「物語は"かける"」望み ryo_maさんの映画レビュー(感想・評価)
物語は"かける"
堤監督の作品はあまりハマっておらず、「十二人の死にたいこどもたち」は昨年のワーストクラスでした。
今作は傑作です。まず役者陣の演技がピカイチに冴えています。場面はあまり転換することはありませんが、一言一言発するたびにその世界観に引き込まれていきます。冒頭で説明される家の構造が、家族同士の「望み」に説得力を増しています。
日本社会の闇をふんだんに取り込んでいて、遠慮のないマスコミ、容赦のないSNS上の誹謗中傷、正義感による外部への攻撃。おそらく現実でも似たようなことが起こっていると思い、他人感情ながら胸が痛くなりました。情報を出していないのにマスコミが駆けつけるみたいな事例で警察の無能さを自然に出している点も評価できます。(日本映画は警察を露骨に無能に描きがちなので…)
クライマックスに向かっていく展開も非常に好みです。だんだん事件の核心に迫っていき、息子が犯人じゃないと気づいた瞬間に1人目の被害者の遺族の元へ向かうシーンが切なかったです。もちろんぶん殴られるけれど、両者とも悪くないのに、つい遺族側を悪者と思い込んでしまう自分がいて心許なかったです。
息子が被害者だったと判明した時には家族同様絶望でした。邦画はせめても救いのあるエンドへと向かってくれるので、私的には報われる形はなんともありがたいです。決して救われるような展開ではありませんが、一瞬の希望よりも、未来への希望が強く描かれたので良かったです。記者の人が加害者側であって欲しかったという場面もマスコミの「望み」であることが痛々しいほど伝わってきました。
これからも続いていく人生に少しでも「望み」があると願って。ぜひ劇場でこの作品をご覧ください!