「ずっとこんなキッドマンが見てみたかった」ストレイ・ドッグ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
ずっとこんなキッドマンが見てみたかった
照りつける陽光、ザラついた手触り、汗とアルコールの匂い。その全てが混ざり合った臨場感にむせ返りそうになる中で、時を追うごとに高まっていくものがあった。それは「こんなニコール・キッドマンが見たかった!」という強い思いだ。特殊メイクでシワやシミや肌のたるみを加え、ぶっきらぼうな仕草や度胸の据わった眼光を放つ彼女は、なりふり構わず突き進む装甲車のよう。とは言いつつ、決してこれ見よがしな変貌ぶりではなく、抑制が効いている。このあたりのさじ加減が絶妙なのも、彼女とカリン・クサマ監督との相性の良さゆえか。一方、ストーリーはなかなか手の内を見せず、語り口も油断ならない。交錯する過去と現在。因縁の強盗事件。打ち明けられることのなかった事の真相。謎が持続する中で、中盤ごろ投下される白昼の銃撃戦もドライで胸にガツンと響く。それほど大きな物語ではないが、手狭な世界観の中で極めて鮮烈に火花を散らせた秀作と感じた。
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