「つい最近まで日本は貧しく、そして豊かだった。」瞽女 GOZE Kazuさんの映画レビュー(感想・評価)
つい最近まで日本は貧しく、そして豊かだった。
映画の構成はちょっと。。なところもあるのですが、瞽女と呼ばれる盲目の演奏家を知れた。
つい最近のような70年代まで、風雪に耐えながら山野を歩いてひたすら旅をしながら三味線を奏で歌を歌う。
高度経済成長期の恩恵にも浴さず、日本人が忘れ去ろうとしている障害と共に生きる術をつい最近まで守り、生きるために必死にひたすら続けた人達がいたことに感動しました。
母に鬼のような躾を受け、親方には死ぬほどの修行を強要され、仲間にさえ意地悪をされ、子供の産めない体にまでされ、言われなく蔑ずまれ、差別され、騙され、弟子にまで食い物にされ、引き取り育てた養女にまで冷遇され、どうしてここまで不幸を背負い続けなければならないのか。
母の死に目では、鬼としか思えない母の死に、涙一つこぼす事はなかった。
しかし、数十年後、引き取った養女にその養女が一人で生きていけるための厳しい躾と稽古をしていた時、ふと自分も母と同じことをしていることに気付き、母が自分を誰よりも愛していたことに今更ながら気付き、涙を流す。
全ての運命をを受けいれ続け、誰にも頼らず、誰をも妬まず、その運命をひたすら受け入れ続けられたのは
きっと母の苦しみを理解し、その教えを守りたかったのではないかと思う。
娘にも家族にも鬼と恨まれても娘が生きていくために歯を食いしばって厳しく育てた、そんな小さい娘を残して心配で死にきれなかったろう母の愛、どんなに辛い運命も受け入れ続けたことが、母の愛に気付いたからこそ、その愛に気付けなかったからこそ、自分を許せず自らへの罰だったのだとしたら、もうそんなに苦労しなくても良いんだと抱きしめたくなる。
血の涙を流すような母の愛も、死んだ母の教えを必死に守る娘の姿も、もうすぐ全てが消え去ってしまう物なのだろう。
でも、親子のその生き方を同じ日本人として尊敬するとともに、自らを恥じるばかり、少しでも次世代に残さなければと思う。
良い人との旅は祭り、悪い人との旅は修行、残りの人生をこの言葉を心に生きていきたいと思いました。
そして、その瞽女を国宝とする度量がこの日本という国にあった。そこに少しだけ光を見ました。