「わたしのお母さんもあなたのお母さんも」わたしのお母さん いも煮さんの映画レビュー(感想・評価)
わたしのお母さんもあなたのお母さんも
台詞で多くを語らず、間合いで観客の実体験をあぶり出してくるような、嫌でも自分の親子関係を見つめ直してしまう映像だった。
母娘の数だけ、母娘の関係は在る。もちろん仲良し母娘だけじゃない。相性が悪い母娘だってたくさん居る。
石田えりの母親像は外面的には社交性あり、誰とでもすぐに打ち解け、女手ひとつで子ども3人を育て上げるたくましい女性だ。
しかし、同じ職場や近所にこんな奥様いたらどうかな。正直、少しウザい。
特に自分の価値観を押し付けるような物言いは話していてきっと神経消耗するだろう。こちらの意見を汲んでもらえず彼女なりの正論を押し付けられて、この娘の井上真央のようにモヤモヤが身体の奥底に溜め込まれていきそうだ。
だから時々タバコを吸う。
ストレスMAXになったら飲めないアルコールも飲む。
スーパーの店長に絡まれながらも。(宇野祥平サイコー、絶対こういうヤツ居る感出てた)
口紅を筆で引き、ンパッとして仕事へのスイッチを入れる母。くどく安っぽい赤が品の悪さと、同時にこの母の根性みたいなものを感じさせるシーンだ。
幼き長女はきっと聞いて欲しい何かがあってこの母の腰にまとわりついたのに違いない。けれど母は なに?もう仕事行くの と相手にしてくれない。
コレが母との壁を作った大きな出来事なのだろうが、ここはもう少しハッとさせられガンっとくる出来事の方が良かったなぁ、映画的には。
まぁ、そんな回想シーンも含めてすべて他愛もない日常を淡々と描く映像は“人生そんなもの感“を出してくるわけであなたの人生(家族関係)も似たようなものでしょ?と言われているように感じた。
そして60歳近い私が感情移入して見つめていたのは母親目線でなく、完全な娘目線。母によって植え付けられた観念ってのは死ぬまで失われることはないのだなぁ。
井上真央ちゃんの演技は賞レースに推したい。
今晩は。
初めまして。
素敵なレビューを拝読させていただきました。
拙レビューにも書きましたが、井上真央さんが、刈谷駅で母と会う際の視線の動かし方は、彼女と母親との関係性を一発で観る側に伝える見事な演技だと思いました。
では。返信は不要ですよ。