劇場公開日 2021年2月5日

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「神と崇められたスター選手の光と影。その素顔に迫る貴重な映像」ディエゴ・マラドーナ 二つの顔 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0神と崇められたスター選手の光と影。その素顔に迫る貴重な映像

2021年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

興奮

思えば、1986年ワールドカップ・メキシコ大会の対イングランド戦でのゴール前ハンドによる「神の手」の1点目と、爆発的なドリブル突破による「5人抜き」の2点目は、マラドーナのダークサイドと栄光という二面性を見事に象徴していた。本作はマラドーナがイタリア・セリエAのナポリに在籍した84~91年の時期を中心に、その波乱万丈の生涯と知られざる素顔に迫ったドキュメンタリーだ。監督は「AMY エイミー」でアカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞のアシフ・カパディア、製作国のイギリスをはじめ欧米では2019年に公開された(マラドーナは昨年11月に死去)。

マラドーナの代理人だった人物が80年代にカメラマン2人を雇って撮影したフッテージなど、500時間にも及ぶ未公開映像から選りすぐりの場面を編集。ゴール裏から神業を間近にとらえた迫力満点のシーンから、ガールフレンドとテニスに興じるリラックスした姿をとらえたオフショット、さらにはドラッグの影響をうかがわせるうつろな表情まで収められ、本人の協力を得ながらよくぞここまで踏み込んだと感心した。マフィアとの交友や薬物使用などのダークな部分は反面教師として受け止められるべきとはいえ、やはり悲しいものがある。

高森 郁哉