劇場公開日 2021年9月23日

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「同情できない空白を抱えた者たち」空白 いたかわさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5同情できない空白を抱えた者たち

2021年9月24日
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鑑賞方法:映画館

娘を事故で失った父親が、事件の真相を追い求めようと奮闘していくが、次第に暴走、関係するもの皆、そして自分自身を苦しめていく。
そして、事故の原因を作ったスーパーの店長はその父親と偏向報道に追い込まれていく。

本来なら両者に同情すべきはずだが、父親の誰とも相容れない姿勢、行き過ぎた行動がそれを阻む。
謝ってばかりの店長も可哀想であるが、常に何を考えているか分からず、本当に悪いことをしなかったのかグレーな状態が続きどこか不穏。
そして、ボランティア好きのスーパーの店員が厄介。正しいことをしているのだろうが、説得力もない。善意の押し売りがキツくて自分に酔っているのが、余計に店長を追い詰めていく。店員と父親の自分を絶対に曲げない2人の対面は見もの。

そして、登場人物皆、救いのない展開が続いていくが、観ていてタイトルの意味が分かってくる。
父親の娘を失ったことでできた心の空白、そもそも娘のことを全く知らなかったという娘との心の空白。
無気力に生きる店長のむなしく何もない空白の心。
そんな空白を埋めるわずかな救いが終盤にあることでとても安堵した。

いたかわ