「良作でした。」透明人間 刺繍屋さんの映画レビュー(感想・評価)
良作でした。
予想していた以上に面白かったです。
カメラワークや音響など演出がとても巧みで、空間の使い方が上手く、絶えず恐怖感を煽られ、最初から最後まで緊張感が続いたため、あっという間の2時間でした。
ストーリー、脚本共に上手く出来ており、古典となりつつある“透明人間”を現代に蘇らせたリー・ワネル監督の手腕は流石ですね。
“アップグレード”を観た時にも思いましたが、目の付け所が違いますよね。
それに加え、エリザベス・モスさんの演技も素晴らしかったですね。
追い詰められ焦燥し、狂気を感じさせるまでに至る演技は鬼気迫るものがありましたし、個人的にはラストのどのようにも取れるあの複雑な表情は秀逸だと思います。
音の使い方や細かい演出が巧みなので、大きなスクリーンと音響設備の整った映画館で観た方がより楽しめる作品だと思います。
中盤過ぎ、インビジブルスーツを持ち出すのではなく隠したところをみると、あの時点で既にセシリアはエイドリアンを殺すつもりだったのだと思いますが、あれが最後の意味深なセシリアの表情に繋がったんですね。
エイドリアンは反社会的パーソナリティ障害、所謂ソシオパスとして描かれ、それとは対照的にセシリアはサイコパスと見做されて精神病棟に強制入院されるものの、結局はその疑いも多くの目撃者によって晴らされるわけですが、最後のあの表情を見ると実はセシリアは本当にサイコパスだったのではないかと勘繰りたくなりますね。
ここまで手放しで褒めていますが、不満が無かったわけでもないんです。
それが、前述したラストに繋がるセシリアがインビジブルスーツを隠した事なんですが、あれだけ完璧主義なエイドリアンがインビジブルスーツを隠されたのに気付かなかったのはおかしいですよね。
あとはエイドリアンがセシリアに固執する理由がよく分からなかった点でしょうか。
特別何かに秀でている感じではなかったですし、性格もそれ程良い感じにも見受けられなかったですし、セシリアの魅力が伝わらなかったのは残念。
主演のエリザベス・モスさん、素晴らしい演技力を有した役者さんだとは思うのですが、特別スタイルが良いわけでもありませんし、容姿としては割りと普通なんじゃないかと思うんですよね。(ファンの皆様、すみません)
やっぱり観客を納得させるだけの分かり易い魅力は必要だったのではないかと個人的には思います。