空白のレビュー・感想・評価
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同情できない空白を抱えた者たち
娘を事故で失った父親が、事件の真相を追い求めようと奮闘していくが、次第に暴走、関係するもの皆、そして自分自身を苦しめていく。 そして、事故の原因を作ったスーパーの店長はその父親と偏向報道に追い込まれていく。 本来なら両者に同情すべきはずだが、父親の誰とも相容れない姿勢、行き過ぎた行動がそれを阻む。 謝ってばかりの店長も可哀想であるが、常に何を考えているか分からず、本当に悪いことをしなかったのかグレーな状態が続きどこか不穏。 そして、ボランティア好きのスーパーの店員が厄介。正しいことをしているのだろうが、説得力もない。善意の押し売りがキツくて自分に酔っているのが、余計に店長を追い詰めていく。店員と父親の自分を絶対に曲げない2人の対面は見もの。 そして、登場人物皆、救いのない展開が続いていくが、観ていてタイトルの意味が分かってくる。 父親の娘を失ったことでできた心の空白、そもそも娘のことを全く知らなかったという娘との心の空白。 無気力に生きる店長のむなしく何もない空白の心。 そんな空白を埋めるわずかな救いが終盤にあることでとても安堵した。
吉田監督えぐい
またもや大傑作。 毎作何かしら心に傷をつけられては、包帯で優しく巻いてくれるような作品ですが、今作もそれに似ていますが終始緊張感が漂ってて絵変わりはないのに飽きませんでした。加害者と被害者、又はその周辺の方の心情や行動を映し出すのが本当に吉田監督はうまいなと今回も思わされました。 最後らへんにでてくる、運ちゃんの何気ない言葉に人間社会悪くないと思わせてくれました。
店長にとっての救いとは?誰か教えてください。
吉田監督の作品はヒメアノ〜ルしか観てません。
ヒメアノ〜ルが好き過ぎて、古田新太に森田剛ばりの狂気を期待してしまったのは、自分の勝手なバイアスなので、評価とは関係ありません。
今作の主役は古田新太が演じる娘を亡くした父親。
その父親にとって、この映画がどういう話なのかは比較的わかりやすく、飲み込めたつもりです。
自分の非を認めない、非などそもそも感じていない。だから絶対に考えを曲げず、周囲をマイナス方向へと巻き込んでいく。
前半の構図は映画の予告からも感じられるように、古田新太の暴走を描く。僕のように、その暴走に期待をしながら見た人は多いと思います。しかし、それは巧妙なミスリードで、本編はその先にある父親が自身の問題と向き合い僅かばかりの変化(成長)を見せるというのが本当のテーマ。
事態のエスカレートを期待するマスコミ=世間=観客(僕)に侮蔑の目を向け、自省を促すような流れは素晴らしいと感じました。(それだけに、ワイドショーの作りがチープなのは残念でした…)
娘を轢いた女性が自殺した後、その母親がとった行動により、主人公の中で初めて自分のこと省みる心が生まれます。
そこから娘のことを知ろうと努力するも、さっぱりわからない。でも、わからないからこそ人と自分は違う、人にはそれぞれの立場や感情があるということを理解して、部下や元嫁や店長とも歩み寄っていくことが出来る。
そしてラスト。娘が描いたイルカ雲をみて、ほんの僅かな繋がりを感じる。
それが父親にとっての救い(成長の報酬)となっている。
わかりやすい作りです。
じゃあ、松坂桃李が演じた店長にとってはどういう話なんだろう。
主人公はもちろん父親なんだけど、店長も対のように描かれていたと思います。
そもそもこれといって問題を抱えている訳でもない彼が、めちゃくちゃ苦しんで、自殺まで考えて、店も失って、、、その先にある救いっぽいものが「焼き鳥弁当うまかった」って、、、。報酬の大小の問題じゃなく、ちょっとズレてると思うんですよね。スーパーの存在って店長にとって、そんなにアイデンティティーに関わってたのかな?(死んだ父から託されたから?)
今一つピンとこなかったポイントです。
店長にとっての変化やそれに伴う結果や報酬が何だったのか、僕にはまだわかりません。そこがわかれば点数が上がりそうです。
誰か教えてください。
(´-`).。oO空白とは、、、、、。
この映画の真理は店長青柳のお婆ちゃんの一言だろう。
『誠実に接していれば世の中捨てたもんじゃない』と、、、、。
誠実じゃないもの、、、、この映画ではマスコミや慈善事業のことなのでしょうね。
真に伝えたいことや救いたいことの内容や理由が空っぽだと人は救えないのでしょう。娘を亡くした漁師の添田は娘の死に納得がいかずストーカーまがいの行動で青柳に接します。青柳もスーパーを失うほどに疲弊しながらも事件を考えます。ホラーのような展開でありましたがお互い事件をどう受け止めたらいいか?どう理解したらいいかの?心の空白を埋める大切な時間であったのでしょう。
折り合いをつけるっていうのはこういう事なんでしょうね。残念ながら娘を轢いた不幸な運転手は自殺。不幸な話ですが添田の気持ちはここでグッと変わります。感動する場面です。
世の中折り合いを付けないと前に進まないことだらけです。国、人種、個人、、、さまざまです。コレらのわからない空白を真面目に埋めていくことが第一歩なのでしょうね。
★3.5 ちょい厳しめです。なんだか私には美しすぎる、、、、、。私は青柳店長が娘の万引きをネタになんかイタズラでもしたのだと最後まで疑ってました。そうゆう絶望的終わりが結構好きなんです。少し裏切られましたが、それはそれで良かった、、、、。
切ない。
ほんの少しだけ相違があると とんでもないことが起きる。 関わる人達の想いが あらぬ方向に向かい ほとんど意味のないものになる やはりこれも日常。 登場人物のそれぞれに感情をのせればのせるほど 胸が苦しくて切ない。
人間の愚かさと優しさを知りました
古田新太さん演じる充はしょうもない奴だった。 傍若無人な振る舞いで、自己中、何でも決めつける、思い通りにならないと怒鳴りつける。モラハラ男の典型的なタイプ。 充に委縮して何も言い出せず、まともに話すこともできない娘。ただ一緒に住んでるだけの親子だ。 この作品を見て思ったこと。 人を許すこと。 責め続けることはまた犠牲者を増やす。人の話を聞くこと。自分の思いを押し付けないこと。人間関係で1番大切なことかも。親子でも、恋人でも、夫婦でも。 片岡礼子さんには泣かされました… それが充の転機のきっかけだったね。 亡くした娘のことを考え、知ろうと思った、彼女が何が好きだったか、何を見ていたか。娘のことを何も知らなかった自分の心の中の空白の部分を埋めるかの如く。 それをすることによって、充は人に感謝や思いやりや頭を下げることができるようになっていった。 本当は生きている内に気づけたらよかったね。 脇を固めるのはクセ強でお節介、草加部さん演じる寺島しのぶさん、万引きされたスーパーの店長には優柔不断で気が弱く、悪者になりきれない松坂桃李さん、そして、充のことを父親のように思い、陰ながら支え、理解者である下っ端漁師の藤原季節くん、同じく充の理解者である元妻の田畑智子さん。 キャストの皆さん、それぞれが不可欠な役回りをしっかりと演じきっていて、人はきっとみな、違った弱さや愚かさを抱えて生きていて、それでも支えてくれる誰かがいる。 最後にはそんな優しさと温かさを感じた作品でした。
他人事ではない
ひととの関わりを深く考えた 親子、夫婦、職場のそれぞれでのコミュニケーションだったり自身の立場からの責任感だったり色々考えてしまった 娘を亡くした親の気持ちには自分を重ねてしまい辛くなってしまう 次回作も期待したいと思えた。
空白
うまく言えないけど、とんでもない映画だった。 日本一軽トラが似合う俳優は古田新太だし、『ミスト』の宗教おばさん並に何か嫌悪感ある寺島しのぶだし、孤狼の血が抜かれた松坂桃李もすこぶる良い。 冒頭、花音が学校の階段を登ってる時に、男子がふざけて降りてくる所で、花音が男子学生を見つめる表情に鳥肌が立つ。ほんとこのタイミングでこの映画は只者ではないぞ!と覚悟しろ!ってなる。 とにかく凄い映画だった。
現代風の人間模様
多感な中学生をはじめとして、取り巻く大人たちが、ちょっとしたズレや不運から陥っていく中での、ありそうな人間模様を、辛辣に、見事に連ねて表現されており、息をのむ緊張感がずっと続きました。問題があるのは、面白おかしく、好き勝手に、しつこく追い回す特定分野番組のマスコミなのでしょう。そういう番組に関わっている人達にじっくり観ていただき、話し合っていただきたいものです。
俳優の演技は素晴らしいのだが…
古田新太のモンスタークレーマーぶり、寺島しのぶのウザさが際立つおばちゃん役は素晴らしかった。
ただ、個人的には古田新太演じる父親の怒りの矛先が現実的ではない感じがして、映画の根底にあるストーリー自体が入って来なかった。
娘の交通事故死を車を運転していた人よりも娘の万引きを見つけて追いかけたスーパーの店長のせいにして、父親が粘着するというストーリーなのだが…
轢き殺したトラック運転手<最初に女の子を車で跳ねた女性<万引きを追いかけたスーパーの店長
という構図が本来は逆なのでは、と思ったら最後までストーリーに納得出来なかった。
部分、部分で良いセリフもあるだけに残念。
充のモンスターぶりと心情変化
女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人(松坂桃李)に見つかり、追いかけられ停車中の車の横から車道に飛び出して乗用車はねられ、倒れてたところに大型ダンプが来て轢かれ数十メートル引きずられて死んでしまった。花音の父・充(古田新太)はそれまで娘からの話も聞かず、ほとんど無関心だったのに、娘の死に直面し、娘は万引きしていないと思い込んで、スーパーの店長に対しモンスターとなって追求していくという話。 なかなか深みのあるストーリーだった。 古田新太のモンスターぶりが見所だが、松坂桃李の気の弱い店長役も良かったし、店員役の寺島しのぶが店長を支え、すごく良かった。 充の元妻役の田畑智子、充と一緒に船に乗ってる藤原季節、 花音の担任教師役の趣里など、味のある演技を見せてくれる。 観賞し終わって、じわりと余韻の残る良い作品でした。
恐怖→切ない、高低差
前半は、ちょっとグロくて、モンスターが何人か出てくる、観るのが辛くなる感じです。 特に古田新太は恐怖。ホラー。 ほかの登場人物も基本は共感出来ず。 最後の30分くらいは急に切なくなってくる。 あんなにキチ〇イだったのに、共感できるからすごい。 加害者と被害者の両面の話ならよくあるけど、全員被害者で加害者が不在という不思議なストーリーで考えさせられる。 終わり方が想像できなかったけど、なんか良い終わり方。泣けた。 古田新太の凄み。アカデミー賞いけそうね。 「空白」なるほど。
【ネタバレ】テンポ良し。ただし古田新太の主人公、コイツが一番悪い全てのの原因なのに最後すら行いを謝らない、「光が見えた」とも言い換えられるが、単なるクズ野郎で終わったのが残念。
荒くれのデタラメ父親役の古田新太の悪辣ぶりと、その他非常に繊細で常識的な人々のコントラストで終盤まで引っ張る。飽きることはない。ただ最後のモヤモヤな感じが残念。あと学校の教頭たるものが何の根拠もない痴漢の噂話しちゃダメだろう。 古田新太も、常に低姿勢弱気な店長松坂桃李も、中年独身女性の悩ましいポジションを演じた寺島しのぶも好演なだけに残念。 そもそも、成長期の娘、内気であることくらい毎日会ってればわかるだろが💢💢中学生の娘の申し出を、乱暴な男の暴言でドヤしている時点でDV確定。都合の良いバカで愚かな男だなぁ。おまけに娘の気持ちっとも考えず、話し合おうともせず。スマホ取り上げるのではなく、外へ投げ捨て。そりゃ娘おかしくなるわ。 それで、何だよ交通事故で残酷な状態で死んだら「娘を返せ、お前が悪い」ってか?💢犯罪には到底ならないのに、後述するようにトラッカーの会社にも怒りを向けるのがスジだろが。「遠いから無理」ってか。トラック運転手以外の2人は誠意を持って謝ってるではないか。オマケに学校まで乗り込んでイジメの詮索する有り様。松坂桃李を一方的に恨んで「娘は盗みなどしていない。」って 段々と私の中で古田新太の主人公ボコボコにしたいマグマが爆発寸前だった。 それで、何ですか?罪もない人が自殺して、風評被害で潰れたスーパー店長にも、盗みの証拠らしきもの見つかったにもかかわらず、双方に一言も謝らない無神経、唯我独尊ぶりが「希望の光」とはとても見えなかったなぁ。こう言う人間ドラマ系統は「(カタルシス 魂の浄化)がキモなだけに残念だ。 コレ敢えて言うと最初に突き飛ばした女の車は完全な不可抗力。スーパーの店長の松坂桃李は、敢えて言えば、追走距離が長過ぎ、昭和の昔あったコンビニでパン2、3個盗まれて、行き過ぎた正義感で犯人追い詰めて、返り討ち刺殺された事件思い出した。つまり結論としては、法定速度守るトラッカーなんて殆どいない現状で、解雇はともかく法人のみならず個人にも莫大な損害賠償かかるトラッカーが一番悪何だよ。法定速度を守り「前から何か落ちている」「なんか横から飛んできた」時点で急ブレーキ踏まないといけない。意外とブレーキ痕って難しいから。
善良なふりをする一般市民の怖さ
加害者家族と被害者家族。本来は相容れないがどちらもマスコミの報道によってバッシングされるという共通項がある。たとえ殺人を犯した人間だとしても、その家族は事件と何ら関係がないはず。でも加害者家族は責められ、嫌がらせを受けたりする。被害者家族も似たようなものだ。被害を受けたことをアピールしたり、公判での加害者の態度や証言を批判すると、調子に乗ってるとかいい加減許してやれとかのバッシングを受けたりする。なんて理不尽。 スーパーから走って逃げ車に轢かれて死亡した少女の父親と、万引きした少女を追いかけたスーパーの店長。基本的には真相を知りたがる父親が暴走したり、店長を詰問したりしていく。どっちもマトモには見えない。でも、もっと怖いのは興味本位で報道するマスコミと一般市民だ。特に一般市民は、スーパーに抗議の電話をかけたり、スーパーを放火したり、客として利用しなくなったり、誹謗中傷のビラや落書きをしてくる。姿が見えなくて、自分たちが善良であることを信じてやまない。なんて怖さ! 父親が被害者家族で、店長が加害者のような描き方だが、実は真の加害者は車で轢いた2人のドライバーだ。最初に轢いた女性はちゃんと描くが、トラックの運転手は途中から出てこない。ミステリー的な見方をすると、夜のシーンであそこでトラックが止まれるなら、あの子はあそこまで引きずられることはなかった。ミステリーなら、真に悪いのはアイツだ!と、スピード違反か前方不注意で追及される展開になるだろう。でも、本作はそんな映画ではないから仕方ない。 内容は全く異なるが、同日に鑑賞した「由宇子の天秤」とテーマがカブる気がした。正義・正しさ、報道の姿勢、遺族の悲しみ…。現代社会で無視できないテーマだ。本作の方が救いのある終わり方だったのでやや点数を高くした。
今週(9/23~)の本命筋には入ってくるかな…。
今年126本目(合計190本目)。 ※ 「プリンセス・プリンシパル」(Ver2)もみましたが、このレビュー需要はないと思うので飛ばしています。 私自身は去年(2020年)に行政書士試験に合格した程度の知識(このご時世なので開業はしていないです。というかできません)。 さて、「空白」というタイトル、それ自体が何を意味するのかは映画内では明示的に出てきませんが、多くの方が書かれている通り、「それぞれの人がうまくいくこと、いかないこと、他人と意見があうこと、あわないこと」そうしたものがあって、その「隙間」のことを"空白"と指しているのではないか…と思います。 映画自体は架空のお話で、映画内では漁港も出ますが町(市ですらもない?)が異様にしょぼいので、漁港で成り立ってる人口1~2万人の都市が舞台なのかな…と思います(実際には、エンドクレジットで「●●市協力」と流れる)。 架空のお話とはいえ、万引きとそれをふせぐ(このような零細規模の)スーパーとのやり取りというのは壮絶なものがあるといわれ、スーパーはまだしも個人経営かそれに近い書店等だと廃業をやむなくされたり、というのはリアルにあります。そうすると、お話自体は架空のものとはいえ、「いつ起きてもおかしくない」類型ではあると思います。 採点にあたっては、下記がきになったので、まとめて0.5減で4.5としています。 ----------------------------------------------------------- (減点/まとめて0.5) ・ 今回の映画の描写では、第一義的にはスーパー側にかなりの落ち度が言えるのではないか…と思えます。たとえ万引きであっても「告知と防御の機会」(実際に防犯カメラを見せて、やったよね?と確認すること)がなされておらず、かと思えば「(経費か何かの予算で)あれは偽物」とか言い始めるので、スーパーの落ち度はかなりあります。 また、すぐ追いかけるのではなく、不審な行動を見かけたら「お客様、何かお探しでしょうか?」と声をかけるのは常識で、あのやり方だと、正直その「告知と防御の機会」を何ら保証していないまま被疑者が死亡しており(よって、刑事事件としては、未成年者という事情もあるので、おとがめなしか(なくなっているのにどうしようもない)、行政からは「そんないい加減なフェイクな防犯カメラをつけるのはやめてください」ということ程度にしかなりません。 この点において、「誰を悪者にするのか」というのはこの映画の「ひとつの問」ですが、私であれば「店側の対応に何らの問題もないとは言えない」のではないか…と思います。 ただ、そこの問題提起もなく、人口1~2万人のいわゆる「スーパー」で当該商品(ネタバレなので回避)を、ああいう形(万引きを誘導すると言われても仕方がない。人口1~2万人のスーパーで、それが絶対的に必要で置くスーパーがおよそ考えられない)で置くのも、「万引きをしてもよい」理由になりませんが、「どうぞやってください」といっているのも等しい部分は否めず、そこの問題提起が足りないのでは…と思います。 ・ 上記の通り、この事件は被疑者が死亡していることから刑事事件としては何もおきず(せいぜい疑い程度にはなるが、亡くなっている未成年者にそこまでするのかという道義的な問題もある)、行政としても「そんないい加減なビデオカメラはやめてください」ということ「くらい」にしかなりません。 しかし、問題が映画の描写のように複雑になり、やったのやらないだの証拠を出せだの何だのという、人口1~2万人程度と推知される町(か、市?下手すると、村?)で、「私人どうしで」争っても仕方がないんです。 こういうことは、弁護士や一定条件で認定司法書士(訴額が140万円を超えない)に話を持っていくべきで(なお、行政書士は「一通り話を聞いて、こうしたらいいと思いますよ」とは言えても、具体的に顔を突っ込むとアウト)、これらの人達は一切出てきません。 もっとも、そうした人を出すと、彼ら彼女らがいろいろ調べて、和解案などを出してはいおしまい(映画としては60分で終わってしまう)ということになるので、彼ら彼女らが出なかったのだろうとは思いますが、私人間であそこまで支離滅裂な事件が起きれば、誰かしら無料弁護士相談を呼ぶとか、行政も行政で「無料で弁護士の方と話してみませんか?」とか言うものであり、「そうすると、話がすぐ終わってしまうので仕方がなくそれらを全て無視した」ともいえますが、映画の作話の範囲ならともかく、あのようなトラブル(特に万引きがらみ)はよく多く、そこで私人間でやったのやらないの延々を何か月も(月のカウントは明示的にされないものの、3か月くらいは喧嘩してるっぽい)やってたら、関係者(上記のように、あまり大きな町ではないと推知できる)の「気がおかしくなる」レベルです。 そういうことを考えると、「空白」というタイトルでそういう人の葛藤を考えさせるという点は理解するものの、「事件の解決という観点」では私人間でやったのやらないのやってもダメであり(もっとも、今回のケースは、スーパーの防犯カメラがフェイクとか、証拠のとりようが制限されるので、「判断不可能」になる可能性さえある。そのくらいスーパーの対応は問題があると言われても仕方がない)、「いや、そりゃ弁護士やらを出したら30分で終わるけど、それじゃ映画にならないでしょ」は理解できても、「下手に泥沼化して、どうにもこうにもならない状況」になるのならそうするべきで、そこの配慮が足りない(たとえば、行政(市役所(町役場?)が「無料相談を利用してみませんか?」とか言わない)のは、ちょっとどうか…と思いました。 -----------------------------------------------------------
鳥肌の連続
吉田恵輔監督作品を劇場で鑑賞するのは初めてです。「ヒメアノ〜ル」や「BLUE」は配信などで鑑賞しましたが、それぞれ衝撃的で、それぞれの作品の素晴らしさに感服しました。
そして今作。劇場の出入りも7割方埋まっていて一安心。
一言で言ってしまえば、休むことなく衝撃が襲ってくるという感じでした。序盤の交通事故のシーン、予告では1台の車に轢かれたように見えたのですが、実際はそこからトラックの追撃があるという衝撃的なスタートでした。娘の頭は潰れ、眼球ははみ出し、骨は何本も飛び出し、遺体は損傷が激しく本人確認ができないほどというとんでもない状態で、父親と娘は対面します。そこまで娘に無関心だった父親がここで心の底から泣き崩れます。あんなに普段楽しそうな古田新太さんのあんな表情を見てしまってはこちらも絶句です。
今作では、登場人物全員が感情を剥き出しにしているので、妙に生々しく、他人事には思えない作品です。古田新太さんの毒親っぷりはとんでもなく、怒鳴るシーン怒鳴るシーンに毎回ビクついてしまいました。松坂桃李さん演じるスーパーの店長はどこか頼りないが、終盤に秘めたる狂気が一瞬解放されて、おどろおどろしかったです。寺島しのぶさん演じる店員は、とっても良い人ではあるのだけれど、人の良さが限界突破しており、善意の押し付けをしてきて、とても気持ちが悪いです。当の本人は親切のつもりでやっているのもタチが悪いです。そんな人も何かを失った瞬間に感情を爆発させるのもひとつの狂気でした。なだめからのキスには驚きましたが笑。藤原季節さん演じる若手漁師も、不真面目そうに見えて、しっかりしていて、暴走する充を徐々に慕うようになり、充の心の支えのひとつになっているのも良いなと思いました。マスコミを退かせる姿には漢気を感じました。
今作はマスコミがとにかく酷く、偏向報道なんのそのな勢いで、この事件に絡む人々全てを悪に仕立てていきます。店長のインタビューの中での小さな小言のみを切り取って報道するという、報道機関としてあってはならないレベルの偏向報道を平気でする姿は、コロナウィルス関連で不安を煽る現在のマスコミに似てる気がしました。他にもニュース映像を切り取ってYouTubeに上げるなど、これも現実でよく見るものだなと思いました。
追い詰める父と逃げる店長の攻防は、ひたすらに緊張が溢れており、交通事故現場の再現で、店長が車道に向かい飛び出していこうとする姿に恐怖を覚えましたし、車の運転手に向かって「ゴチャゴチャ言ってるとぶち殺すぞ」という誰をも黙らせる暴言を浴びせた父にも恐怖です。
事件の解決へと近づいていくたびに、虚しい気持ちでいっぱいになるのですが、最後に娘の書き残した絵、閉店したスーパーの常連からの感謝の言葉で、追う側と追われる側の両者が少しだけ救われ物語は終わりました。
見終わったあとは放心状態でした。なぜこんなにパワーのある作品なんだろうか。なぜこんなに辛い物語なのに面白いのか。なぜフィクションなのに他人事に思えないのか。色々と考えることは山積みでした。正直レビューでは言葉に書き表せないものばかりです。トンデモ傑作です。ぜひ劇場へ。
鑑賞日 9/23
鑑賞時間 13:50〜15:50
座席 H-12
「空」の中の「白」こそが傷む心の空白を埋める
胸が痛い。こんなに痛みを伴う映画は他にない。 観客に心の痛みに立ち向かわせ、どうすぺきなのか考えさせせるような作品だ。 誰しもある日突然辛いことが起こる可能性はある。 そんな時に耐えられない辛さに対してどう受け止めて、どう消化するのか。 正解なんてないから、登場人物達はみなそれぞれの立場で苦悩する。 人の心はそう簡単に人の死を受け止めきれないものだから、家族の死が突然訪れた側も、死の原因を作った側もみんな苦しいのだ。 そんな中、そう来るか! と思わせてくれるのが片岡礼子演ずる母親だ。 ハッ!とする。 答えはないけれども自分がこの立場でこう言えるのかが試される。 ポスターの古田新太の顔と松坂桃李の土下座の写真はこの作品をこれでもかと言うほど表現している。 寺島しのぶのスーパーの店員の正しさの押し売りがまた何が正しいのかなんて無いのだと考えさせる正しさの物差しにもなっていた。 娘がつけていたマニキュアは透明だと田畑智子の母親は気がついているところにドキッとさせられる。 年頃の娘のことをなにも分かっていない古田新太演ずる父親が描いた下手くそな絵は、心の空白を埋めるものなのだろう。 青い空に浮かぶ白いイルカ雲を死んだ娘も確かに見ていたのだ。
質素で心に届く映画
けっしてショボい訳ではないです 観る側から考えた観る側の人の心に届けるというより 当事者達の心の動きをこう見せたら絶対観る人の心に届くよねという感じ それぞれの人物の内側が積乱雲のように入り乱れているからこそ出てくる感情の発露にどんどん引き込まれます 宗教があるから許しがあるのではなく、許しを求めて神を作るんだろうと思わずにいられません
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