「【高潔、高邁な思想を持つ人物の”組織内”での出世は、現代日本では不可能なのか・・。 ポリティカルドキュメンタリーかと思いきや、ヒューマンドキュメンタリーの傑作だった作品。】」なぜ君は総理大臣になれないのか NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【高潔、高邁な思想を持つ人物の”組織内”での出世は、現代日本では不可能なのか・・。 ポリティカルドキュメンタリーかと思いきや、ヒューマンドキュメンタリーの傑作だった作品。】
- 小川淳也という政治家の、人間性の尊崇さには、敬服するしかない。-
■エリート官僚になる道から、政治的地盤のない地元から、政治家になろうと、家族、両親の協力の基、時に足掻きながら、時に改変していく魑魅魍魎が跋扈する政治組織の中で、もがき苦しみながらも、自分の理想を捨てずに突き進む姿。
”日本にも、まだこのような高潔な政治家がいたのか!”と驚くと共に、この作品はポリティカルドキュメンタリーではあるが、組織で働く全ての人の心に響くヒューマンドキュメンタリー作品である事に気付くのである。
<印象的なシーンは数々あれど>
・彼の周りには、常に下心のない人が集う。
人徳であろう。
驚くのは、奥様、年頃の二人の娘さん、ご両親が”彼はその高潔さ故に、政治家には向いていないのではないか”と危惧しつつも懸命に選挙運動をする姿である。
選挙中、心ない言葉を掛けられても、頭を下げる姿。
小川さんは、国会議員として香川の自宅に殆どいないが、あの幼き娘さん二人が素晴らしき女性に育ったのは、奧さんと、家にはいなくても”父親が、正しく頑張る姿”を見て成長されたからであろう、と推察する。
更に失礼ながら言えば、彼の香川の自宅の質素な事に驚く。
強固な地盤がないが故に、選挙費用で、大枚を使い果たすのであろう。
(どこぞの、ロクに国会議員としての仕事もせずに、党から支給された多額の選挙資金を違法にバラまいて当選した愚かしき夫婦は、正座してこのドキュメンタリー映画を観るべきであろう。(多額の選挙資金を慣例的に、ばら撒く政党も然り。))
・私は、所属政党をコロコロ変える人物を信頼していなかったが、このドキュメンタリー映画を拝見して、そのように一律に見ることを、もう少し慎重に考えなければと思った。
ー 彼の人物が、政治の表舞台に中々立てなかった理由は、私のような選挙権を持つ人間の見識の浅さにもよるという事を痛感する。
何ら実績のない人達が、現首相に媚びへつらい、当選をし、そして過去何名が職を辞したことか・・。
”首相の任命責任”という野党からの言葉を近年、嫌というほど耳にするが、宰相が”余裕綽綽で”表面的なお詫びの言葉を口にしているのは、
”けれども、彼らを当選させたのは、貴方たち国民でしょう・・・。”
と思っているからなのは、間違いない。
政権は国民の民意を軽んじているし、いくらでも操作できると思っている。そして、民も政治をしっかり見なくなっている人が増えてきている。(投票率の著しい低下・・。)
政治的な負のサイクルが大きく回っているのが、現代日本の社会である。
政治に無関心な層が増えて”得をする”のは今作でも描かれているように、大政党である。
・小川さんが辛辣に言った官僚と大臣の関係性
知ってはいたが、”大臣は名誉顧問みたいなもの、社長は各省庁のトップ”という言葉。
ー そりゃ、コロコロ大臣が変わっても国政に支障はないな。
重要なポストは首相、官房長官、財務大臣位か‥。厚生労働大臣は微妙だなあ。
昔、オリンピック担当大臣で桜散った人がいたなあ・・。前法務大臣も然り。
大臣の資質、能力がないのに、当選履歴をもとに”年功序列”のように大臣になる与党の仕組み。-
・変容する組織、政党の行く末を読んで、上手く世渡りする政治家もいれば、彼のように愚直なまでに信念を変えない、大組織にすり寄らない、媚びない姿勢を貫くが故に、衆議院に5期当選しても、党の主要ポストにつけない政治家がいる現代日本の政治の事実に暗澹たる気持ちになる。
(実は、会社組織もその傾向がある・・。大組織で働いているから、私は知っている。)
<小川さん。現代日本の政治状況の中で、貴方の明晰な頭脳、政治家としてのブレない姿勢は貴重です。
50歳で引退という”若き日の決意”は留保して、今後の日本のために、もう少し頑張って頂きたいです、と心から思わされたドキュメンタリー映画。
この稀有な政治家の高潔さに気づき、長きに亘り取材を重ね、この作品を世に送り出した大島監督始め、制作スタッフの方々のご努力にも、敬意を表します。>
NOBUさん、こんばんは。
この国の中途半端な選挙制度では、なかなか変えるものも変えられないかと思ってます。個人の主張が通りにくかったり、結局は党利党略に従わざるを得ないような・・・野党の中でも矛盾があったり。
スガ政権はコロナをどう乗り切ることができるかで存続か否かが決まりそうですね。