「極上」瞽女 GOZE カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
極上
最後の瞽女と言われている小林ハルの実話に基づいた映画。
凄絶な人生に眼が濡れっぱなし。
子役の娘が・・・・もう駄目です。参りました。
その他のキャストも皆素晴らしい。
庄屋さん宅でのエキストラの人達も東北顔の人が多かった。
明治33年(1900年)生まれで、105歳まで生きたハル(没2005年)。占い師(役:小林幸子)大当たり。あの時代の平均寿命を考えると驚異的な長生き。
【いい人との旅は祭り 悪い人との旅は修行】と、云いなさる。つい、あの人との、この人とのと自分の人生を思いおこし、自分は修行したのだろうかと考えてしまう。謙虚さがまったく違うから、強くなれなかったのだと思い知らされた。もう駄目駄目。
ウキペディアに詳しく書いてあるのを読んだ。眠れなくなった。苦行の期間が長すぎる。ずっと辛い人生。神様は意地が悪過ぎる。映画はその苦行の半分くらい。全部描いたら、4時間以上。たぶん、観てる方が耐えられない。
新潟を中心とする山間の娯楽のない貧しい農村でしか成り立たないであろう口承の旅芸人組織。近世を起源とする盲目の女芸能集団。当然、差別的扱いを受けることも多かったであろうし、一軒一軒回る門付は不適切表現を承知で書くが、乞食商売である。では、なぜ、庄屋格の家庭の娘が瞽女に出
されたかについても詳しく描かれており、母親(中島ひろ子)やじいさまの覚悟がひしひしと伝わってきた。とくに母親。心を鬼にしてでも我が子の将来を案じて、フジの言うことを忠実に守り、必死になる。寒声の修行の後のシーン。しもやけにひびが入らないように布でくるんで、お湯に浸けていました。じい様も必死。
それだけ、明治から戦後の時代は厳しかったのだ。普通の小作人の児なら、遺棄されて死ぬしかなかったであろうし、それが当たり前だったろう。
瞽女の親方に子供を預ける親は生活費、稽古代をまとめて渡す。なんと21年の契約。途中でハルのほうに過失があって辞めた場合はさらに違約金を取られてしまう。最初のフジ親方は金に汚く、意地も相当悪かった。激流に架かる細い橋を渡る場面は、気長にハルを鍛えるように見えたが、実際はフジはハルが落ちて流されて死んだら、また新しい弟子を取れば儲かるといった了見だったらしい。
この映画で、唯一ちょっと笑えるのは欲の突っ張ったフジがハルから取り上げたほんのり酸っぱい芋羊羹を食べて腹をくだす場面ぐらいだ。
優しい親方のサワ(小林綾子)が亡くなって、ハルが幼い弟子に厳しい躾をするなかで、母親の愛情に気付いて、抱き合って泣くシーンは「姑息な」と思いながらも泣いてしまった。
はなれ瞽女おりんにも出てた奈良岡朋子がナレーションをしている。岩下志麻の威を借りれば、「観なはるあんたはんも覚悟しいや」だ。