「もうちょっとリアル路線でやって欲しかった」大怪獣のあとしまつ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
もうちょっとリアル路線でやって欲しかった
空想のものを現実問題として考えると非常に面白いという話は、まず柳田理科雄の「空想科学読本」シリーズがあり、映画では「前田建設ファンタジー営業部」が忘れ難く、また、リアルテイストの怪獣映画といえば「シン・ゴジラ」が思い浮かんで、同系列の作品と勝手に期待して観に行ったのだが、かなり違う系統の映画だった。
まず、怪獣が倒されたところから話が始まるのだが、倒された経緯は登場人物たちの会話から推察するしかない。その会話から察するに、怪獣が死亡したのはどこからから来た強烈な光によるもので、通常兵器が全く効かないということであった。通常兵器が効かないのであれば、日本の防衛力では全く手出しができないということであり、国民を徴兵して対処に当たらせても全く無意味ではないかと思った。
これがまず最大の伏線となっていた訳だが、現実問題として、残された怪獣の死体をどうするかについて、シン・ゴジラ風に閣僚の縦割り主義などが揶揄されるかと思うと、どうも詰めが甘い話になっている。どうやら、お笑い要素を詰め込みたがっているような展開であり、それが必ずしも笑える話ばかりではないので、まるで国防大臣の例え話のように一体何がしたいのかが良く分からなかった。
「空想科学読本」や「前田建設」のようにリアルに徹して突き詰めるほど笑えるはずなのに、安易なギャグの投入で質の低下を招いてしまっているように感じられたが、怪獣の死骸が観光資源になると試算されると所有権を主張し、異臭を放つのが判明すると責任を追及しようと掌を返す某国の対応には本当に笑わされた。
異臭を放つ遺骸をどう始末するかについてはまぁ、妥当な方法だとは思うが、日本国内に廃棄されたダムなどというものは存在しないので、強烈な違和感を覚えた。そうした展開によって、どうやらただのリアル路線ではないらしいと気が付いたのだが、あの結末にはかなり不満を覚えた。あたかも科特隊やウルトラ警備隊が特殊兵器で散々苦労しているのに何の役にも立っておらず、ウルトラマンやウルトラセブンが一人で解決してしまうような脱力感が残った。
特撮やセットなどは非常に真面目に作ってあるだけに、脚本の出来が物足りないと思った。役者は非常に豪華であり、音楽もかなり頑張っていただけに、もうちょっと何とかならなかったのかというもどかしい思いを持て余した。
(映像5+脚本2+役者3+音楽4+演出3)×4= 68 点