「【”次の世には虫になってもよい、明るい目さえ持って生まれてきたい・・” 現代社会の福祉の礎になった女性達が懸命に生きる姿を描いた作品。】」瞽女 GOZE NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”次の世には虫になってもよい、明るい目さえ持って生まれてきたい・・” 現代社会の福祉の礎になった女性達が懸命に生きる姿を描いた作品。】
■「瞽女」:三味線を弾き、独特の唄を披露しながら各地を回る盲目の女性旅芸人。彼女たちは、村人たちにとっては、唄で束の間の娯楽を提供してくれ、且つ重要な各地間の情報伝達を担う貴重な存在であった。
・新潟県で生まれた小林ハルさんは、幼年期に失明してしまったが、母親トメの”娘の将来を想って”鬼のようにハルを厳しく躾る。
ーもう、最初っから小さなハルさんの健気な姿が染みてしまう。
小さな針穴に”全身を目にして”糸を通す練習をする姿。
雪の中、草鞋に素足で、川に向かって唄う”寒声”で、声を鍛える姿・・。ー
・そして、ハルは小さいながらも、瞽女として、いじわるで食べ物に執着するフジ親方に鍛えられる。
村に着いたら、庄屋さんの家に行って挨拶をしてから”門付け”に出掛けるハル達。礼儀正しい彼女たちには、村人たちも基本的に優しい。
けれど、トメが若くして亡くなった時も(父は既に早逝している・・)ハルは泣かない・・。
ートメの想いが届いていない・・。-
・その後、優しいサワ親方(小林綾子:東北でタイヘンな経験をする少女と言えば、この人ですよね・・)についたハルは楽しい旅巡業を続けるが、幸せは長くは続かず・・。
ー怒涛のごとく襲い掛かる不幸の数々・・。”もう、止めてあげて!”-
・ハルは親方になり、小さなハナヨを弟子として受け入れ、且つて自らが母に躾けられたように、ハナヨを厳しく躾けるが・・ふと、ハナヨの姿が且つての自分の幼き姿とダブって見え・・。
ー漸くハルに届いた亡き母、トメの想い・・。沁みます・・。ー
<厳しい日々を、笑顔を浮かべて懸命に生きるハルの姿、歌声が心に響く。
今は無き「瞽女」の存在を、世に知らしめたと言う民俗学的な意味を考えても、意義ある作品である。>
<2020年11月8日 刈谷日劇にて鑑賞>