ディエゴ・マラドーナ 二つの顔のレビュー・感想・評価
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神でもあり悪魔でもある
マラドーナは世代ではないからあまり知らないけど、これ一本でSSCナポリ時代のイタリアでのマラドーナを知ることが出来る。
サッカーに真面目に向き合う『ディエゴ』とカリスマとしての『マラドーナ』を二つの顔と表している。
マラドーナはコカインを使用していたが、マラドーナが薬物使用するのも分かる気がする。というのも、マラドーナの周りには人が群がってくる。スーパーにも行けない。映画も観れない。家に居ても外から声を掛けられる。熱狂の中心にいたわけだ。これで、まともな精神状態を維持出来るだろうか。
貧しい家庭に生まれ、親に家を買ってあげたいという、よくある夢を実現しようとした事、そして、実現したことに好感出来る。また、15歳で大黒柱になって家族を支えなければいけないというのも、大変だったのかなと思う。
映像は貴重なものが多いようだが、ボールを蹴る音は後付けかなと思った。でも違和感はない。そう思っただけでリアルなのかもしれない。
映画冒頭の入団会見のスタジアムの様子には圧巻させられる。
映画は⤵︎ ︎の感じ。
マラドーナはアルゼンチンブエノスアイレスの貧民街出身だ。非常に貧しい。5人兄弟で男はマラドーナだけだ。
マラドーナは15歳でプロになり、その後スペイン強豪のバルセロナに加入するが、そこではあまり活躍できなかったそうだ。映画は、バルセロナからイタリアセリエAの弱小チームであるSSCナポリに移籍してくるところから始まる。このシーンが衝撃的だった。マラドーナはスタジアムに入ろうとすると熱烈なサポーター達に迎えられる。スタジアムの一室でマラドーナが入団会見をするが天井からはサポーター達の声援が響いてくる。会見を終えスタジアムに行くと、スタジアムはサポーターで一杯。8万5千人だ。
SSCナポリの本拠地である街ナポリは経済的に危機的だそうだ。ナポリ市民は子供の話よりSSCナポリの話をする程にSSCナポリを愛している。SSCナポリはセリエAでは弱小チームであった。そんな所に、恐らく既にスーパースターであるマラドーナがやってきた。彼への期待は非常に高い。
加入一年目、SSCナポリはセリエAで最下位に終わるが、元々の目標が降格しないことであったので、そこは切り抜けたようだ。
加入二年目、チームは3位になる。
加入3年目、この年にW杯メキシコ大会があった。大会前にマラドーナにはイタリア人クラウディアとの間に子供が出来たが、彼は認知しなかった。
マラドーナには15歳の時から交際している女性がいて、イタリア人クラウディアとは浮気(遊び)だ。マラドーナには日常的に多くの美しい女性が集まってくるので、女遊びは沢山していた。
W杯メキシコ大会でマラドーナが率いるアルゼンチンは優勝した。そして、SSCナポリもセリエAを制覇した!
SSCナポリにとっては悲願がついに叶ったので、街はお祭り騒ぎだ。ナポリ市民はユニホームを着て旗を振り酒を飲んで大声で叫ぶ。このお祭り騒ぎが二ヶ月続いたというのだから驚きだ。
元々、マラドーナの周りには人が多かったが、SSCナポリを優勝させた後は、スーパーに買い物にも行けないほどに人々が集まるようになった。ナポリ市民はマラドーナを神として崇めた。映画では神以上とも言っていた。
マラドーナはSSCナポリ会長に退団の移行を伝えた。静かな所で生活がしたかった。だが、会長は手放すつもりはなかった。
一方でマラドーナはコカインを使用してきた。公になることはなかったが、近くの人間はコカインの使用に気付いていた。マラドーナが捕まらないのも周囲の人間が守っているからと言って過言ではない。マラドーナを愛するナポリ市民はマラドーナを守っていた。
W杯イタリア大会で神のいたずらか、アルゼンチンはイタリアとナポリ市で戦うことになる。結果、マラドーナ率いるアルゼンチンがイタリアを倒した。
イタリアでこれまで神と崇められていたマラドーナがこの対戦後に一変、悪魔となる。
守りを失ったマラドーナは、検査により薬物使用が発覚する。さらに処分はこれまでよりも重くなっていて、一年間の試合出場禁止。
マラドーナはイタリアを去った。
現役引退後テレビ番組で涙を流しながら家族などに支えられたと訴える。
クラウディアとの子供とも会ったようだ。
今でもナポリ市ではマラドーナを神のように崇める人はいる。
【セリエAリーグの弱小クラブSSCナポリ在籍時代の7年間のマラドーナにフォーカスし、栄光と凋落の姿を描いた作品。因縁のイタリアW杯で、何が彼に起きたのか? ほろ苦い気持ちになる作品でもある。】
ー 2000年11月25日 60歳の若さで永眠されたディエゴ・マラドーナ選手に謹んで哀悼の意を表するとともに、小学生だった私にサッカーの面白さを教えてくれた事に感謝申し上げます。-
■今作の面白さと哀しさ
・アルゼンチンの貧困家庭に生まれ、稀有なサッカースキルにより、アルゼンチンの代表選手になって行く過程での、マラドーナの生き生きとした自信に満ち溢れた表情と、どこか不安げな表情の対比。
- スターダムを駆け上がって行く中での得体の知れない不安だろう。 -
・貴重だと思われる若き頃の、マラドーナの練習風景。ヒールのみでの、リフティング。体格的に恵まれていなかった、マラドーナのドリブルテクニック。
◆彼が、FCバルセロナで、怪我などで思うような結果を残せず、移転先に選んだのは、セリエAの下位チーム、SSCナポリだった。
そして、その選択が、マラドーナの人生に、栄光と凋落を齎すとは、その時点では誰も予想できなかった。当然、マラドーナ自身にも・・。
・ナポリ移籍後、マラドーナの活躍により、年々順位を上げていくSSCナポリ。彼を熱狂的に支持するナポリの人々。
- 御存じのように、イタリアは南北に長い。一般的に、北部地方は、比較的豊かであり、ローマの有る南部地方は比較的、貧しい。イタリアンマフィアが生まれた背景に、地方間格差がある事は有名である。 -
・念願のリーグ制覇を果たし、マラドーナのナポリでの人気は不動のモノになって行く。だが、それと合わせて、イタリア・マフィアの一つであるカモッラのジュリアーノ一家と親交を深め、コカインにも溺れていく。
- このドキュメンタリーは、マラドーナの陰の部分もきちんと描いている所が良い。 -
・86年のメキシコW杯で、決して本命視されていなかったアルゼンチンを”神の手””5人抜き”により、優勝に導くマラドーナ。
◆そして迎えた因縁のイタリアW杯
・準決勝まで勝ち進んだアルゼンチンの相手は、イタリア。競技場はナポリ。試合前、ナポリの人々に呼びかけるマラドーナの肉声。”ナポリの人々は、アルゼンチンを応援して欲しい・・。”
縺れた試合はPK戦になり、マラドーナは最後に”落ち着いて”PKを決める。それは、彼がイタリア国民に愛されるサッカー選手から、最も憎まれる選手になった瞬間だった。
- こんな、映画の様な展開があるのか! と当時思ったものだ。 -
結果、周知の事実だったマラドーナの薬物問題、女性問題が噴出し、彼はイタリアを後にする・・。
- ”来たときは数万人が出迎え、帰る時は独り・・。-
<もし、あのPKでマラドーナがPKを外していたら、彼のサッカー選手としての運命は好転していたのであろうか?
それにしても、後年TVに出演した際のマラドーナの太った姿には、当時驚き、且つ嘆いたモノである。
そして、彼は結局薬物とは完全に縁が切れずに、若すぎる死を迎えてしまった・・。
彼のガールフレンドだった元妻へのインタビューなどが、彼の人物像を掘り下げているドキュメンタリー作品の秀作である。>
■蛇足
・一番好きだった、ロベルト・バッジョが少しだけ観れた。嬉しかった。
◆一言
・この映画サイトに、レビューを投稿し始めてから、2年近く経つ。それまでは、鑑賞記録として利用させていただいていたが、多くの映画愛溢れるレビュアーの方のレビューを拝読し、
”この方の車、戦車系の知識は凄いなあ、どうやって、瞬時に見分けるのかなあ・・。”
⇒他の知識も凄い方である。勝手に”広島の知性”とお呼びしている。
”この方、レビューをまとめて本にしたらよいのではないかなあ” ⇒真面目に提案した。
”この方、年間何本映画館で、映画観ているのかなあ。それにしても、全て映画館で観た映画のレビューしか上げないのは、潔いなあ。” ⇒年間の鑑賞本数を教えて頂き、驚愕した。
”流石、徳川も手出し出来なかった前田家が”カントリー・ジェントルマン”として、天下を睥睨していた地の方だなあ。何でも知っているなあ。”
”国際政治学のとびぬけた知識、経験は基より、とにかく何でも知っている”後ろ姿が印象的”な方。”
”心優しき、”お守り””の方”
”面白くも、ホロリとさせる猫好きの方”
等々、多くの名も知らぬ方と”SNS"上で、会話を時折交わすようになった。
願わくば、このサイトが多くの映画好きの交流の場として、今以上に活況を呈する事を祈念するものである。
マラドーナファンそしてリアルタイム世代向きなのかな
ナポリ時代のマラドーナにスポットを当てたドキュメンタリー作品。
根っからの野球人という事もあってサッカーはW杯の時には海外の選手に熱中してみる程度である。
アラサー世代の僕にとってはマラドーナの現役時代は知らず名前とやはりあの神の手事件まぁその他諸々を浅く知っている程度である。
それでも2010年の代表監督の印象は強く、その際は彼の存在に魅了された。
この作品はドキュメンタリーではあるが、「今だから明かされる」的なインタビューやドラマがあるわけではなくあくまでナポリ時代の彼を懐古するようなシーンが連なる。当時の映像やインタビュー動画を連ねてまとめられている。
所々関係者のインタビュー音声もあるが、この作品のために録った新しい音声かは不明。関係者が出演してるわけではないのでおそらくそれも過去のものだと思われる。
前半はナポリ移籍当初の華々しい活躍している姿、ナポリのヒーローとして描かれ、後半はドラッグや女性関係でトラブルを起こした描写、そしてW杯でイタリアを下した辺りからヒール的存在へ移りゆく姿がえがれている。
この辺りの事件も特に追求するわけではなく当時の映像音声を連ねて纏められている。
リアルタイム世代ではなく、そしてサッカーにそこまで詳しいわけではない為それなりに新しく知る楽しさを味わうことはできたが、知らないが故に疑問に思う事も多々あるが決してそれらを追求していく作品ではないため心残りはある。
また上にも書いた通り何かこの作品で新たな事実を展開していくわけではない為そのような事を期待すると裏切られると思う。
マラドーナのファンでありリアルタイムの世代が懐古心を楽しむ作品のように思えた。
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