劇場公開日 2022年2月4日

「映画と呼ぶのも憚られる呪物」大怪獣のあとしまつ k aさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5映画と呼ぶのも憚られる呪物

2023年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

公開当時からの評判の悪さは聞いてはいたため、大幅にハードルを下げて鑑賞。
結果、私の人生において最も空虚な2時間を経験することとなり、
物語というものをこうも醜悪に作り上げることができるものなのかと逆に感心してしまった。

低俗で不快なギャグ(あるいは妄言)、無駄だらけでほとんど意味を持たない会議シーンの数々、牛歩の如き致命的なテンポ、一切の合理性を持たない組織や世界観構成、極めつけのデウスエクスマキナ(笑)。かろうじて良かったのは主演の山田涼介さんの演技くらいだろうか。

ギャグ映画としてみれば細かい粗や整合性の取れない脚本は許容できる。そういうものとしてみれば、20分の尺であったらそこまで不快な作品だと感じなかったかもしれない。
しかし、本作の登場人物たちは奇天烈で不可解な行動を取るため一切のリアリティを感じさせず、
こちらは笑う笑わない以前に「は?」で脳内が埋め尽くされる。そしてそれがたっぷり2時間続く。
「知らない世界の無能で下品な人型生命体が織りなすSFファンタジー」くらいまで世界観が現実と乖離しているため、端々にドヤ顔で捩じ込まれる政治風刺らしき言葉が一切の深みや納得感を感じることができない。

そもそも、幼稚極まりないパンチラインで政治風刺や他作品風刺を挟み込み、それを「ギャグだから」、「風刺だから」、で責任を放棄してしまう本作は余りにも卑怯ではないかだろうか?
それは飲みの席で芸人のギャグを本人の前で披露し、「私がすべったみたいじゃ〜ん!!」と責任を転嫁してくる奴のようである。すべってんのはお前なんだよ。巻き込んでくんなよ。

この作品には作り手が観客を「風刺を無条件で礼賛する愚かな反権威集団」だと舐め腐っている雰囲気が随所から腐臭のように漂い、私たち小市民の娯楽と日本映画業界を蝕まんとしている。
このような悪質なオブジェクトは映画と呼ぶのも憚られる。
早いところフィルムごと霊験あらたかなお札で封印したのち、大宮八幡宮神社の大祓にてお焚き上げしていただくのがよかろう。

k a