「積極介入ドキュメンタリー」なぜ君は総理大臣になれないのか オスカーノユクエさんの映画レビュー(感想・評価)
積極介入ドキュメンタリー
“右手には花束を、左手にはナイフを持つ気持ちで取材対象に挑む”という大島監督が、被写体である小川淳也議員にカメラを向けながら、ことあるごとに自らの思いを率直にぶつけていく。今回の決断は間違っていたんじゃないか、(民進党は)政権とる気あるのか、果ては、あなたは政治家に向いていないんじゃないか…。柔らかい物腰とは裏腹に舌鋒鋭く議員を追い詰める。
そのスタイルは、同じく政治を題材にしたドキュメンタリー映画「選挙」(傑作!)とは真逆だ。“観察映画”を標榜する想田和弘監督は取材対象である山内和彦氏を客観的に観察し、どのシーン・側面を切り取るかで自らの思いを伝えた。一方で大島監督は、自らの意見をダイレクトに伝えることで、小川淳也議員から迷いや苦悩などあらゆる言葉を引き出していく。
白眉は選挙カー車内での雑談シーン。民進党から離党し、希望の党への参加を決めた小川議員に対し、大島監督は“無所属でいくべきだった”と意見する。すると小川議員が重い沈黙を交えながら、徐々に心情を吐露し始める。その嘆きはおよそ政治家が漏らすような言葉ではなく、はっきり失言と言えるレベルの内容だが、理想に燃える品行方正な若手議員の本当の苦悩がもっとも表れた瞬間だった。
その後の小川議員が選んだ道を見れば、大島監督の積極的な介入がその決断に影響を与えているのがよくわかる。その功罪はさておき、監督自身が物語の道標となっていくその過程に、ドキュメンタリー映画の持つ力をあらためて思い知った。
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