「毒を以て毒を制す」ジョーンの秘密 regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
毒を以て毒を制す
スパイ容疑で逮捕された80代の老女の実話を、悲哀メロドラマ調に脚色したという印象。というか観る前までは、てっきりジュディ・デンチ扮する主人公ジョーンが、80代になっても現役のスパイをしていたというあらすじかと思っていた。若き日のジョーンの描写に重きを置いているため、ジュディはむしろ助演的なポジション。
序盤こそ男性に対する免疫がなかったジョーンが、2人の男の間で揺れる心を鍛えたせいか、終盤では愛のために大胆な駆け引きをするまでに成長する様は、ハーレクイン小説もしくは乙女ゲームを思わせる。
もちろん、彼女がスパイ行為に至る根本的理由はそこではない。「毒を以て毒を制す」精神が彼女を動かしたのだ。
ただ、劇中で触れられている、イギリスのチューブ・アロイズやアメリカのマンハッタン計画、それらに関連したカナダやソ連を含めた国同士の諜報戦などの歴史的背景をあらかじめ知っておかないと、途中でついて行けなくなる可能性も。
関係ないけど、ジョーンと恋仲になる男の一人を演じたスティーブン・キャンベル・ムーアが、歳を重ねるごとにジェレミー・ブレットに似てきている気がする。
ジェレミーといえば、グラナダTVのドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』で、世界最高のホームズ俳優と称えられた俳優。グラナダTV版ではドラマ化できなかった原作がいくつかあるが、ここはひとつ、亡きジェレミーの代わりにスティーブン主演で再ドラマ化を…と思ったのはさすがに自分だけか。
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