劇場公開日 2021年2月5日

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「観客に忍耐を強いるホラーサスペンス」樹海村 nikotamaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0観客に忍耐を強いるホラーサスペンス

2021年2月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

最初に言っておくと「レビューで激しく批判されるほどには悪くはない」という印象。「事故物件」よりははるかに面白い。但し、観客は始まってからかなりの時間もやもやを強いられる。まず、時系列が非常に複雑。目の前で展開されているストーリーが今の話なのか、過去の話なのか、記憶の中の話なのか、それとも幻想や霊界の中の話なのか、直ぐには理解できない。日時や場所、人間関係などの説明はばっさり省かれているので、誰の何の話なのか、どこへ向かっていくのか、分からずイライラする。単純明快でオチへ向かってモチベーションが高まっていくロードムービー的な謎解きや非日常的な恐怖感、パニック感を期待していると無慈悲に裏切られる。神経を逆撫でされるような生理的ないやらしさもない。ストーリーを3分の2ぐらい我慢して観たところでようやく「さっき分からなかった腑に落ちなかったシーンはこういう意味だったのか」とつながるが、だから何なんだと言われればそれまで。巧みな伏線の回収が怖さに結びつかない。分からなかったことはいずれ分かるが謎が解けていくわけではないのだ。CGや特撮を駆使した気味の悪いシーンは要所に散りばめられてはいるが、話の行ったり来たりが気になってホラーに集中できない。ただ時間が経つごとにちょっとずつもやもやが解消されていく喜びは感じる。構成はまあがんばったんだろうなという感じ。でも、塚地はなぜ死んだのか?終わり方はもろに予想の範囲内。よくあるパターンだ。最後にキャスティングに苦言。どういう力学でこういう配役になったのか甚だ疑問。残酷な言い方だが主人公二人に驚くほど魅力がなく感情移入できない。熱演には拍手を贈るが…。取り巻く仲間たちもほぼ無名で演技にキレがなく大学の自主制作映画かと思うレベル。逆にちょっとしか出ないベテランバイプレイヤーたちの存在感が際立つ。安達祐実や原日出子、國村隼ってプロなんだなと納得。周りが玄人なので主人公格の若者たちの非力さが目立ってしまった形。誰もが興味を示す樹海という舞台設定は悪くはないが、時間軸が複雑でストーリーも遠回りするためホラーで気持ちよくすっきりしたい人は肩透かしをくらう映画でした。

SID