「いつも急に現れるね」東京リベンジャーズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
いつも急に現れるね
改めてヤンキー作品の人気の強さを思い知らされた。
昨夏公開されるや否や、あの『ゴジラvsコング』の倍以上どころではなく、2021年の実写邦画No.1の44億円超えの大ヒット。
やたらとタイトル名を聞くくらいアニメも超人気の同名コミック。
いつもながら疎い。某ヒーロー集結映画みたいなタイトルだなぁ…なんてくらいにしか関心持たず。
はてさて一体全体、どんな喧嘩(内容)…?
普通のヤンキー作品と思ったら、びっくり!…であった。
ドン底のような負け犬生活を送るフリーターの武道。
高校時代は仲良し4人とツルんでイケイケなヤンキー青春ライフを送っていたが、歯車が狂ったのは腕っぷしの強い不良グループのリーダー、キヨマサに負けて以来。それから不良グループ内でも人生に於いても惨めな底辺…。
そんなある日、高校時代の元恋人・日向と弟・直人が死亡した事をニュースで知る。その死には、元は不良グループだったが勢力を拡げ、今や凶悪組織となった半グレ集団“東京卍會(通称“トーマン”)”と暴力団の抗争に巻き込まれたらしく…。
突然駅のホームで何者か(後々判明するまさかの人物!)に押され、転倒。惨めな人生がこんな形で一巻の終わり…と思った矢先、
何と!10年前にタイムスリップして…!
普通のヤンキー作品かと思ったら、まさかのSF要素プラス! ホント、疎くてゴメンよ…。
仲間と再会して、イケイケなヤンキー青春を再び謳歌。
しかし、またまた因縁のキヨマサにフルボッコ。人生は変えられない…?
日向と直人とも再会。直人に全てを告げる。
現在に戻るとやはり日向は死んだままだが、直人の運命は変わり生きていた。
あの時の武道の言葉を信じ、刑事となった直人。彼から提案…いや、ミッション。それは…
再び10年前に戻り、日向の運命を変える。
トーマンに何があったのか…?
トーマンのトップ、マイキーに接触を計る。隙あらば、マイキーを殺す…。
『クローズZERO』みたいな熱量高めのヤンキー・アクション×『バタフライ・エフェクト』みたいな愛する人を救おうとするSFタイム・パラドックス。(それから、武道が電車に轢かれそうになるシーンはちょい『GANTZ』みたい)
ヤンキーたちのメイクや衣装はかなり派手派手。設定で2010年とは言え、あんなヤンキー居る…?(私が知らないだけか…?)
基がコミックなので、話や演出や演技が少々ベタで誇張され過ぎ感も。特に北村匠海は所々オーバー演技気味。
令和作品(原作コミックは平成)なのに、昭和ヤンキーを感じる。
ひょっとしたら、監督・英勉はそれを狙ったのかもしれない。
ヤンキーがダセーとか言われる今の時代。ヤンキーがツッパり、多くのコミックでもイケイケだったあの頃=監督らの青春時代へ。
それを体現した若手俳優たち。
オーバー演技気味と言ったくせに、分かり易い北村匠海の喜怒哀楽の熱演。何より熱かったのは、ヘタレだった武道が徐々に変わっていく様。はっきり言って武道は弱い。そんな彼がクライマックスに見せる奮闘。
本作自体は全く未見でもタイトルを聞いた時、あちこちでその名をよく聞くくらいの人気キャラ。それが、
トーマンの総長“マイキー”と、その相棒“ドラケン”。
演じるは、昨年の大河ドラマで渋沢栄一役が好評だった吉沢亮と、(個人的に)昨年末のSPドラマで志村けん役が素晴らしかった山田裕貴。
武道が奴隷に成り下がるキヨマサすら頭を下げ、誰もがビビる。喧嘩上等、負け知らず。最強/凶のヤンキー!
下っ端の武道の事などアウト・オブ・眼中と思ったら…
ある時、キヨマサ主宰の喧嘩賭博でキヨマサとタイマン勝負。勿論、フルボッコにやられ…。
でも、諦めずに立ち上がる。
それを見ていたマイキーとドラケン。武道の事を気に入る。(ちなみにこの時卑怯にもバットを使おうとしようとしたり、喧嘩賭博なんてしたりして、キヨマサは二人から“破門”を言い渡され、それが後に…)
後日、武道を遊びに誘う。それを止める日向。絡む二人。ビクビクしながらも日向を守ろうとする武道。二人の気に障り、やられる…と思ったら、武道と日向の勇気に笑顔を見せる。
もしかしたら、悪い連中ではないのでは…?
そう確信したのは、あのシーン。
犯罪にも手を染める不良グループ“愛美愛主(メビウス)”との抗争が。
発端は、メンバーの一人とその彼女が襲撃され、彼女は瀕死の状態。
二人は見舞いに行く。
彼女の父親から罵倒。
突っ掛かろうとするマイキーをドラケンが押し留め、「申し訳ありませんでした」と頭を下げる。あのドラケンが…!
何も自分たちが傷付けた訳ではない。が、巻き込んだ責任がある。
ドラケンはマイキーにある言葉を掛ける。
「誰にも家族や大切な人はいる。一般人を巻き込むな。下げる頭を持ってなくても、人を思う心を持て」
泣き悲しむ両親の姿とドラケンの言葉が胸に染み入るマイキー。
「ケンチン(マイキーだけのドラケンの愛称)が隣にいてくれて良かった」
このシーン、好きだ。
やはり二人はただの悪い奴らではない。
根性ある奴は認め、自分らの中で自分らなりの厳しいルールを守り守らせつつ、時には仲間の為に闘う。守る。思う。
根はイイ奴ら。
そしてドラケンは、マイキーの“心”。
この二人がいる限り、トーマンは安泰の筈なのに…何故今、凶悪組織に変わった?
現在と過去を往き来し、再び現在に戻った時、武道は直人からトーマンが変わったきっかけを聞く。
そのきっかけは、ドラケンの死。過去でこれから起きるメビウスとの抗争で刺し殺されのだという…。
武道は過去に戻り、マイキーやドラケンにメビウスとの抗争を辞めるよう訴えるが…。
ヤンキーと言えば勿論、アクションは必須要素。若手俳優たちが身体を張ったアクション熱演を見せてくれる。
他を圧倒するマイキーとドラケンの強さ、迫力のトーマンとメビウスの乱闘、そしてタイマン勝負…見せ場はたっぷりと。
今旬の若手俳優揃い、ヤンキー、アクション、タイム・パラドックス…。
一見ジャンルや異色組み合わせで見せる本作のようだが…、なかなかドラマが良かった。
メビウスとの抗争。それには影で糸引く存在やキヨマサの復讐が…。様々な思惑絡む。
かつての仲良し衆の一人、アッくんの悲運。
当初は日向の運命を変える。それが、マイキーやドラケン、トーマンの運命も変える。そしてそれは全て引っ括めて、自分の人生を変える。
クライマックスはある危機的状況で、因縁のキヨマサと対する事に。(キヨマサ役の鈴木伸之の憎々しさもお見事!)
オレの人生はアイツのせいでミジメに…。
…いや!
テメェーごときにオレの人生変えられる訳ない。
オレの人生は、オレで変える!
胸アツだった。
ヤンキー・アクション×タイム・パラドックスの異色組み合わせながら、根は熱いストレートな若者劇。
しっかりツボ抑え。勧善懲悪。多少ベタであっても、既存感はナシ。
興奮と感動と前向きなメッセージ。
昨年はヤクザ映画の当たり年であったが、ヤンキーも熱かった。
思っていた以上に面白かった。
こういう思わぬ面白い作品はいつも急に現れるね。
近代さん ついにご覧になられましたか(^-^)!
「東京アベンジャーズ」でも成り立つ?!(笑)面白かったとの事で、良かったです(*^^*)。DVDはレンタルですか?多分、YouTubeにも残ってると思いますが、この映画の主題歌「名前を呼ぶよ」をバックにクランクインからアップまでのメイキング映像が特典としてセルDVDに付いてましたが、一年に渡って撮影された映画です。でも、コロナ禍の中、テンションも変わらず撮り終えられ、且つ面白い作品になったのは、俳優、スタッフがこの作品を愛していたからなんだろうと思います。
原作はこの先がもっと面白いです!続編は制作費的に問題ないので、キャストの年齢が無理にならないうちに💦是非作って欲しいと思います。