「シン・インビジブルマン」透明人間 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
シン・インビジブルマン
2017年のトムくん主演の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』を皮切りに、往年のユニバーサル・モンスターが“アベンジャーズ”する“ダーク・ユニバース”なるプロジェクトが始まる筈だったが、肝心のスタートでコケてしまい、モンスターたちは復活ならず…。
ところが! その中の一体が全くの別作品として完全リブート。
蘇ったのは、透明人間。
蘇らせたのは、低予算ながら良質ホラーを次々送り出すスタジオ、ブラムハウス!
それにしても、よくぞ古典ホラーを現代感覚のホラーに創り換えたと関心。
話は…
恋人である光科学の天才エイドリアンに“支配”されていたセシリアは、彼の豪邸から脱走。
程なくして、彼の兄からエイドリアンが自殺したと知らされ、やっと解放された…かに思えたが、
セシリアの周辺で怪奇な現象が。彼女は感じる。彼は生きている、と…。
『透明人間』と言えばの“見えない恐怖”も勿論だが、次の事が新しい。
独り訴えるセシリア。が、誰も彼女の事を信じない。
孤立。追い詰められ、精神的にも不安定に。正気を失っていく。強迫観念。
主演のエリザベス・モスはTVドラマシリーズで人気らしく個人的にはあまりご存知無かったが、その熱演は見事。ただ同情的なだけじゃない感じも滲み出している。
怖がらせから始まり、悪質な嫌がらせ、復讐、殺意…。
愛憎、狂気、異常なまでの執着心。
ホラーと言うより、サイコ・スリラー。
怪物的なものより、こちらの方が身近に潜んでいるものでよっぽど怖い。
見せ方も巧い。
少し離れた所や隙間から、“誰かに見られてる”ようなカメラアングル。
時々、何かが近付く。何かが近付く気配が。何かが見えたような…。
誰も居ない空白のスペース。でも“そこ”に、誰か居るような…。
そして突然、襲い掛かる…!
定番と言えば定番だが、それでもスリルは盛り上がる。唐突のショッキング・シーンはドキッとさえする。
やっぱホラーやスリラーって、こういうアイデア駆使した作品が面白いね。
数々のホラー/スリラーをプロデュースしてきたジェイソン・ブラム、彼の下で『ソウ』『インシディアス』などの脚本を手掛けてきたリー・ワネルの手腕が冴え、話も二転三転。
終盤明らかになる“透明人間”の正体も、これまでを覆すような斬新さ。
ネタバレチェック付けるので触れるが、
人が透明人間化するのではなく、光学迷彩スーツを着用。死を偽装してまでヒロインを徹底的に追い込んでいく。
光学迷彩スーツなんてSF的…と思いきや、まんざらそうでもないらしい。現実的に不可能じゃないとか。スゲー時代がやってきた…。
全く新しい話、設定、全く新しい透明人間像…。
こんなの『透明人間』じゃない!…との声も勿論あるだろう。
でも、H・G・ウェルズやジェームズ・ホエールがもし本作を見たら、この新しさを気に入ったと思う。
さながら、シン・インビジブルマン!
この古典モンスターにもまだまだそれほどの魅力がある。
また見えなくなるには早い、早い!
さて、次なる古典モンスターは?
勿論、ブラムハウスで!