという事が人間的に欠落していた添田にとって、力で屈服させる以外の謝罪という物に触れたのも初めてだったのではないか?と思いながら。
でも人って解ったからってすぐには変われないんですよね。
だからこそ、添田がタクシーの中でつぶやく「みんな、どうやって折り合いつけるのかな?」というセリフを聞いて、すとんと、これが描きたかった映画だったんだな。と思いながら。
添田にとって、人を許す、受け入れる、理解するというのは、その必要性を判ったとはいえ、どうするべきかも判らずそこでもがき苦しむ。
思いつく範囲で、妻の現在の夫を詰ったことを謝罪したり、かつての弟子を再度受け入れたり、娘の好きだった物に触れたりしながら。
それでもはっきりとはせず、人との接し方を、折り合い。と、妥協のようなぼんやりとした言葉で表現してしまうような。
でも、教えてくれる人がいない中で、自分と格闘しながら人との共存を進めようとする添田にとっては、この言葉は紛れもない本音だよな。と思いながら。
そして、自分の間違いを知り、それを悔い正そうと苦しみながら生まれ変わっていく添田の姿を描くことがこの映画のテーマだったんだろう。と、そう思っています。
だからこそ、添田と青柳が再開し、青柳を初めて許す姿には、グッとくるものがありました。
空白って何でしょう?
ストーリー上の隠された部分、特に青柳に絡む、本当に万引きしたのか?事務所で何があったのか?過去の痴漢は本当にあったのか?という謎掛け的な物のような気もしますが。。。
個人的には人と人の間にある距離。
それを空白のままとするのか、折り合いや愛情、信頼といった物でその空白を埋めるのか?という意味のような気もしています。
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ブログの方では、ネタバレありで個人感想の詳細とネット上での評判等を纏めています。
興味を持って頂けたら、プロフィールから見て頂けると嬉しいです。
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感動のなかにも苦味が
片岡礼子さんのお芝居、みぞおちに入る。静かに、そのまま重力に従うように、膝を折りたくなった。古田新太さんも松坂桃李さんも寺島しのぶさんも藤原季節さんもみんないいし、脚本も好きだ。どうしようもなく過酷な部分もあるけど甘ったるいぐらい人に優しいところもあるし、やっぱり怖いところもあるし。
結局、万引き疑惑でスーパーの裏手に連れて行かれた少女が、なぜ死にものぐるいで逃走したのか、そこの“空白”は明らかにされない。観た人それぞれで想像していいんだと思うけど、ひょっとして彼女を死に追いやったのは父親ではという気がしてならない。
授業参観を父親でなく母親に出てもらおうと思っている、ということ一つ伝えるのに大変な勇気が必要になる関係性。母親がせっかく持たせてくれたスマホを目の前で投げ捨てられても抗議もできない関係性。そういう父娘関係だと、万引きが父親にバレたらどんなことになるのかって、娘が恐怖に駆られても不思議じゃないと思うので。
スーパーの店長がいやらしいことをしそうになったとかいうのより、どうもそっちのほうに真実味を感じる。
加害者になってしまった運転手の母親と、若い漁師と、元妻と、そして店長と、感動的な場面をあんなにいくつも演じて、最後に娘ともつながって光が見えました、ですっきり終わったらそれはそれでいい映画だったと思うけど、この苦味の残りかたも案外、嫌いじゃない。
もう一回見たらまた別の解釈をするかもしれないけど。
そういえば、寺島さん演じる草加部さんが「正しさ」に異様なこだわりを見せた理由もはっきりとは分からなかった。自分の「キモさ」を正しさで超えたかったのかな。
空白を埋めるもの
一つの交通事故。
1人の死が様々な人に与えた空白。
この空白をあるものは「怒り」で埋め、またあるものは「偽善」で埋め、またあるものは「死」で埋める。
この空白を埋めるなにかを探す物語なのだと見終わって思った。
とはいえ映画の内容は明確に「これが答えです!!」と打ち出すわけではなく。
さりとて、主人公たちを物語の世界に置き去りにしたままでもなく。
我々観客に「あなたならどう埋めますか?」と問いかけてくるような作品。
この消化不良感(空白)も監督から我々に向けたメッセージなのかと考えてしまう。
まんまと監督の術中にハマった。
最後直人が人から感謝を伝えられて泣くシーンには思わず泣いてしまった。
僕は「人からの感謝」で空白を埋めて欲しいタイプみたいだ。
自分の中にある空白は自分自身で埋めるしかない
2021.9.23 イオンシネマ久御山
2021年の日本映画(107分、PG12)
万引き逃亡から死亡事故に至った事件を機に、それぞれの正しさが暴走するヒューマンドラマ
監督&脚本は𠮷田恵輔
物語は蒲郡の沖合にて漁をする添田充(古田新太)が描かれて始まる
新人の野木(藤原季節)に無理難題を押し付けながら、ひたすら怒鳴るだけの日々
そんな充にも中学生になる娘・花音(伊藤蒼)がいたが、妻・翔子(田畑智子)とは既に離縁していて花音の親権は充が持っていた
花音は学校では目立たない子どもで、動きの鈍さから担任の今井(趣里)からも叱られてしまう毎日
美術部でも存在感がなく、自己主張をあまりしない娘だった
ある日、父に何かを相談しようとしてタイミングを逃した花音は、翌日スーパーで化粧品を万引きしてしまう
それを見逃さなかった店長の青柳直人(松坂桃李)は花音をバックヤードに連れて行く
だが、間もなく花音は店を飛び出して逃げ出し、青柳はそれを懸命に追った
そして、交通量の多い道を横切ろうとした瞬間、加音は中山楓(野村真純)の運転する乗用車に轢かれ、そして連続して大型トラックに引きずられて即死してしまう
事故を聞きつけた充が警察に駆けつけるものの、花音の遺体は損傷が激しく所持品からしか身元を特定できなかったのである
物語は「万引きの末に人を殺した」と報道されるスーパーと、葬式にて青柳に暴力行為寸前に至った「狂気の父」のどちらもがマスコミの餌になり、ネットのおもちゃになるところから動き出す
切り取り報道にキレた充が青柳に執拗に迫るようになり、それを見兼ねた店員の草加部(寺島しのぶ)は「店の潔白を訴えよう」とビラ配りを始めたりもする
それぞれが事件によって感情的になって、自分自身の正しさを振り翳しながら、さらに事態は混迷を極めていくのである
映画は「事故死した娘の父の暴走」という側面が訴求効果になっていて、その怪演が波紋を広げていく
それでも、その行動を誘発するものが青柳側にもあり、彼の逃避傾向が事態を助長させている場面もある
また、正しさを相手にわからせようとする草加部の行動がさらに火に油を注いで、充の行動を正当化していくようにも見えるのである
誰の行動が正しいのかという観点で映画を見ると誰もが正しくて、誰もが間違っているように見える本作は、それぞれが持つ価値観を揺るがしていく
死んでから父親になろうとする充
結局のところは他人事に思っている青柳
私がいなければと常に中心にいようとする草加部
だが、これから紡いできた爆発的な負の連鎖をキッパリと断ち切ったのが、楓の母・緑(片岡礼子)の言葉であると言える
彼女の言葉は同じ境遇になっても到達できない悲しみというものに踏み込んでいて、それぞれの死は関連性があるように思えて無いと断じていることである
花音の死の、その先にあった楓の自殺は延長線上にあるように見えて、似て非なるものである
充が事故相手の謝罪を受け止めなかったから楓は死んだと考える向きもあると思うが、だからと言って飛び出し事故の運転手が全て罪に病むかと言われればそうではないだろう
それぞれが事故によって「空いてしまった穴」を埋めるために、「自分を罰する言葉」を待ち望んでいて、誰もがそれを埋めようとはしなかった
それゆえ、誰かの言葉が埋めるはずだった「空白」を自分が埋めざるを得なくなって、それによって狂っていくとも言える
そんな中で緑だけが正気を保っているように思えるのだが、彼女も同じく「自分の言葉」で空白を埋めているに過ぎない
誰かの言葉がないのなら、自分で自分を傷つける
その手段が言葉だったと言うだけで、緑と楓は本質的に違わないとも読み取れるのである
いずれにせよ、出演者全員の熱量が凄まじく、これだけ配置の上手いキャスティングも珍しい
この映画ではそれぞれのキャラクターに清濁の部分があったとは思うが、一貫して「濁」しかなかったのはマスコミではないだろうか
良い画が撮れた後に「よし!」と呟いたスタッフを誰も咎めないように、そこで事件を俯瞰するだけの人間は「ネットの悪意」よりも質が悪い
ただ、そう言った社会の負を求めている人間がいるのも確かで、それによって心の充足を得ようとする人も多い
映画の中盤で担任が自分のことを悪く言うシーンがあって、それを他の教員と教頭が嗜める場面がありました
「それはズルくない? 今になって理解者ぶるのはズルくないですか?」
自分をセーフティゾーンに入れるために他人の偽善を見抜いて解釈を与える
このシーンはとても印象的で、そう言った会話を笑ってできると言う闇というものが事件の発端だったようにも思えた
ずーっと、しんどかった
・話を聴いてもらえない花音と松坂桃李を観て聴いてくれない事がとにかく苦しくて、たまらない事なんだと思った。特に松坂桃李は古田新太と寺島しのぶに挟まれて最悪すぎると思った。
・結局、松坂桃李はバックヤードへ花音を連れて行ったけど何をしたのかは描かれたなかったのが気になった。そういった演出があって松坂桃李に非はないとは言い切れない感覚になったまま話が進んでいくのが凄いなぁと思った。案外、古田新太の妄想と思われた痴漢のような事をしていたんじゃないかと最後まで謝罪する姿を観ていて思った。けれど、現場に立ち会う事なく、話だけでその人の普段の言動で、話を信じたり信じなかったしているんだと普段、自分が無意識に行ってる判断を振り返させられた。個人的には松坂桃李があれだけ謝ってるのは何か事故死に追い込んでしまった事以外にあったんじゃないかと思えてならないけど、深読みか。
・寺島しのぶの感じが凄かった。私が若かったら的なセリフが出て、冒頭の印象だったらそう思ったかもしんないけど、性格の問題を年齢の問題に転化してる事に気づいてない感じが怖くて切なくて痛々しかった。松坂桃李の気を遣ってる感じもかわいそうだった。
・全てのシーンが暴力的なシーンの前振りに感じられた。また、気が緩むような楽しいシーンが一切なくて古田新太が出てくるとしんどかった。あっという間で、とても面白かった。
・あの父親で娘の花音があの感じなのが驚いた。
・登場人物のほぼ全員の裏面というか悪い面も描かれてて怖くなるぐらい登場人物がリアルに感じられた。花音の万引きに始まり、松坂桃李のパチンコの話、寺島しのぶのボランティア仲間などへのパワハラ、担任の先生の冷たい対応、先生らのいじめはないの一点張り対応、最初に飛び出してきた所をひいてしまった女性の自殺…などの闇を抱えて葛藤する演技がリアルで人間不信になりそうだった。その人が良い人がどうかとかを決めてるのは、その人の一側面でしかないんだと考えさせられた。
・古田新太がずっと花音は万引きしてないっていって、部屋から万引きしたと思われる化粧品を見つけて個人的にほら!してたじゃないか!謝ってこいよ!と思ったけど、こっそり公園に捨ててて汚ねぇ!って思った。
・出てくる風景の寂れ具合がたまらなかった。スーパーと自殺してしまった女性の家、後半のドライブインみたいなとこ。主人公の古田新太の家だけ新しそうで不思議な感じがした。
・後半に古田新太が亡くなった娘を理解しようと絵を描いたり漫画を読んだりして性格が少しずつ柔らかくなっていきかけたところで救いを少し感じられた。皆、どう折り合いをつけているのか?は、誰にもわからないだろうなぁと思った。とはいえ、事故死しなかったら、あの横暴な感じのまま80歳とかになったのかもしれないと思うと、複雑すぎる。
・自殺してしまった女性の葬式で母親が古田新太に弱い娘に育てた私の責任ですというような事を言っていた。何となく、弱い気質っていうのはあるのか、あったとして教育で何とかなるのか、どっちなんだろうと思った。
・改めて考えるとやっぱりしんどい映画だった。家で観てたら途中であきらめてたかもしれない。映画館で観られて本当に良かった。
誰もが持つ加害性、被害性
まず始めに、報道機関や教育機関、野次馬に対する愚痴は、本映画のメインテーマでは無いと思っているため言わないようにします。
物語はスーパーで万引きを疑われた女子中学生が店長(直人)に追いかけられ交通事故に遭い亡くなってしまう。父(充)は娘の死の責任を追求すべく店長を追い詰める。
立場としては加害者である店長、被害者である娘の父のはずが映画の巧みなバランス力によりどちらも加害者であり被害者に見えるようになっています。
例えば誹謗中傷に遭っている充を見せたと思ったら同じく誹謗中傷に悩まされる直人を見せられる。万引きした花音も悪いという直人に対して根も葉もない疑惑を掛ける充。
人間全員が普遍的な加害者的要素、被害者的要素を持っており、直人や充や楓を始め、主要人物全てに加害性と被害性がある。
花音ですら被害性だけでなく、万引きをしたという加害性を持っています。
この映画が心のどこかに引っかかるのは皆が普遍的に持っている加害性と被害性を認めたくない自分を感じるからではないでしょうか。
この物語は状況を同じにすれば、(例えば充と直人のキャラクターを逆転させても)誰でも物語として成立するんじゃないか、
と思えるほどの人間の根本に迫ったもの感じました。
加害性と被害性。
ラストは避けようもない事実を受け入れ、それでも生きる充と直人に生への力強い肯定を感じました。
今思えば冒頭の美しい海辺とスローな映像、穏やかな音楽は花音から見た世界だったように思います。
繊細な弱者が辛い思いをするこんな時代ですが頑張って生きましょう。
最後に、あの不協和音のようなおばちゃんはなんだったのでしょう?
彼女にも何かしらのメッセージがあったのでしょうか。
2時間あっという間
劇場で鑑賞してよかったー。
桃李くん、相変わらずうだつの上がらないオドオドした役がお似合いです。今回はスーパーの店長。
万引きした女子中学生を追いかけてるうちに、その子が無惨な交通事故に遭い即死。目の前でその光景を見てしまった青柳(松坂桃李)。
被害者のJKの父親、添田(古田新太)は気性が荒い漁師。職場でも家庭でも威圧感がすごく周りは気を使う。
この映画のテーマは"赦す"というところにポイントがあって、私達はいつでも映画のキャラクターのような状況に巻き込まれる、または巻き込んでしまう可能性がある事を本作を観ながら考えずにはいられない。
他のレビューにもあるが、全員加害者のような作品で、残り30分くらいまでは非常に重い。添田が憎んで憎んで、やるせなくて、その思いを青柳や周りの人間にぶつけるしかない。その姿は大切な人を失った悲しみだけではなく、自分自身と娘の間にあった空白が何なのか分からず戸惑う気持ちからの行動だったんだろうな。。。
誰しも自分を正当化して生きている世の中。
その中にはそれを押し売りしてまで他人に自分の存在価値をわかって欲しい人→草加部のおばさん(寺島しのぶ)とか、正当化する気持ちではなくあるがままの事を受け止め、自分の子供のしたことは自分の責任でもあると自覚しながらも赦しを乞う母親(片岡礼子)など、非常にどのキャラクターも印象が強く残った。
添田と共に働く若者、野木くん(藤原季節)は本当にいてくれてよかった。大変なことが起こった人の周りに近づく事は誰しもができる事ではないのに、本当に野木君のような人はとても貴重で大切な人間である。
片岡礼子さんの演技はとても素晴らしく、泣いた。
お母さんってやっぱりあぁでないとね、、、
残り30分の添田は前半とのギャップがすごい。何かを受け入れると人はやはり穏やかになるもんなんですね。"折り合い"って難しい。でも不可能な事ではないはず。それを添田が見せてくれたことが最後にスッキリさせてくれたんだと思う。まぁ、前半の添田の青柳に対する行動やら、万引きの事実が分かったにも関わらずきちんとそれを謝ることができないなど、ダメ親父っぷりもすごかったけどね。
そんな登場人物達に比べて、マスコミの程の悪さ。ほんまメディアてこんなにもいい加減なもんなんですねと呆れますね。今に始まった事じゃないけど、本当に残念。
タイトル「空白」って深い
松坂桃李演じる店長がどんどん壊れていく様は見ていて苦しかった。(それ位、桃李くんの演技が秀逸!)
古田新太のくそ親父が、自死した娘の母親からの言葉(泣けた〜)を聞いて、だんだんと自分と娘の関係に向き合っていく後半は引き込まれた。
最後、元嫁ともやっとまともに話せて救われた。
店長をやめて警備員していた桃李くんにも、昔のお客さんからの言葉があって救われた。
ラスト、娘の絵が父の心の救いとなった。
脚本もありそうな事を取り入れて、よく考えられていると思った。
予告のアオリには⁇
今年一番のすごい映画でした。
なんて言っても、演技派揃い。
最初の事故のシーン、病院のシーンはショッキング過ぎて席を立とうと思ったくらいのリアルさでした。
辛過ぎて続きを見られないかもと思いつつ、脚本と演技にぐいぐい惹きつけられて最後までみてしまいました。
予告のアオリに父親はモンスターに、とありましたが、悲しみを乗り越えるステップとして、あれだけの怒りが必要だったのではないかと、リアリティを感じました。
自分が医療関係者なせいか、彼がサイコパスだとか、モンスターだとまでは思いませんでした。
ただ、娘を跳ねてしまった女性の菓子折りくらいは受け取るか、"あんたには関係ない"と一言言ってあげられなかったのかと、フィクションにこんな事を言っても仕方ないですが、彼女の死がなければ話の流れが変わらなかったのは切なすぎました。
他のレビューにもありましたが、自分としては、くさかべさんの関わるシーンが今年一番のホラーでした。
しかも、うちの職場にもいるんですよね…
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