劇場公開日 2021年7月16日

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「見終わると妙に優しい気持ちになれる」17歳の瞳に映る世界 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5見終わると妙に優しい気持ちになれる

2021年7月12日
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泣ける

悲しい

アメリカのペンシルベニアからニューヨークまで、女子高生が親友の従妹を伴いニューヨークへ。目的はペンシルベニアでは両親の同意なしには許可されない中絶手術を受けること。なぜ、彼女はそうしなければならなかったのか?という、"話の起点"になる疑問は想像の域に止めて、冷え冷えとしていて温かみのない女の子2人の旅に同行するカメラは、最近、あまり見かけなくなったニューヨークの冷たい横顔を捉え続ける。地方からバスでニューヨークを訪れる乗客たちが行き交う"ポート・オーソリティ・バス・ターミナル"の風景が象徴的だ。ニューシネマ世代の筆者は思わず、夢破れて逆にニューヨークからフロリダへと脱出する男たち2人の道行きを描いた『真夜中のカーボーイ』('69)を思い出してしまった。劇中、ニューヨークのカウンセラーから妊娠に至るまでに少女が受けた虐待や強要の頻度を4択(原題の意味)で答えさせられるシーンがある。それまで封印してきた感情が一気に溢れ出るとき、彼女が負った肉体はもちろん、心の傷がいかに深いかがわかるのだ。アメリカに住む女子高生たちの日常をテーマにして、笑いは一切排除し、取り巻く環境の世知辛さに徹底して寄り添った作品。しかし見終わると、妙に優しい気持ちになれるのだ。少女たちの幸せを願って。

清藤秀人